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EP 33
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国王の晩餐と、光の妖精ピカリ
壮麗な装飾が施された、デルン王宮の巨大な厨房。
普段は宮廷料理人たちが腕を振るうその場所に、場違いなパーカー姿の青年が立っていた。
周囲には、疑いの目を向ける料理長やシェフたちが取り囲んでいる。
「ふぅ……やるしかない」
太郎は緊張をほぐすように息を吐き、手慣れた手順で調理を開始した。
洗練された宮廷の食材と、100円ショップの「カレールー」の融合。
玉ねぎを飴色になるまで炒め、スパイスの香りが立ち上ると、疑いの目を向けていたシェフたちの顔色が変わり始めた。
「な、なんだこの香りは……!」
「刺激的だが、食欲をそそる……王がご執心なのも頷けるぞ」
そして、謁見の間兼、大食堂。
長いテーブルの端には、立派な髭を蓄えた巨漢の王、バゴール王が鎮座していた。
目の前に置かれたのは、湯気を立てる一皿の「カレーライス」。
「ほう……これが噂の料理か。見た目は泥のようだが、香りは極上だな」
バゴール王はスプーンを手に取り、カレーとライスをすくって口へ運んだ。
パクッ。
王の動きが止まった。
太郎、執事のマルス、そしてサリーとライザが固唾を呑んで見守る。
「…………」
バゴール王の瞳孔が開き、額に玉のような汗が浮かんだ。次の瞬間。
「な、何という旨さだァァァッ!!」
王の咆哮が広間に響き渡った。
「辛い! だが旨い! 複雑怪奇なスパイスの奔流(ほんりゅう)が余の舌を蹂躙し、その後から肉と野菜の甘みが優しく包み込む! そしてこの白き穀物との相性の良さよ!!」
バゴール王はスプーンを高速で動かし始めた。
ガツガツ、ムシャムシャ。
王としての威厳も忘れ、ただひたすらにカレーを貪る。それはまさに、食欲の化身だった。
「お代わりだ! あるだけ持ってこい!」
「は、はい!」
結局、王は大鍋いっぱいのカレーを平らげ、最後の一滴までパンで拭って完食した。
「ふぅ……」
バゴール王は椅子に深くもたれかかり、恍惚の表情で天井を見上げた。
「余にこんな幸せな気持ちにさせるとは……なんと天晴(あっぱれ)な事か。宮廷料理人たちでも、ここまでの感動は作れまい」
王は満足げに腹をさすり、太郎を見た。
「礼を言うぞ、異界の英雄よ。褒美を取らせる! 白金貨100枚でどうだ!?」
「は、はくきんか……!?」
太郎は目を剥いた。
白金貨は金貨のさらに上。1枚で金貨100枚分とも言われる。それが100枚ともなれば、国家予算レベルの金額だ。
「そ、そんな!? カレーライスを作っただけで、貰えませんよ!?」
太郎は慌てて手を振った。
原価数百ポイントの料理で、国が傾くほどの大金をもらうわけにはいかない。
「ふむ……」
バゴール王は太郎の反応を見て、感心したように頷いた。
「金銀財宝に興味が無いと申すか。無欲……いや、そなたは冒険者であったな。ならば、金よりも冒険の役に立つ『力』の方が望みか。良かろう」
王はパンッ、と手を叩いた。
「これを持て」
一人のメイドが、恭しくベルベットの布に包まれた「鳥籠」のようなものを持ってきた。
籠の中では、温かな光の玉がふわふわと漂っている。
「これを授けよう。我が王家に代々伝わる『守護精霊』の一種だ。きっとそなたの冒険の役に立とう」
王が籠の扉を開けると、光の玉が外へと飛び出し、太郎の目の前で弾けた。
光が収束し、手のひらサイズの小さな女の子の姿になる。
背中には蜻蛉(トンボ)のような薄い羽、全身から淡い光を放つ、愛らしい妖精だ。
「わぁっ……!」
妖精はクルクルと空中で回ると、太郎の鼻先に止まってニコッと笑った。
『私、ピカリ! 光の妖精だよ! 君たちの名は?』
鈴を転がすような可愛い声が響く。
「ぼ、僕は太郎……(うわぁ、めっちゃ可愛い女の子だ)」
あまりの愛らしさに、太郎はドギマギしながら自己紹介した。
「私はサリーよ。よろしくね、ピカリちゃん」
「私はライザよ。小さくて可愛らしいわね」
サリーとライザも、新しい仲間に興味津々で顔を近づける。
『タロウ、サリー、ライザね! 覚えた!』
ピカリは元気に飛び回り、太郎の肩にちょこんと着地した。
『王様のご飯、すっごく美味しそうな匂いがしてたもん! タロウについていけば、美味しいものが見れそう! よろしくね!』
「あはは、よろしく。ピカリ」
こうして、伝説のカレーライスは王を満足させ、一行は「白金貨」以上のプライスレスな仲間、光の妖精ピカリを迎え入れることになったのだった。
壮麗な装飾が施された、デルン王宮の巨大な厨房。
普段は宮廷料理人たちが腕を振るうその場所に、場違いなパーカー姿の青年が立っていた。
周囲には、疑いの目を向ける料理長やシェフたちが取り囲んでいる。
「ふぅ……やるしかない」
太郎は緊張をほぐすように息を吐き、手慣れた手順で調理を開始した。
洗練された宮廷の食材と、100円ショップの「カレールー」の融合。
玉ねぎを飴色になるまで炒め、スパイスの香りが立ち上ると、疑いの目を向けていたシェフたちの顔色が変わり始めた。
「な、なんだこの香りは……!」
「刺激的だが、食欲をそそる……王がご執心なのも頷けるぞ」
そして、謁見の間兼、大食堂。
長いテーブルの端には、立派な髭を蓄えた巨漢の王、バゴール王が鎮座していた。
目の前に置かれたのは、湯気を立てる一皿の「カレーライス」。
「ほう……これが噂の料理か。見た目は泥のようだが、香りは極上だな」
バゴール王はスプーンを手に取り、カレーとライスをすくって口へ運んだ。
パクッ。
王の動きが止まった。
太郎、執事のマルス、そしてサリーとライザが固唾を呑んで見守る。
「…………」
バゴール王の瞳孔が開き、額に玉のような汗が浮かんだ。次の瞬間。
「な、何という旨さだァァァッ!!」
王の咆哮が広間に響き渡った。
「辛い! だが旨い! 複雑怪奇なスパイスの奔流(ほんりゅう)が余の舌を蹂躙し、その後から肉と野菜の甘みが優しく包み込む! そしてこの白き穀物との相性の良さよ!!」
バゴール王はスプーンを高速で動かし始めた。
ガツガツ、ムシャムシャ。
王としての威厳も忘れ、ただひたすらにカレーを貪る。それはまさに、食欲の化身だった。
「お代わりだ! あるだけ持ってこい!」
「は、はい!」
結局、王は大鍋いっぱいのカレーを平らげ、最後の一滴までパンで拭って完食した。
「ふぅ……」
バゴール王は椅子に深くもたれかかり、恍惚の表情で天井を見上げた。
「余にこんな幸せな気持ちにさせるとは……なんと天晴(あっぱれ)な事か。宮廷料理人たちでも、ここまでの感動は作れまい」
王は満足げに腹をさすり、太郎を見た。
「礼を言うぞ、異界の英雄よ。褒美を取らせる! 白金貨100枚でどうだ!?」
「は、はくきんか……!?」
太郎は目を剥いた。
白金貨は金貨のさらに上。1枚で金貨100枚分とも言われる。それが100枚ともなれば、国家予算レベルの金額だ。
「そ、そんな!? カレーライスを作っただけで、貰えませんよ!?」
太郎は慌てて手を振った。
原価数百ポイントの料理で、国が傾くほどの大金をもらうわけにはいかない。
「ふむ……」
バゴール王は太郎の反応を見て、感心したように頷いた。
「金銀財宝に興味が無いと申すか。無欲……いや、そなたは冒険者であったな。ならば、金よりも冒険の役に立つ『力』の方が望みか。良かろう」
王はパンッ、と手を叩いた。
「これを持て」
一人のメイドが、恭しくベルベットの布に包まれた「鳥籠」のようなものを持ってきた。
籠の中では、温かな光の玉がふわふわと漂っている。
「これを授けよう。我が王家に代々伝わる『守護精霊』の一種だ。きっとそなたの冒険の役に立とう」
王が籠の扉を開けると、光の玉が外へと飛び出し、太郎の目の前で弾けた。
光が収束し、手のひらサイズの小さな女の子の姿になる。
背中には蜻蛉(トンボ)のような薄い羽、全身から淡い光を放つ、愛らしい妖精だ。
「わぁっ……!」
妖精はクルクルと空中で回ると、太郎の鼻先に止まってニコッと笑った。
『私、ピカリ! 光の妖精だよ! 君たちの名は?』
鈴を転がすような可愛い声が響く。
「ぼ、僕は太郎……(うわぁ、めっちゃ可愛い女の子だ)」
あまりの愛らしさに、太郎はドギマギしながら自己紹介した。
「私はサリーよ。よろしくね、ピカリちゃん」
「私はライザよ。小さくて可愛らしいわね」
サリーとライザも、新しい仲間に興味津々で顔を近づける。
『タロウ、サリー、ライザね! 覚えた!』
ピカリは元気に飛び回り、太郎の肩にちょこんと着地した。
『王様のご飯、すっごく美味しそうな匂いがしてたもん! タロウについていけば、美味しいものが見れそう! よろしくね!』
「あはは、よろしく。ピカリ」
こうして、伝説のカレーライスは王を満足させ、一行は「白金貨」以上のプライスレスな仲間、光の妖精ピカリを迎え入れることになったのだった。
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