スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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EP 36

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集え、絆の光! 必殺・破邪の一矢
漆黒の闇を纏い、アルクスを見下ろす巨大なソウルワイバーン。
そのプレッシャーは、先程までの群れとは比較にならない。
だが、太郎は怯まなかった。敵が変貌を遂げた直後こそが、最大の隙だ。
「先手必勝!」
太郎は矢筒から最後の「必殺の矢」を引き抜き、瞬時に弦につがえた。
狙いは胴体の中心。そこにあるはずの魔石(コア)だ。
シュッ!!
放たれた漆黒の矢が、直線をえがいてソウルワイバーンへと迫る。
グリフィンをも葬った最強の一撃。これで終わるはずだ。
だが。
『…………』
ソウルワイバーンは動こうともせず、全身からドス黒い「暗黒の霧」を噴出させた。
矢が霧に触れた瞬間。
ジュッ……。
爆発音はしなかった。
信じられないことに、爆薬と精霊石を搭載した矢は、霧に飲み込まれた瞬間に腐食し、塵となって消滅してしまったのだ。
物理的な破壊力を、「死」の概念そのものである霧が無力化したのだ。
「そんな!?」
サリーが悲鳴を上げる。
「必殺の矢が……通用しない!?」
ライザも目を見開いた。物理攻撃と爆発が無効化されては、打つ手がない。
「嘘だろ……。必殺の矢が通用しないなんて」
太郎は空になった矢筒と弓を握りしめ、呆然とした。
その隙に、ソウルワイバーンが動き出す。
『グォォォォン!!』
巨大な尻尾が一閃され、城壁の一部が崩れ落ちた。
さらに口から吐き出された黒いブレスが、市街地を舐める。石畳が腐り、建物が泥のように溶けていく。
「くっ、どうすれば……」
現代兵器も通じない。魔法も、剣も、あの霧の前では無力だ。
アルクスが蹂躙されていくのを、ただ見ていることしかできないのか。
その時、太郎の目の前で小さな光が輝いた。
『諦めちゃダメ!』
「ピカリ?」
ピカリが太郎の鼻先で必死に羽ばたいていた。
『ピカリの力、使う! ピカリは光の妖精だもん! あの黒いモヤモヤは、強い光が嫌いなの!』
「でも、さっきのフラッシュ程度じゃ倒せないぞ……」
『違うの! 繋げるの! タロウ達の力を、その矢に集めればきっと勝てる!』
「力を集める……? そんな事が出来るのか!? ピカリ!」
『うん! 私が皆のパワーを「矢」に伝える橋渡しをするよ! サリーの魔法も、ライザの剣の力も、全部タロウの矢に乗っけるの!』
それは、理論を超えた賭けだった。だが、他に方法はない。
「やりましょう! 太郎さん!」
サリーが太郎の背中に手を当てた。
「私の魔力を、全部太郎さんに! 持っていって!」
「ええ! 私の闘気も、全て捧げます!」
ライザも反対側から太郎の肩に手を置く。
「いくよー! エイッ!」
ピカリが太郎が持つ、予備の(普通の)鉄の矢に抱きついた。
瞬間、サリーの手から膨大な魔力が、ライザの手からは練り上げられた闘気が、太郎の身体を駆け巡り、ピカリを通じて矢へと流れた。
バチバチバチッ!!
「ぐぅぅッ……!!」
太郎は歯を食いしばった。体が熱い。破裂しそうだ。
だが、その奔流を受け止める。
ただの鉄の矢が、三人の力を吸い込み、眩いばかりの紅蓮の輝きを放ち始めた。
さらにピカリの聖なる光がコーティングされ、それは神造兵器のような輝きを帯びる。
「凄い……二人の力が集約され、矢に集まって行く……!」
重い。物理的な重さではなく、想いの重さだ。
太郎は弓を構えた。弓自体がエネルギーの余波でミシミシと悲鳴を上げている。
『タロウ! いけーっ!!』
ピカリが叫ぶ。
ソウルワイバーンが、この高エネルギー反応に気づき、慌てて黒いブレスを吐こうと口を開けた。
だが、遅い。
「これが、僕達の力だ!!」
太郎は渾身の力で弦を離した。
「必殺! 『破邪の一矢(はじゃのいっし)』!!」
ズドォォォォォォォンッ!!
放たれたのは矢ではない。極太の光の奔流(レーザー)だった。
光の矢は、ソウルワイバーンが展開した暗黒の霧を瞬時に蒸発させ、そのブレスごと口内を貫通し、胴体を突き抜けた。
『ギョォォォォォォォォォッ!!?』
断末魔の叫び。
貫かれた傷口から光が溢れ出し、ソウルワイバーンの漆黒の巨体が内側から崩壊していく。
闇が晴れ、浄化されていく。
カァァァァッ……。
ソウルワイバーンは絶叫しながら、無数の光の粒子となって空へと霧散した。
後に残ったのは、雲一つない青空だけだった。
「…………」
静寂の後、城壁の上で三人はへたり込んだ。
「やった……」
「ええ、やりましたね……」
「勝ったぁぁぁ!!」
サリーとライザが太郎に抱きつく。
ピカリも太郎の頭の上でクルクルとダンスを踊る。
「ありがとう、みんな……」
太郎は仲間たちと喜び合いながら、空を見上げた。
100円ショップのスキルだけでは勝てなかった。
この世界の仲間たちの力が合わさったからこそ掴んだ勝利。
それは、佐藤太郎が真の意味でこの世界に受け入れられた証でもあった。
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