スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

文字の大きさ
41 / 46

EP 41

しおりを挟む
英雄、家を買う。
ドラゴン討伐の祝賀ムードも一段落し、アルクスの街に日常が戻りつつあったある日。
太郎たちは、街で一番の商会『ゴルド商会』を訪れていた。
「へへっ、いらっしゃい! ドラゴンスレイヤーの太郎さんじゃありませんか!」
会長のゴルスが、満面の笑みで揉み手をしながら出迎えた。
今や太郎は、商会にとっても最重要顧客(VIP)だ。通されたのは、ふかふかのソファがある特別応接室だった。
「今日はどういったご用件で? 新しい素材の売却ですか? それとも珍しい『100均』アイテムの取り寄せで?」
「いや、今日は買い物に来たんだ」
太郎は出された高級茶を一口飲み、切り出した。
「いつまでも宿屋暮らしという訳にはいかないからね。これからの活動拠点として、家を探しているんだ。どこか良い物件はないかなと思って」
荷物も増えたし、何よりキッチンや風呂を自由に使いたい。プライバシーも確保したい。
懐にはドラゴン討伐の報奨金が唸っている。今こそマイホームの買い時だ。
「へぇ! 3人と一匹向けの住宅ね。任せて下さいよっ」
ゴルスはニヤリと笑い、分厚いファイルを広げた。
「アルクスの救世主に相応しい、とびきりの物件がありますぜ」
横からライザが身を乗り出す。
「希望としては、4LDK以上の広さが欲しいですね。それに、庭付きが良いです。朝の剣の鍛錬が出来るような、広い庭が」
「うんうん! 私は花壇が欲しいな! 綺麗な花とか、ポーションに使う薬草を育てたいの!」
サリーも目を輝かせてリクエストする。
「ふむふむ、鍛錬用の広い庭に、家庭菜園スペースですね。……でしたら、あそこしかありませんね」
ゴルスはポンと膝を叩いた。
「街を見渡せる高台に、お望みの条件を全て満たした『貴族用別荘』の空き物件がありますぜ。内見に行きますか?」
「うん、頼むよ」
『ピカリも! ピカリもたのしみー!』
ゴルスの案内で向かったのは、アルクスの北側にある小高い丘の上だった。
そこには、白い壁と赤い屋根が美しい、立派な2階建ての屋敷が建っていた。
「うわぁ……!」
門をくぐると、手入れの行き届いた芝生の庭が広がっている。
「広い! これなら全力で剣を振っても、誰にも迷惑をかけませんわ!」
ライザが早速、芝生の感触を確かめるように踏みしめる。
「日当たりも最高ね! ここなら薬草もぐんぐん育ちそう!」
サリーは庭の隅にある花壇スペースを見て歓声を上げた。
続いて、ゴルスが鍵を開け、屋内へと案内する。
「お邪魔しまーす……」
「綺麗な部屋~!」
玄関ホールは吹き抜けになっており、シャンデリアが輝いている。
1階には広々としたリビングとダイニング。
「ここがキッチンです。魔導コンロも最新式、調理スペースも広大ですよ」
「おおっ……!」
太郎はキッチンを見て目を輝かせた。
これなら、100円ショップの調理器具をフル活用できる。収納も多いし、本格的な料理作り放題だ。
「お風呂も見てください。石造りの大きな浴槽で、お湯張りも魔道具で自動です」
「最高じゃないか……」
日本人の魂を持つ太郎にとって、足の伸ばせる風呂は絶対条件だ。
2階には4つの個室があり、それぞれの部屋からアルクスの街並みが一望できる。
「どうです? 街を見下ろすこの絶景。夜景も綺麗ですぜ」
「文句なしだね」
太郎は窓から風を感じながら頷いた。
これ以上の物件はないだろう。
「で、お値段は?」
ゴルスは指を2本立てた。
「立地、広さ、設備、全て込みで……金貨200枚になります」
日本円にして約200万円。
庶民には高嶺の花だが、今の太郎には「出せる」金額だ。
「よし! 購入します!」
太郎は即決した。
アイテムボックスから、金貨が詰まった革袋を2つ取り出し、テーブルにドンと置く。
「まいどありっ!!」
ゴルスが満面の笑みで金貨を受け取る。
「これで、今日からここが僕たちの家だ!」
「やったー! 私の部屋、どっちにしよっかなー!」
「私は庭の手入れを始めないと!」
『ピカリは一番高いところー!』
はしゃぐ仲間たちを見ながら、太郎は感慨に浸った。
異世界に来て、命がけで戦って、ついに手に入れた安息の場所。
ここから、また新しい生活が始まるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...