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EP 43
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幸福の鐘と、二人の花嫁
アルクスの中央にある白亜の大聖堂。
この日、街はかつてない祝賀ムードに包まれていた。
空には青空が広がり、英雄たちの門出を祝うように教会の鐘が鳴り響いている。
カラン、カラン、カラン……。
聖堂の中は、冒険者ギルドの仲間たち、ルルカ村の人々、そして王宮からの使者など、多くの参列者で埋め尽くされていた。
祭壇の前で、白いタキシードに身を包んだ太郎が待っている。
そこへ、一人の素朴な男性が歩み寄ってきた。ルルカ村から駆けつけたサリーの父、サンガだ。
「お父さん……!」
サリーが潤んだ瞳で見つめる。
「サリー……綺麗になったな。立派な冒険者だ」
サンガは娘の頭を優しく撫で、そして太郎に向き直り、深く頭を下げた。
「太郎さん。娘を……どうか、よろしくお願いします」
「はい。必ず、幸せにします! 僕の命に代えても」
太郎は真っ直ぐな瞳で誓った。
サンガは安心したように微笑み、席へと戻っていった。
そして、パイプオルガンの荘厳な音色が響き渡る。
聖堂の扉がゆっくりと開かれた。
「わぁ……」
参列者から感嘆の声が漏れる。
バージンロードを歩いてきたのは、純白のドレスに身を包んだ二人の花嫁。
サリーは、フリルをあしらった可愛らしいミニ丈のウェディングドレス。彼女の元気さと可憐さを引き立てている。
ライザは、身体のラインを美しく見せるシルクのマーメイドドレス。いつもの鎧姿とは違う、大人の女性の気品と艶やかさに満ちている。
二人は腕を組み、ゆっくりと太郎の元へ歩み寄る。
「……綺麗だ」
太郎は無意識に呟いていた。
異世界に来て出会った、かけがえのない仲間であり、最愛の女性たち。
祭壇の前で三人が並ぶ。
神父が厳かに聖書を開いた。
「汝、佐藤太郎は、この二人の女性を妻とし、健やかなる時も、病める時も、これを愛し、守り抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「汝、サリー、ライザは、この男性を夫とし、共に歩むことを誓いますか?」
「誓います!」
「誓います」
三人の声が聖堂に響く。
神父は微笑み、告げた。
「では、誓いの口づけを」
太郎はまず、サリーに向き合った。ベールを上げ、その桜色の唇に優しくキスをする。
「えへへ……大好きよ」
次に、ライザに向き合う。彼女は少し顔を赤らめながら目を閉じ、太郎はその唇に熱いキスを落とした。
「……愛しています、あなた」
その瞬間。
『おめでとー!!』
頭上からピカリが光の粉(キラキラ)を撒き散らし、ステンドグラスからの光と相まって、三人を幻想的な輝きで包み込んだ。
「うぅ……うぅぅ……!」
最前列で、大男が顔を覆って号泣していた。ヴォルフだ。
「おめでとう! ライザ! 太郎! うぉぉぉん!」
強面のギルドマスターが子供のように泣きじゃくる姿に、会場から温かい笑いが起きた。
「おめでとう! アルクスの英雄!」
「末永くな!」
「俺たちの誇りだー!」
「お幸せにー!」
割れんばかりの拍手と喝采。
色とりどりの花びらが舞う中、太郎は二人の妻の手をしっかりと握りしめた。
(色んなことがあったけど……ここに来て本当に良かった)
コンビニバイトの日常から、異世界の英雄へ。
100円ショップのスキルと、頼れる仲間たちと共に歩んだ冒険の旅。
その一つの終着点は、これ以上ないほどの幸福な光景だった。
佐藤太郎とサリー、そしてライザ。
新しい「家族」の物語は、ここからまた始まっていく。
アルクスの中央にある白亜の大聖堂。
この日、街はかつてない祝賀ムードに包まれていた。
空には青空が広がり、英雄たちの門出を祝うように教会の鐘が鳴り響いている。
カラン、カラン、カラン……。
聖堂の中は、冒険者ギルドの仲間たち、ルルカ村の人々、そして王宮からの使者など、多くの参列者で埋め尽くされていた。
祭壇の前で、白いタキシードに身を包んだ太郎が待っている。
そこへ、一人の素朴な男性が歩み寄ってきた。ルルカ村から駆けつけたサリーの父、サンガだ。
「お父さん……!」
サリーが潤んだ瞳で見つめる。
「サリー……綺麗になったな。立派な冒険者だ」
サンガは娘の頭を優しく撫で、そして太郎に向き直り、深く頭を下げた。
「太郎さん。娘を……どうか、よろしくお願いします」
「はい。必ず、幸せにします! 僕の命に代えても」
太郎は真っ直ぐな瞳で誓った。
サンガは安心したように微笑み、席へと戻っていった。
そして、パイプオルガンの荘厳な音色が響き渡る。
聖堂の扉がゆっくりと開かれた。
「わぁ……」
参列者から感嘆の声が漏れる。
バージンロードを歩いてきたのは、純白のドレスに身を包んだ二人の花嫁。
サリーは、フリルをあしらった可愛らしいミニ丈のウェディングドレス。彼女の元気さと可憐さを引き立てている。
ライザは、身体のラインを美しく見せるシルクのマーメイドドレス。いつもの鎧姿とは違う、大人の女性の気品と艶やかさに満ちている。
二人は腕を組み、ゆっくりと太郎の元へ歩み寄る。
「……綺麗だ」
太郎は無意識に呟いていた。
異世界に来て出会った、かけがえのない仲間であり、最愛の女性たち。
祭壇の前で三人が並ぶ。
神父が厳かに聖書を開いた。
「汝、佐藤太郎は、この二人の女性を妻とし、健やかなる時も、病める時も、これを愛し、守り抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「汝、サリー、ライザは、この男性を夫とし、共に歩むことを誓いますか?」
「誓います!」
「誓います」
三人の声が聖堂に響く。
神父は微笑み、告げた。
「では、誓いの口づけを」
太郎はまず、サリーに向き合った。ベールを上げ、その桜色の唇に優しくキスをする。
「えへへ……大好きよ」
次に、ライザに向き合う。彼女は少し顔を赤らめながら目を閉じ、太郎はその唇に熱いキスを落とした。
「……愛しています、あなた」
その瞬間。
『おめでとー!!』
頭上からピカリが光の粉(キラキラ)を撒き散らし、ステンドグラスからの光と相まって、三人を幻想的な輝きで包み込んだ。
「うぅ……うぅぅ……!」
最前列で、大男が顔を覆って号泣していた。ヴォルフだ。
「おめでとう! ライザ! 太郎! うぉぉぉん!」
強面のギルドマスターが子供のように泣きじゃくる姿に、会場から温かい笑いが起きた。
「おめでとう! アルクスの英雄!」
「末永くな!」
「俺たちの誇りだー!」
「お幸せにー!」
割れんばかりの拍手と喝采。
色とりどりの花びらが舞う中、太郎は二人の妻の手をしっかりと握りしめた。
(色んなことがあったけど……ここに来て本当に良かった)
コンビニバイトの日常から、異世界の英雄へ。
100円ショップのスキルと、頼れる仲間たちと共に歩んだ冒険の旅。
その一つの終着点は、これ以上ないほどの幸福な光景だった。
佐藤太郎とサリー、そしてライザ。
新しい「家族」の物語は、ここからまた始まっていく。
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