45 / 62
EP 45
しおりを挟む
甘い魔力水と、魔法の寝袋
ダンジョン攻略の準備期間。
太郎のマイホームのキッチンは、さながら小さな工場のようになっていた。
「よし、どんどん作るぞー」
太郎が『食品』カテゴリから大量に取り出したのは、1缶100Pの『お汁粉(粒あん・190g)』だ。
これを温め、異世界の携帯用の水筒や、100円ショップで買った『耐熱ボトル』に移し替えていく作業が進んでいた。
「絶対にこれは売れるわよ! 砂糖は魔力回復に直結するし、何より市場に出回っている『魔力回復薬(マナ・ポーション)』より断然安いもの!」
サリーがボトル詰めを手伝いながら、鼻息を荒くしている。
この世界のポーションは、苦くて不味い上に、一本で金貨数枚もする高価な品だ。
それに比べて、このお汁粉は甘くて美味しく、即効性のエネルギー(糖分)補給になる。
「ふふっ、そうね。あのドラゴンスレイヤーのパーティーが愛飲している『秘薬』と言えば、皆飛びつきますわ」
ライザも手際よくラベルを貼っていく。
『ピカリ味見する~!』
作業中、ピカリが鍋に残ったお汁粉に顔を突っ込んだ。
『ん~っ! 甘~い! 美味しーい!』
「コラぁ! ピカリ! 盗み食いしない! それは商品よ!」
「あはは、まぁまぁ。ピカリの分も別にとってあるから」
太郎は苦笑いしながら、小さな皿にお汁粉を分けてあげた。
翌日。
冒険者ギルドの一角に、太郎たちの特設ブースが設けられた。
看板には『太郎印のダンジョン攻略グッズ』の文字。
「はいはい! いらっしゃい! ドラゴンスレイヤー御用達! 太郎印の防寒グッズは入りませんかぁ!」
サリーが愛嬌たっぷりに声を張り上げる。
「荷物にならなくて、軽い寝袋や懐中電灯も有りますよ~」
ライザが実演販売を行う。
彼女が手にしているのは、銀色の薄いシート――『アルミブランケット』と、コンパクトな『封筒型寝袋』だ。
「見てください。こんなに薄く折り畳めますが、広げれば極寒の山でも凍えない温かさ。重い毛布を持ち歩く時代は終わりました」
さらに、太郎は『LEDハンディライト』を点灯させた。
「そしてこれ! 松明(たいまつ)要らずの『魔法の灯り』です。煙も出ないし、風で消えることもない。ダンジョンの闇を昼間のように照らしますよ!」
『お汁粉美味しいよ~! 魔力が元気になるよ~!』
ピカリも空中でボトルを抱えて宣伝する。
英雄たちの出店に、ダンジョンへ向かう冒険者たちがどっと押し寄せた。
「おぉ! ドラゴンスレイヤーが勧める品か!」
「あの光る筒、すげぇ! 魔法具じゃないのか!?」
「それにこの『オシルコ』とかいう黒い飲み物……サリー嬢ちゃんがドラゴン戦で飲んでたアレか!?」
噂は既に広まっていた。
「買う買う! 俺にもくれ!」
「その銀色の布、5枚くれ! パーティー全員分だ!」
飛ぶように商品が売れていく。
「お汁粉10本! 銀貨1枚で!」
「まいどあり~!」
太郎はチャリンと銀貨を受け取り、商品を渡す。
原価100ポイント(約100円)の商品が、銀貨(数千円)で売れる。
利益率は驚異の数千パーセントだ。
「こっちも完売だ!」
「追加補充します!」
結局、持ち込んだ商品は瞬く間に売り切れとなった。
冒険者たちはホクホク顔で「太郎印」のグッズをリュックに詰め込み、ダンジョンへと向かっていく。
「ふぅ……儲かった」
空になった在庫と、銀貨でパンパンに膨れ上がった革袋を見て、太郎たちは顔を見合わせた。
「これ、ダンジョンに潜る前にもう家一軒分くらい稼いじゃったんじゃない?」
「太郎さんの商才には驚かされますわ……」
ダンジョン特需と100円ショップスキルの相性は抜群だった。
懐も豊かになり、装備も万端。
いよいよ太郎たち自身も、ダンジョン攻略へと乗り出す準備が整った。
ダンジョン攻略の準備期間。
太郎のマイホームのキッチンは、さながら小さな工場のようになっていた。
「よし、どんどん作るぞー」
太郎が『食品』カテゴリから大量に取り出したのは、1缶100Pの『お汁粉(粒あん・190g)』だ。
これを温め、異世界の携帯用の水筒や、100円ショップで買った『耐熱ボトル』に移し替えていく作業が進んでいた。
「絶対にこれは売れるわよ! 砂糖は魔力回復に直結するし、何より市場に出回っている『魔力回復薬(マナ・ポーション)』より断然安いもの!」
サリーがボトル詰めを手伝いながら、鼻息を荒くしている。
この世界のポーションは、苦くて不味い上に、一本で金貨数枚もする高価な品だ。
それに比べて、このお汁粉は甘くて美味しく、即効性のエネルギー(糖分)補給になる。
「ふふっ、そうね。あのドラゴンスレイヤーのパーティーが愛飲している『秘薬』と言えば、皆飛びつきますわ」
ライザも手際よくラベルを貼っていく。
『ピカリ味見する~!』
作業中、ピカリが鍋に残ったお汁粉に顔を突っ込んだ。
『ん~っ! 甘~い! 美味しーい!』
「コラぁ! ピカリ! 盗み食いしない! それは商品よ!」
「あはは、まぁまぁ。ピカリの分も別にとってあるから」
太郎は苦笑いしながら、小さな皿にお汁粉を分けてあげた。
翌日。
冒険者ギルドの一角に、太郎たちの特設ブースが設けられた。
看板には『太郎印のダンジョン攻略グッズ』の文字。
「はいはい! いらっしゃい! ドラゴンスレイヤー御用達! 太郎印の防寒グッズは入りませんかぁ!」
サリーが愛嬌たっぷりに声を張り上げる。
「荷物にならなくて、軽い寝袋や懐中電灯も有りますよ~」
ライザが実演販売を行う。
彼女が手にしているのは、銀色の薄いシート――『アルミブランケット』と、コンパクトな『封筒型寝袋』だ。
「見てください。こんなに薄く折り畳めますが、広げれば極寒の山でも凍えない温かさ。重い毛布を持ち歩く時代は終わりました」
さらに、太郎は『LEDハンディライト』を点灯させた。
「そしてこれ! 松明(たいまつ)要らずの『魔法の灯り』です。煙も出ないし、風で消えることもない。ダンジョンの闇を昼間のように照らしますよ!」
『お汁粉美味しいよ~! 魔力が元気になるよ~!』
ピカリも空中でボトルを抱えて宣伝する。
英雄たちの出店に、ダンジョンへ向かう冒険者たちがどっと押し寄せた。
「おぉ! ドラゴンスレイヤーが勧める品か!」
「あの光る筒、すげぇ! 魔法具じゃないのか!?」
「それにこの『オシルコ』とかいう黒い飲み物……サリー嬢ちゃんがドラゴン戦で飲んでたアレか!?」
噂は既に広まっていた。
「買う買う! 俺にもくれ!」
「その銀色の布、5枚くれ! パーティー全員分だ!」
飛ぶように商品が売れていく。
「お汁粉10本! 銀貨1枚で!」
「まいどあり~!」
太郎はチャリンと銀貨を受け取り、商品を渡す。
原価100ポイント(約100円)の商品が、銀貨(数千円)で売れる。
利益率は驚異の数千パーセントだ。
「こっちも完売だ!」
「追加補充します!」
結局、持ち込んだ商品は瞬く間に売り切れとなった。
冒険者たちはホクホク顔で「太郎印」のグッズをリュックに詰め込み、ダンジョンへと向かっていく。
「ふぅ……儲かった」
空になった在庫と、銀貨でパンパンに膨れ上がった革袋を見て、太郎たちは顔を見合わせた。
「これ、ダンジョンに潜る前にもう家一軒分くらい稼いじゃったんじゃない?」
「太郎さんの商才には驚かされますわ……」
ダンジョン特需と100円ショップスキルの相性は抜群だった。
懐も豊かになり、装備も万端。
いよいよ太郎たち自身も、ダンジョン攻略へと乗り出す準備が整った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる