46 / 62
EP 46
しおりを挟む
地下1階の瞬殺劇、最強夫婦の力関係
特需による商売を終え、懐も装備も万全となった太郎たち。
冒険者たちで賑わう入り口を抜け、ついに未知のダンジョンへと足を踏み入れた。
「じゃあ、僕達もダンジョン攻略しようか」
太郎が『LEDヘッドライト』のスイッチを入れると、真っ直ぐな光の筋が闇を切り裂いた。
「えぇ。体が鈍っていますからね。腕が鳴りますわ」
ライザが愛剣の柄に手を掛け、好戦的な笑みを浮かべる。
「楽しみぃ! どんな魔物がいるのかしら」
サリーも杖を軽く振り回し、ウォーミングアップは万全だ。
『ピカリ頑張る! 宝箱さがす!』
一行は石造りの階段を下り、地下1階へと進んだ。
湿った空気と、どこからか聞こえる魔物の唸り声。
進むこと数分、広い空間に出たところで、行く手を阻む影が現れた。
「グルルルル……!!」
闇の中から姿を現したのは、全身が黒曜石のような皮膚で覆われた巨鬼。
通常のオーガよりも遥かに凶暴でタフな上位種、ダークオーガだ。それが3体、巨大な棍棒を引きずって待ち構えていた。
「オーガか……。いきなり上位種とはね」
一般の冒険者なら、地下1階で遭遇したら悲鳴を上げて逃げ出す相手だ。
だが、ドラゴンスレイヤーたちにとっては準備運動にもならない。
「いつでも良いですよ」
ライザが静かに腰を落とし、蒼き闘気を長剣の鞘へと収束させていく。
サリーも既に詠唱を始めており、杖の先が聖なる光を帯びていた。
「よし、行くぞ!」
太郎は挨拶代わりに、矢筒から漆黒の矢を引き抜いた。
地下1階だろうと容赦はしない。それが太郎流だ。
「喰らえ!」
シュッ!!
放たれた「必殺の矢」は、真ん中にいたダークオーガの胸板に吸い込まれた。
ドゴォォォォォォォォォォォン!!
閉鎖空間であるダンジョン内に、凄まじい爆音が反響する。
爆風が吹き荒れ、直撃を受けたダークオーガは悲鳴を上げる暇もなく、上半身が消し飛んだ。
「グオッ!?」
残った左右の2体のダークオーガが、仲間の死に激昂した。
怒り狂い、ドシドシと床を踏み鳴らして突進してくる。
「怒ったところで、隙だらけよ!」
サリーが杖を突き出した。
「聖なる光よ! 貫け! 『ホーリー・レーザー』!!」
ビッ!!
杖の先端から、収束された高密度の光線が一直線に放たれた。
光はダークオーガの分厚い皮膚も筋肉も無視して、その心臓を正確に貫通した。
巨体が糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
残るは最後の一体。
ライザが疾風のように飛び出した。
「剣技! 『闘牙一閃(とうがいっせん)』!!」
目にも止まらぬ電光石火の踏み込み。
すれ違いざま、銀色の閃光が走った。
チンッ!
ライザが残心と共に長剣を鞘に納め、鍔(つば)が鳴る澄んだ音が響く。
その音が合図だったかのように、ダークオーガの身体が斜めにズレて、二つに割れた。
ドサッ……。
戦闘開始から数秒。
凶悪なダークオーガ3体が、何もできずに全滅した。
「……強いなぁ、皆」
太郎は弓を下ろし、呆気にとられた。
ドラゴン戦を経て、二人の実力はさらに向上している気がする。
「えへへ~、これくらい余裕よ!」
サリーが無邪気にピースサインを送る。
「この位当然です。私達は、貴方の妻なのですから」
ライザも涼しい顔で髪を払った。
その姿は美しく、そしてあまりにも強大だった。
「頼もしいな……」
太郎は口ではそう言ったが、心の中で冷や汗を流していた。
(こりゃ……夫婦喧嘩したら死ぬな、僕は。絶対に逆らうのは辞めよう……)
もし浮気でもしようものなら、一方は聖なるレーザーで焼かれ、もう一方には神速で斬り刻まれる未来が容易に想像できた。
太郎は二人の機嫌を損ねないよう、今夜の夕食は彼女たちの好物にしようと固く誓いながら、ダンジョンの奥へと足を進めるのだった。
特需による商売を終え、懐も装備も万全となった太郎たち。
冒険者たちで賑わう入り口を抜け、ついに未知のダンジョンへと足を踏み入れた。
「じゃあ、僕達もダンジョン攻略しようか」
太郎が『LEDヘッドライト』のスイッチを入れると、真っ直ぐな光の筋が闇を切り裂いた。
「えぇ。体が鈍っていますからね。腕が鳴りますわ」
ライザが愛剣の柄に手を掛け、好戦的な笑みを浮かべる。
「楽しみぃ! どんな魔物がいるのかしら」
サリーも杖を軽く振り回し、ウォーミングアップは万全だ。
『ピカリ頑張る! 宝箱さがす!』
一行は石造りの階段を下り、地下1階へと進んだ。
湿った空気と、どこからか聞こえる魔物の唸り声。
進むこと数分、広い空間に出たところで、行く手を阻む影が現れた。
「グルルルル……!!」
闇の中から姿を現したのは、全身が黒曜石のような皮膚で覆われた巨鬼。
通常のオーガよりも遥かに凶暴でタフな上位種、ダークオーガだ。それが3体、巨大な棍棒を引きずって待ち構えていた。
「オーガか……。いきなり上位種とはね」
一般の冒険者なら、地下1階で遭遇したら悲鳴を上げて逃げ出す相手だ。
だが、ドラゴンスレイヤーたちにとっては準備運動にもならない。
「いつでも良いですよ」
ライザが静かに腰を落とし、蒼き闘気を長剣の鞘へと収束させていく。
サリーも既に詠唱を始めており、杖の先が聖なる光を帯びていた。
「よし、行くぞ!」
太郎は挨拶代わりに、矢筒から漆黒の矢を引き抜いた。
地下1階だろうと容赦はしない。それが太郎流だ。
「喰らえ!」
シュッ!!
放たれた「必殺の矢」は、真ん中にいたダークオーガの胸板に吸い込まれた。
ドゴォォォォォォォォォォォン!!
閉鎖空間であるダンジョン内に、凄まじい爆音が反響する。
爆風が吹き荒れ、直撃を受けたダークオーガは悲鳴を上げる暇もなく、上半身が消し飛んだ。
「グオッ!?」
残った左右の2体のダークオーガが、仲間の死に激昂した。
怒り狂い、ドシドシと床を踏み鳴らして突進してくる。
「怒ったところで、隙だらけよ!」
サリーが杖を突き出した。
「聖なる光よ! 貫け! 『ホーリー・レーザー』!!」
ビッ!!
杖の先端から、収束された高密度の光線が一直線に放たれた。
光はダークオーガの分厚い皮膚も筋肉も無視して、その心臓を正確に貫通した。
巨体が糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
残るは最後の一体。
ライザが疾風のように飛び出した。
「剣技! 『闘牙一閃(とうがいっせん)』!!」
目にも止まらぬ電光石火の踏み込み。
すれ違いざま、銀色の閃光が走った。
チンッ!
ライザが残心と共に長剣を鞘に納め、鍔(つば)が鳴る澄んだ音が響く。
その音が合図だったかのように、ダークオーガの身体が斜めにズレて、二つに割れた。
ドサッ……。
戦闘開始から数秒。
凶悪なダークオーガ3体が、何もできずに全滅した。
「……強いなぁ、皆」
太郎は弓を下ろし、呆気にとられた。
ドラゴン戦を経て、二人の実力はさらに向上している気がする。
「えへへ~、これくらい余裕よ!」
サリーが無邪気にピースサインを送る。
「この位当然です。私達は、貴方の妻なのですから」
ライザも涼しい顔で髪を払った。
その姿は美しく、そしてあまりにも強大だった。
「頼もしいな……」
太郎は口ではそう言ったが、心の中で冷や汗を流していた。
(こりゃ……夫婦喧嘩したら死ぬな、僕は。絶対に逆らうのは辞めよう……)
もし浮気でもしようものなら、一方は聖なるレーザーで焼かれ、もう一方には神速で斬り刻まれる未来が容易に想像できた。
太郎は二人の機嫌を損ねないよう、今夜の夕食は彼女たちの好物にしようと固く誓いながら、ダンジョンの奥へと足を進めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる