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EP 77
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玉座より自由を! さらば太郎国、冒険の旅は終わらない
魔神王との決戦から数ヶ月。
デルン王国は、その名を『太郎国(タロウ・キングダム)』へと改めた。
民衆の熱狂的な支持を受けた太郎は、嫌々ながらも初代国王として即位。
世界は平和になり、太郎達は城で幸せに暮らしましたとさ……。
――とは、ならなかった。
「決裁書類です、太郎様! 隣国との通商条約、河川工事の予算案、騎士団の再編計画……今日中に全て目を通してください!」
「あ、あと……明日には貴族院との会食が……」
「太郎様! 逃げないでください! 玉座に座っていてください!」
「ひぃぃぃ……!」
アルクス城改め、太郎城の執務室。
太郎は書類の山に埋もれていた。
王の仕事は激務だった。朝から晩まで会議、署名、謁見の連続。
大好きな料理をする時間も、サウナに入る時間も、妻たちとイチャイチャする時間もない。
「も、もう……無理だ……」
太郎の目は死んでいた。
「僕に国王なんて無理だ! 僕はただ、美味しいご飯を食べて、みんなと笑っていたいだけなのに……!」
限界だった。
コンビニ店員の頃よりブラックな労働環境。これでは何のために異世界に来たのか分からない。
ある満月の晩。
城が静まり返った深夜、太郎はこっそりと寝室を抜け出した。
背中には、この世界に来た時と同じリュックサック。中には100円グッズの在庫が詰め込まれている。
「すまない、マルス……。後は頼んだよ……」
太郎は書き置きを残し、抜き足差し足で裏口へと向かった。
自由だ。この扉を抜ければ、そこには広大な世界と自由が待っている。
ギィィ……。
裏口の扉を開けた、その時だった。
「「どちらへ行かれるのですか? 陛下?」」
「ひぃッ!?」
月明かりの下、二つの影が仁王立ちしていた。
腕を組み、ジト目で太郎を見下ろすサリーとライザだ。
「サ、サリー! ライザ!」
「太郎様! 何をしてるんですか! 夜逃げですか!?」
「一国の王が、リュック一つで城を抜け出すなど……前代未聞ですわ」
完全にバレていた。
太郎はその場に膝から崩れ落ちた。
「頼むよ! 見逃してくれ!」
太郎は地面に頭を擦り付けた。
「僕には王様なんて無理なんだよ! 自由な時間なんて無いし、肩は凝るし、刺身も釣りに行けない! ね! このまま一緒にさ! 昔みたいに!」
太郎は顔を上げ、妻たちの手を取った。
「冒険の旅に出ようよ! 称号も、地位もいらない。ただの『冒険者・佐藤太郎』に戻って、君たちと世界中を見て回りたいんだ!」
魂の叫び。
それを聞いた二人は、顔を見合わせた。
そして、ふっと表情を緩め、悪戯っぽく笑った。
「えぇ~!? 王妃の座を捨てて、野宿生活に戻るんですか?」
サリーが呆れたように、しかし楽しそうに言う。
「仕方有りませんわね……。S級冒険者にして『最強の奥様』である私がいなければ、太郎様の安全は守れませんから」
ライザが剣の柄を撫でながらウィンクした。
「ライザまで!? ……もぉ、仕方有りませんね! 私は『無敵の奥様』ですから、何処までも付いて行きますよ!」
サリーが太郎のリュックを背負い直してあげた。
「二人共……ありがとう!」
太郎は涙ぐんで二人に抱きついた。
「それに、私達も窮屈なドレスより、冒険者の服の方が性に合っていますしね」
「えぇ。それに太郎様の作る料理が、一番美味しいですから」
三人は顔を見合わせて笑った。
「よし! 行こう! マルスに見つかる前に!」
「ふふっ、明日の朝、マルスさんの悲鳴が聞こえてきそうですわ」
「『太郎様ァァァ!!』ってね」
三人は夜陰に乗じて城壁を越えた。
見上げれば満天の星空。その中の一つが、ピカリと瞬いた気がした。
『行ってらっしゃい、太郎』
そんな声が聞こえた気がして、太郎は空に向かって小さく手を振った。
「さぁ、次はどこの街に行こうか? まだ見ぬ食材が僕達を待っている!」
「温泉巡りもいいですわね!」
「強敵との戦いも楽しみです!」
元勇者、元国王、現役最強の冒険者・佐藤太郎。
彼の武器は、不思議なスキルと100円グッズ、そして最高の仲間たち。
彼らの旅は、まだまだ終わらない。
いや、ここからが本当の自由な冒険の始まりだ。
朝焼けの街道を、三つの影が楽しげに歩いていく。
その背中は、どんな王冠よりも輝いていた。
第一章 100円ショップの勇者 完
魔神王との決戦から数ヶ月。
デルン王国は、その名を『太郎国(タロウ・キングダム)』へと改めた。
民衆の熱狂的な支持を受けた太郎は、嫌々ながらも初代国王として即位。
世界は平和になり、太郎達は城で幸せに暮らしましたとさ……。
――とは、ならなかった。
「決裁書類です、太郎様! 隣国との通商条約、河川工事の予算案、騎士団の再編計画……今日中に全て目を通してください!」
「あ、あと……明日には貴族院との会食が……」
「太郎様! 逃げないでください! 玉座に座っていてください!」
「ひぃぃぃ……!」
アルクス城改め、太郎城の執務室。
太郎は書類の山に埋もれていた。
王の仕事は激務だった。朝から晩まで会議、署名、謁見の連続。
大好きな料理をする時間も、サウナに入る時間も、妻たちとイチャイチャする時間もない。
「も、もう……無理だ……」
太郎の目は死んでいた。
「僕に国王なんて無理だ! 僕はただ、美味しいご飯を食べて、みんなと笑っていたいだけなのに……!」
限界だった。
コンビニ店員の頃よりブラックな労働環境。これでは何のために異世界に来たのか分からない。
ある満月の晩。
城が静まり返った深夜、太郎はこっそりと寝室を抜け出した。
背中には、この世界に来た時と同じリュックサック。中には100円グッズの在庫が詰め込まれている。
「すまない、マルス……。後は頼んだよ……」
太郎は書き置きを残し、抜き足差し足で裏口へと向かった。
自由だ。この扉を抜ければ、そこには広大な世界と自由が待っている。
ギィィ……。
裏口の扉を開けた、その時だった。
「「どちらへ行かれるのですか? 陛下?」」
「ひぃッ!?」
月明かりの下、二つの影が仁王立ちしていた。
腕を組み、ジト目で太郎を見下ろすサリーとライザだ。
「サ、サリー! ライザ!」
「太郎様! 何をしてるんですか! 夜逃げですか!?」
「一国の王が、リュック一つで城を抜け出すなど……前代未聞ですわ」
完全にバレていた。
太郎はその場に膝から崩れ落ちた。
「頼むよ! 見逃してくれ!」
太郎は地面に頭を擦り付けた。
「僕には王様なんて無理なんだよ! 自由な時間なんて無いし、肩は凝るし、刺身も釣りに行けない! ね! このまま一緒にさ! 昔みたいに!」
太郎は顔を上げ、妻たちの手を取った。
「冒険の旅に出ようよ! 称号も、地位もいらない。ただの『冒険者・佐藤太郎』に戻って、君たちと世界中を見て回りたいんだ!」
魂の叫び。
それを聞いた二人は、顔を見合わせた。
そして、ふっと表情を緩め、悪戯っぽく笑った。
「えぇ~!? 王妃の座を捨てて、野宿生活に戻るんですか?」
サリーが呆れたように、しかし楽しそうに言う。
「仕方有りませんわね……。S級冒険者にして『最強の奥様』である私がいなければ、太郎様の安全は守れませんから」
ライザが剣の柄を撫でながらウィンクした。
「ライザまで!? ……もぉ、仕方有りませんね! 私は『無敵の奥様』ですから、何処までも付いて行きますよ!」
サリーが太郎のリュックを背負い直してあげた。
「二人共……ありがとう!」
太郎は涙ぐんで二人に抱きついた。
「それに、私達も窮屈なドレスより、冒険者の服の方が性に合っていますしね」
「えぇ。それに太郎様の作る料理が、一番美味しいですから」
三人は顔を見合わせて笑った。
「よし! 行こう! マルスに見つかる前に!」
「ふふっ、明日の朝、マルスさんの悲鳴が聞こえてきそうですわ」
「『太郎様ァァァ!!』ってね」
三人は夜陰に乗じて城壁を越えた。
見上げれば満天の星空。その中の一つが、ピカリと瞬いた気がした。
『行ってらっしゃい、太郎』
そんな声が聞こえた気がして、太郎は空に向かって小さく手を振った。
「さぁ、次はどこの街に行こうか? まだ見ぬ食材が僕達を待っている!」
「温泉巡りもいいですわね!」
「強敵との戦いも楽しみです!」
元勇者、元国王、現役最強の冒険者・佐藤太郎。
彼の武器は、不思議なスキルと100円グッズ、そして最高の仲間たち。
彼らの旅は、まだまだ終わらない。
いや、ここからが本当の自由な冒険の始まりだ。
朝焼けの街道を、三つの影が楽しげに歩いていく。
その背中は、どんな王冠よりも輝いていた。
第一章 100円ショップの勇者 完
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