78 / 251
第二章 新たな旅立ち
EP 1
しおりを挟む
英雄、逃亡するも顔バレする
「太郎国」の玉座を放棄し、城を抜け出してから数週間。
元国王であり、伝説の英雄・佐藤太郎と、二人の最強の妻たちは、自由気ままな冒険の旅を楽しんでいる――はずだった。
「……はぁ」
とある宿場の食堂で、太郎は深く溜息をついた。
顔には100円ショップで買った『パーティー用・鼻メガネ』をつけて変装している。
「ご注文は決まりましたか? お客様」
「あ、はい。このBランチを……」
「かしこまりました! ……って、そのお声! まさか!!」
店員の顔色が変わり、食堂中の視線が集まる。
「そ、その妙なメガネ! そして両脇に控える絶世の美女二人! 間違いねぇ! 初代国王、太郎陛下だああああ!!」
「うわあああ! 本物だぁぁ!」
「太郎様バンザイ! 太郎様バンザイ!」
「おい! 最高級の酒を持ってこい! お代は店持ちだ!」
またこれだ。
食堂は一瞬にして「太郎様ファン感謝祭」と化し、揉みくちゃにされた太郎たちは、ほうほうの体で店を逃げ出した。
街外れの森の中。
太郎は鼻メガネを地面に叩きつけた。
「駄目だ……! 何処に行ってもこれだ! 歓迎されて冒険どころじゃない!」
行く先々の村には「太郎像」が建ち、店で買い物をしようとすれば「お金なんて結構です!」とタダになり、ギルドに行けば「英雄様に頼める仕事などありません!」と断られる。
これでは冒険者ではなく、ただの大名行列だ。
「有名人はつらいですね、太郎様」
ライザが苦笑いしながら、水を差し出した。
「貴方の顔が刻印された金貨が流通していますし、吟遊詩人が貴方の武勇伝を歌って回っていますから。マンルシア大陸で貴方の顔を知らない者は、モグラくらいでしょう」
「うぅ……。僕はただ、無名の新人として『薬草採取』とか『ゴブリン退治』をして、稼いだお金で美味しいご飯を食べたいだけなのに……」
太郎が膝を抱えて落ち込んでいると、サリーがポンと手を叩いた。
「それでしたら、太郎様! 別の大陸へ行くのはいかがですか?」
「別の大陸?」
「はい! ここから海を渡った西の果てに、『サバラー大陸』という広大な大地があるそうです。そこなら、まだ私達の名前も知られていませんよ!」
サリーはワクワクした顔で、太郎のスキルから出した『世界地図帳』の端を指差した。
「サバラー大陸……!」
その響きに、太郎の冒険者魂(と食欲)が反応した。
情報が少ない未開の地。そこには見たこともない魔物、そして未知の食材が待っているに違いない。
何より、「ただの佐藤太郎」に戻れる場所だ。
「それだ! 行こう、サリー、ライザ!」
太郎はガバッと立ち上がった。
「目指すは新天地、サバラー大陸だ! そこで今度こそ、スローライフな冒険をするんだ!」
善は急げと、三人は港町へと向かった。
もちろん、正規の定期船に乗れば大騒ぎになるため、太郎たちはフードを目深に被り、コソコソと港の片隅へ。
「船はどうします? 買うにしても目立ちますが」
ライザが心配そうに言うが、太郎はニヤリと笑った。
「大丈夫。今回はこれを使うよ」
太郎がウィンドウを開き、取り出したのは『インフレータブルボート(6人乗り・エンジン付き)』。
ゴム製だが軍事用にも使われる強靭なボートだ。
「これなら魔法袋(インベントリ)にしまえるし、誰にもバレずに出航できる!」
「さすが太郎様! 用意周到ですわ!」
三人は夜陰に乗じてボートを海に浮かべ、サリーの風魔法とエンジンを併用して沖へと滑り出した。
「さらば、マンルシア大陸! さらば、国王の地位!」
遠ざかる街の灯りを見ながら、太郎は叫んだ。
「待ってろよ、サバラー大陸! 新たな食材と、自由な日々よ!」
ボートは白波を立て、未知なる大陸へと舵を切った。
しかし、彼らはまだ知らなかった。
サバラー大陸が、過酷な自然と、筋肉と魔法が支配する「修羅の国」であることを。
第二章、開幕。
新たな大地で、100円グッズは通用するのか!?
「太郎国」の玉座を放棄し、城を抜け出してから数週間。
元国王であり、伝説の英雄・佐藤太郎と、二人の最強の妻たちは、自由気ままな冒険の旅を楽しんでいる――はずだった。
「……はぁ」
とある宿場の食堂で、太郎は深く溜息をついた。
顔には100円ショップで買った『パーティー用・鼻メガネ』をつけて変装している。
「ご注文は決まりましたか? お客様」
「あ、はい。このBランチを……」
「かしこまりました! ……って、そのお声! まさか!!」
店員の顔色が変わり、食堂中の視線が集まる。
「そ、その妙なメガネ! そして両脇に控える絶世の美女二人! 間違いねぇ! 初代国王、太郎陛下だああああ!!」
「うわあああ! 本物だぁぁ!」
「太郎様バンザイ! 太郎様バンザイ!」
「おい! 最高級の酒を持ってこい! お代は店持ちだ!」
またこれだ。
食堂は一瞬にして「太郎様ファン感謝祭」と化し、揉みくちゃにされた太郎たちは、ほうほうの体で店を逃げ出した。
街外れの森の中。
太郎は鼻メガネを地面に叩きつけた。
「駄目だ……! 何処に行ってもこれだ! 歓迎されて冒険どころじゃない!」
行く先々の村には「太郎像」が建ち、店で買い物をしようとすれば「お金なんて結構です!」とタダになり、ギルドに行けば「英雄様に頼める仕事などありません!」と断られる。
これでは冒険者ではなく、ただの大名行列だ。
「有名人はつらいですね、太郎様」
ライザが苦笑いしながら、水を差し出した。
「貴方の顔が刻印された金貨が流通していますし、吟遊詩人が貴方の武勇伝を歌って回っていますから。マンルシア大陸で貴方の顔を知らない者は、モグラくらいでしょう」
「うぅ……。僕はただ、無名の新人として『薬草採取』とか『ゴブリン退治』をして、稼いだお金で美味しいご飯を食べたいだけなのに……」
太郎が膝を抱えて落ち込んでいると、サリーがポンと手を叩いた。
「それでしたら、太郎様! 別の大陸へ行くのはいかがですか?」
「別の大陸?」
「はい! ここから海を渡った西の果てに、『サバラー大陸』という広大な大地があるそうです。そこなら、まだ私達の名前も知られていませんよ!」
サリーはワクワクした顔で、太郎のスキルから出した『世界地図帳』の端を指差した。
「サバラー大陸……!」
その響きに、太郎の冒険者魂(と食欲)が反応した。
情報が少ない未開の地。そこには見たこともない魔物、そして未知の食材が待っているに違いない。
何より、「ただの佐藤太郎」に戻れる場所だ。
「それだ! 行こう、サリー、ライザ!」
太郎はガバッと立ち上がった。
「目指すは新天地、サバラー大陸だ! そこで今度こそ、スローライフな冒険をするんだ!」
善は急げと、三人は港町へと向かった。
もちろん、正規の定期船に乗れば大騒ぎになるため、太郎たちはフードを目深に被り、コソコソと港の片隅へ。
「船はどうします? 買うにしても目立ちますが」
ライザが心配そうに言うが、太郎はニヤリと笑った。
「大丈夫。今回はこれを使うよ」
太郎がウィンドウを開き、取り出したのは『インフレータブルボート(6人乗り・エンジン付き)』。
ゴム製だが軍事用にも使われる強靭なボートだ。
「これなら魔法袋(インベントリ)にしまえるし、誰にもバレずに出航できる!」
「さすが太郎様! 用意周到ですわ!」
三人は夜陰に乗じてボートを海に浮かべ、サリーの風魔法とエンジンを併用して沖へと滑り出した。
「さらば、マンルシア大陸! さらば、国王の地位!」
遠ざかる街の灯りを見ながら、太郎は叫んだ。
「待ってろよ、サバラー大陸! 新たな食材と、自由な日々よ!」
ボートは白波を立て、未知なる大陸へと舵を切った。
しかし、彼らはまだ知らなかった。
サバラー大陸が、過酷な自然と、筋肉と魔法が支配する「修羅の国」であることを。
第二章、開幕。
新たな大地で、100円グッズは通用するのか!?
3
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる