スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第二章 新たな旅立ち

EP 13

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穏やかな日々と、忍び寄る闇の足音
​月日が流れるのは早いもので、太郎たちがエルフの里に定住してから3年の時が過ぎた。
かつては静寂に包まれていた里も、今では子供たちの笑い声が響く、賑やかな場所になっていた。
​「とーと! かーか! ひな、お花つんできたの!」
​パタパタと小さな足音をさせて駆け寄ってきたのは、3歳になった娘の陽奈(ひな)だ。
サリー譲りの栗色の髪を揺らし、小さな手に一杯の野花を抱えている。
​「おぉ、陽奈! 綺麗なお花だねぇ。とーとにくれるのか?」
​「うん! とーと、だいすき!」
​太郎は目尻をデレデレに下げて、愛娘を抱き上げた。
​「つきまるも……これ、とった」
​その後ろから、トコトコと歩いてきたのは息子の月丸(つきまる)だ。
ライザに似た黒髪と、年齢離れした落ち着きを持つ彼は、自分の顔ほどもある大きなカブトムシを無言で差し出した。
​「おっ、月丸はカッコいいカブトムシだな! 強いぞ~」
​「……ん。つよい。ママ守る」
​「あらあら、頼もしい騎士様ですこと」
​ライザが月丸を抱き上げ、頬ずりをする。
サリーも陽奈の頭を撫でる。
水田には黄金色の稲穂が実り、夕げには味噌汁の香りが漂う。
それは、太郎が夢見ていた「世界一幸せなスローライフ」そのものだった。
​そんなある日の午後。
太郎とヒブネは、ゼフィル長老の家へと呼び出された。
普段は孫(陽奈と月丸)にデレデレの好々爺である長老が、今日は眉間に深い皺を刻んでいた。
​「長老、どうされたのですか? 何か深刻な顔をされていますが」
​太郎が尋ねると、長老は重々しく口を開いた。
​「……実はな。武者修行や、物見のために里を出て、人間の街で暮らしている同胞たちが、この数ヶ月で何人か、立て続けに消息を絶っているのだ」
​「失踪、ですか?」
​太郎の問いに、長老は苦々しく頷いた。
​「そうだ。最初はただの連絡の遅れかと思っていた。だが、私の方で密かに放った使い魔の報告によれば……どうやら、ただの失踪ではない。彼らは、闇組織に捕らえられ、奴隷として売り飛ばされているようなのだ」
​「――奴隷ですって!?」
​その言葉に、ヒブネの纏う空気が一変した。
部屋の温度が数度下がったかのような、鋭い殺気。穏やかだったエルフの表情が、怒りで凍りついている。
​「ふざけるな!! このサバラー大陸で、我らエルフを奴隷にするなどと……万死に値する!」
​ヒブネが拳を握りしめ、机を叩いた。
エルフはその美貌ゆえに、裏社会で高値で取引されることがある。だが、それは決して許されざる蛮行だ。
​「長老! 僕に! 僕にその件を調べさせて下さい!」
​太郎が身を乗り出した。
​「この里には、そしてヒブネには、大きな恩がある。あなた達が受け入れてくれたおかげで、僕たちは家族を持てた。仲間が苦しんでいるのを、黙って見ているわけにはいきません!」
​「太郎様! 私も行きます! 同胞を弄ぶクズどもに、必ずや報いを受けさせなければ!」
​ヒブネも槍を握りしめ、太郎の隣に並び立つ。
長老は、二人の覚悟に満ちた瞳を見ると、深く頷いた。
​「……勇者様、ヒブネ。すまない。そして、頼んだぞ。里の若者たちが行けば目立ちすぎる。そなたらならば、きっと……」
​「任せてください。必ず連れ戻します」
​長老宅を出た二人は、しばらく黙って里の中を歩いていた。
どこかから、陽奈と月丸の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
​「ヒブネ」
​太郎が足を止めた。
​「サリーさんやライザさんには、どう話しますか?」
​ヒブネが尋ねる。
最強の二人ならば、この件も一瞬で解決できるかもしれない。
だが、太郎は首を振った。
​「やめよう。サリーとライザには、内緒だ」
​「えっ? ですが……」
​「二人は今、母親として子供たちとの時間を大切にしている。それに……『人攫い』だの『奴隷』だの、こんな胸糞の悪い話、彼女たちには聞かせたくないんだ」
​太郎は拳を握りしめた。
あの平和な日常に、薄汚い悪意を持ち込ませたくない。
それに、もし二人がこの事実を知れば、怒りで大陸の一つや二つ消し飛ばしかねない。
​「心配をかけさせたくないし、子供たちの側には誰かがいてあげないと。……今回は、僕たちだけで行こう」
​それは、二人を守るための、太郎なりの夫としての決意だった。
​「……分かりました。太郎様がそう仰るなら」
​ヒブネも、その想いを静かに受け入れた。
​「『珍しい食材の情報を聞いたから、数日ほどヒブネと遠出してくる』……そう書き置きを残そう」
​「また事後承諾ですか。……あとで雷が落ちても知りませんよ?」
​「その時はその時さ。今は、一刻も早く仲間を助け出そう」
​その日の深夜。
太郎とヒブネは、家族が寝静まったツリーハウスを抜け出した。
寝顔の子供たちと妻たちに、心の中で「行ってきます」と告げて。
​二人は闇に溶け込むように、静かにエルフの里を後にした。
平和なスローライフは一時中断。
ここからは、闇に潜む悪を討つ、影の英雄としての戦いが始まる。
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