91 / 251
第二章 新たな旅立ち
EP 14
しおりを挟む
魔王復活の儀式、鮮血のデーモンロード
エルフの里を出て、近くの人間街『ログ』に潜入した太郎とヒブネ。
酒場の噂話や、裏社会の情報の断片を太郎のスキル(金に物を言わせた情報収集)で繋ぎ合わせた結果、戦慄の事実が判明した。
「奴隷として売られているのではありませんでした……」
路地裏で、ヒブネが青ざめた顔で報告する。
「この街の地下には魔族が潜んでいます。彼らはエルフの魔力を利用し、かつて封印された**『魔王』**を復活させるための生贄として、同胞たちを攫っているのです」
「魔王復活……!? 生贄だって!?」
金儲けよりも遥かにタチが悪い。カルト的な儀式のために命が奪われようとしているのだ。
一刻の猶予もない。
「太郎様。私が囮になります」
ヒブネが言った。
「正面から乗り込めば、人質にされた同胞が殺されるかもしれない。私が捕まってアジトの深部に入り、内側から暴れます。その隙に、太郎様が救助を」
「……分かった。危険すぎる賭けだけど、それしかない。必ず助けるから、無茶はしないでくれよ」
作戦通り、ヒブネはわざと路地裏で魔族の下っ端に捕まり、地下水道の奥にあるアジトへと連行された。
太郎は気配を消し、少し距離を開けて追跡する。
辿り着いたのは、地下深くに広がる巨大な儀式の間。
血生臭い空気が充満し、中央の祭壇には禍々しい魔法陣が描かれている。
「ひひっ、また上玉のエルフが手に入ったぞ」
「こいつの魔力なら、魔王様の極上の糧になるぜ」
下卑た笑い声を上げる魔族たち。
その奥には、鉄格子に閉じ込められ、傷つき、怯えている数名のエルフたちの姿があった。
「さぁ、儀式を始めろ! その女の喉を裂き、聖なる血を捧げよ!」
魔族の幹部らしき男が叫ぶ。
ヒブネが祭壇に押し倒され、処刑鎌が振り上げられた。
(今だ……!)
暗闇に潜んでいた太郎が動いた。
『雷霆』を引き絞り、狙いを定める。標的は魔族ではない。
ヒュンッ!!
風切り音と共に放たれた矢は、ヒブネの両手を拘束していた手錠の鎖を、ピンポイントで射抜いた。
カキンッ!!
「なっ!? 鎖が切れた!?」
魔族たちが動揺する一瞬の隙。
太郎はアイテムボックスから、ヒブネの愛槍を取り出し、全力で投擲した。
「ヒブネ!!」
「はいッ!!」
ヒブネは宙を舞う槍をガシッと掴み取った。
拘束から解き放たれた彼女の瞳には、鬼神の如き怒りが宿っていた。
「よくも……よくも同胞たちを!!」
ヒブネが槍を旋回させる。
「風の精霊よ! 怒りを力に変えろ! 『ギガ・トルネード』!!」
ゴォォォォォォォォォォッ!!
狭い地下空間に巨大な竜巻が発生した。
下っ端の魔族たちが木の葉のように吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて絶命する。
「し、死ねえええええええ!!」
ヒブネは叫びと共に、祭壇の上にいる魔族幹部へと肉薄した。
神速の突き。
ズドォッ!!
「ガハッ……!?」
白銀の槍が、幹部の心臓を正確に貫いた。
勝負あり。誰もがそう思った。
「オノレェェ……! 人間風情ガァァ……!!」
しかし、幹部は死ななかった。
彼は口から血を吐きながらも、不気味に笑った。
「我が命尽きるとも……魔王様の復活は止められん……!!」
幹部は呪文を唱えると、周囲に転がる下っ端魔族の死体から立ち上る血と怨念を、自らの体へと吸収し始めた。
「な、何だ!?」
ヒブネが槍を引き抜き、後退する。
幹部の体が膨れ上がり、皮膚が裂け、どす黒い筋肉と角が生えた異形の巨人へと変貌していく。
魔族の上位種、デーモンロードへの進化だ。
「グオオオオオオオオオッ!!」
咆哮だけで空気がビリビリと震える。
その圧倒的な威圧感に、檻の中のエルフたちが悲鳴を上げた。
ヒブネも槍を構え直すが、その手は僅かに震えている。
「くっ……! こいつ、再生した上に強くなってる……!」
絶体絶命の危機。
だが、その喧騒から一歩引いた場所で、太郎は静かに立ち尽くしていた。
彼はデーモンロードを見ていなかった。
彼が見つめていたのは、鉄格子の向こう側。
服は破れ、体には暴力の痕があり、恐怖でガタガタと震えながら、互いに身を寄せ合っているエルフたちの姿だった。
「…………」
太郎の目から、光が消えた。
温厚なパパの顔でも、陽気な冒険者の顔でもない。
かつて国一つを滅ぼしかけた魔神王を葬った時の、冷徹で、底知れない「英雄」の顔がそこにあった。
太郎がゆっくりと、雷霆に手をかけた。
静かなる激怒が、地下空間を支配しようとしていた。
エルフの里を出て、近くの人間街『ログ』に潜入した太郎とヒブネ。
酒場の噂話や、裏社会の情報の断片を太郎のスキル(金に物を言わせた情報収集)で繋ぎ合わせた結果、戦慄の事実が判明した。
「奴隷として売られているのではありませんでした……」
路地裏で、ヒブネが青ざめた顔で報告する。
「この街の地下には魔族が潜んでいます。彼らはエルフの魔力を利用し、かつて封印された**『魔王』**を復活させるための生贄として、同胞たちを攫っているのです」
「魔王復活……!? 生贄だって!?」
金儲けよりも遥かにタチが悪い。カルト的な儀式のために命が奪われようとしているのだ。
一刻の猶予もない。
「太郎様。私が囮になります」
ヒブネが言った。
「正面から乗り込めば、人質にされた同胞が殺されるかもしれない。私が捕まってアジトの深部に入り、内側から暴れます。その隙に、太郎様が救助を」
「……分かった。危険すぎる賭けだけど、それしかない。必ず助けるから、無茶はしないでくれよ」
作戦通り、ヒブネはわざと路地裏で魔族の下っ端に捕まり、地下水道の奥にあるアジトへと連行された。
太郎は気配を消し、少し距離を開けて追跡する。
辿り着いたのは、地下深くに広がる巨大な儀式の間。
血生臭い空気が充満し、中央の祭壇には禍々しい魔法陣が描かれている。
「ひひっ、また上玉のエルフが手に入ったぞ」
「こいつの魔力なら、魔王様の極上の糧になるぜ」
下卑た笑い声を上げる魔族たち。
その奥には、鉄格子に閉じ込められ、傷つき、怯えている数名のエルフたちの姿があった。
「さぁ、儀式を始めろ! その女の喉を裂き、聖なる血を捧げよ!」
魔族の幹部らしき男が叫ぶ。
ヒブネが祭壇に押し倒され、処刑鎌が振り上げられた。
(今だ……!)
暗闇に潜んでいた太郎が動いた。
『雷霆』を引き絞り、狙いを定める。標的は魔族ではない。
ヒュンッ!!
風切り音と共に放たれた矢は、ヒブネの両手を拘束していた手錠の鎖を、ピンポイントで射抜いた。
カキンッ!!
「なっ!? 鎖が切れた!?」
魔族たちが動揺する一瞬の隙。
太郎はアイテムボックスから、ヒブネの愛槍を取り出し、全力で投擲した。
「ヒブネ!!」
「はいッ!!」
ヒブネは宙を舞う槍をガシッと掴み取った。
拘束から解き放たれた彼女の瞳には、鬼神の如き怒りが宿っていた。
「よくも……よくも同胞たちを!!」
ヒブネが槍を旋回させる。
「風の精霊よ! 怒りを力に変えろ! 『ギガ・トルネード』!!」
ゴォォォォォォォォォォッ!!
狭い地下空間に巨大な竜巻が発生した。
下っ端の魔族たちが木の葉のように吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて絶命する。
「し、死ねえええええええ!!」
ヒブネは叫びと共に、祭壇の上にいる魔族幹部へと肉薄した。
神速の突き。
ズドォッ!!
「ガハッ……!?」
白銀の槍が、幹部の心臓を正確に貫いた。
勝負あり。誰もがそう思った。
「オノレェェ……! 人間風情ガァァ……!!」
しかし、幹部は死ななかった。
彼は口から血を吐きながらも、不気味に笑った。
「我が命尽きるとも……魔王様の復活は止められん……!!」
幹部は呪文を唱えると、周囲に転がる下っ端魔族の死体から立ち上る血と怨念を、自らの体へと吸収し始めた。
「な、何だ!?」
ヒブネが槍を引き抜き、後退する。
幹部の体が膨れ上がり、皮膚が裂け、どす黒い筋肉と角が生えた異形の巨人へと変貌していく。
魔族の上位種、デーモンロードへの進化だ。
「グオオオオオオオオオッ!!」
咆哮だけで空気がビリビリと震える。
その圧倒的な威圧感に、檻の中のエルフたちが悲鳴を上げた。
ヒブネも槍を構え直すが、その手は僅かに震えている。
「くっ……! こいつ、再生した上に強くなってる……!」
絶体絶命の危機。
だが、その喧騒から一歩引いた場所で、太郎は静かに立ち尽くしていた。
彼はデーモンロードを見ていなかった。
彼が見つめていたのは、鉄格子の向こう側。
服は破れ、体には暴力の痕があり、恐怖でガタガタと震えながら、互いに身を寄せ合っているエルフたちの姿だった。
「…………」
太郎の目から、光が消えた。
温厚なパパの顔でも、陽気な冒険者の顔でもない。
かつて国一つを滅ぼしかけた魔神王を葬った時の、冷徹で、底知れない「英雄」の顔がそこにあった。
太郎がゆっくりと、雷霆に手をかけた。
静かなる激怒が、地下空間を支配しようとしていた。
1
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる