スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第三章 世界の秩序

EP 6

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爆誕! スパチャアイドル・リリーナ ~愛と希望と五円玉~
ミノタウロス死骸事件の代償は大きかった。
冒険者ギルドからは「無期限出禁」を食らい、妻たちからは「お小遣い全額没収」という極刑を言い渡された太郎。
「……詰んだ」
城の廊下をトボトボと歩く太郎の背中には、哀愁が漂っていた。
懐は寒々しい。100円ショップスキルを使う小銭すらない。
それはつまり、愛してやまない城下町のラーメン屋巡りが出来ないことを意味していた。
(新作の『濃厚海老味噌ラーメン』……食べたかったなぁ……)
太郎が絶望の淵に沈みかけていた、その時。
「ふふふ~ん♪ ガンガンガン~♪」
中庭から、透き通るような美しいハミングが聞こえてきた。
シーラン国から来た人魚の大使、リリーナだ。彼女は噴水の縁に座り、足をパチャパチャさせながらご機嫌に歌っていた。
その歌声は、歌詞(タミフル云々)はともかく、聴く者の心を揺さぶる魔力を持っていた。
ピコーン!
太郎の脳内で、欲望にまみれた電球が光った。
(……リリーナって歌声も良いし、見た目も抜群に可愛い。これだ!)
太郎のラーメン脳が高速回転を始めた。
(アイドルにしちゃおう! コンサートを開いて、その収益で……ラーメンを食べるんだ!)
悪魔的発想だった。
太郎は邪悪な笑みを瞬時に隠し、爽やかな笑顔を作ってリリーナに近づいた。
「やぁ、リリーナ。今日もいい歌声だね」
「あ! 太郎様! えへへ、ありがとうございます!」
「ねぇ、リリーナ。君、『アイドル』になってみないか?」
「アイドル? ……アイドルって何ですか?」
リリーナが小首をかしげる。太郎は力説した。
「皆の前で歌って踊って、愛と希望を届ける素敵な職業さ。地上の人たちともっと仲良くなれる、最高の大使活動だよ」
「愛と希望……! まぁ、素敵! 私の歌声が大陸中に!?」
「うん! 間違いないよ! 僕がプロデュースするから、トップアイドルを目指そう!」
(ぐへへ……これでラーメン代も、トッピング代も稼ぎ放題だ!)
「はい! やります! 私、トップアイドルになります!」
純真無垢な人魚姫は、太郎の黒い野望に気づくことなく、目をキラキラさせて頷いた。
こうして、太郎による『リリーナ・スーパーアイドル計画』が始動した。
数日後。城下町の中央広場には、特設ステージが組まれていた。
噂を聞きつけた国民たちが、黒山の人だかりを作っている。
「シーラン国の姫様が歌うんだってよ!」
「深海の歌声か……楽しみだな!」
舞台袖。
太郎がデザイン(と100円グッズで製作)した、フリルたっぷりのアイドル衣装に身を包んだリリーナが緊張していた。
「大丈夫だよ、リリーナ。練習通りにやればいいんだ」
「はい、太郎様! 私、精一杯歌います!」
「よし、行ってこい! 伝説の始まりだ!」
太郎が背中を押すと、リリーナがステージへと飛び出した。
大歓声が上がる。
「みなさ~ん! こんにちわ~! リリーナです!」
「「「うおおおおおおおお!! 可愛いぃぃぃぃ!!」」」
一瞬で観客の心を鷲掴みにするカリスマ性。
そして、イントロが流れる。太郎が用意した楽曲は、愛でも恋でもなく、もっと切実な「願い」を込めた歌だった。
「聴いてください! デビュー曲……『絶対無敵☆スパチャ』!」
♪ ジャジャーン!(軽快なポップサウンド)
「五円! 五円! 御縁! 御縁! ハイ!」
「五円! 五円! 御縁! 御縁! ハイ!」
(キラキラリーン☆というSE)
リリーナが可愛らしく指でお金のマークを作り、リズムに乗る。
【1メロ】
銅(あか)でもない 銀(しろ)でもない
狙い打つのは 真鍮(しんちゅう)のゴールド!
穴の向こうに 未来が見える
覗いてみてよ 私とキミのディスタンス
「五円玉のことか!?」
「穴の開いた硬貨……縁起物だ!」
観客たちがざわめくが、リリーナの笑顔がそれをねじ伏せる。
「ちょっと重いかな?」って五十円(ごじゅうえん)
「重すぎて無理!」って五百円(ごひゃくえん)
身軽な愛を ジャラジャラさせて
私の配信(ステージ) 投げ込み カモン!
リリーナがステージ上の箱(お賽銭箱)を指差してウインク。
【2メロ】
スーパーのレジじゃ 嫌な顔(ヤメテ!)
お賽銭箱なら ドヤれるの(神様ー!)
だったら私の チャット欄
「お賽銭」って呼んでも いいでしょ?(いいよー!)
観客たち(サクラのフェリル含む)が叫ぶ。
「いいよー!!」
黄色(イエロー)は 金運のサイン
ピカピカ磨いて 愛を証明して!
そして、サビで会場のボルテージは最高潮に達した。
【サビ】
絶対無敵のスパチャアイドル!
五円が積もれば 山となる!
御縁をちょーだい キラキラ☆キラリ
推しの生活 支えてちょーだい!
リリーナが観客席に向かって手を伸ばす。
絶対無敵のスパチャアイドル!
穴の数だけ 幸せあげる!
五円で繋がる 無限のループ
ハイ! ハイ! スパチャよろしく!
「リリーナちゃぁぁぁん!!」
「支えるぞぉぉぉ!!」
チャリン! チャリン! ジャララララ!!
観客たちが、次々とステージ上の箱に小銭を投げ込む。
五円、十円、中には金貨まで。
それはまさに、物理的なスーパーチャット(投げ銭)の嵐だった。
ライブは大成功に終わった。
控え室で、リリーナは興奮冷めやらぬ様子で太郎に抱きついた。
「太郎様! 私の歌がこんなに皆に聞いて貰えて……幸せです!」
「そうかそうか、良かったなぁ、リリーナ」
太郎はリリーナの頭を撫でながら、もう片方の手でズッシリと重い「お賽銭箱」を撫でた。
(大漁だ……! これでラーメン全トッピング、いや、餃子とチャーハンセットもイケる!)
「ラーメン万歳!」
太郎は心の中でガッツポーズをした。
リリーナは大陸初のトップアイドルとなり、太郎は(妻に隠れて)ラーメンを食べ続ける資金源を確保した。
しかし、後にこの歌詞の意味を深く理解したサリーとライザにより、「教育上よろしくない」と太郎が正座させられる未来は、まだ少し先の話である。
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