スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第三章 世界の秩序

EP 7

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プリン・アラモード戦争と、儚き線香花火
​とある穏やかな昼下がり。
城の中庭で、サクヤ主催のティータイムが開かれていた。
テーブルの中央には、サクヤが腕によりをかけて作った、色とりどりのフルーツと生クリーム、そして黄金色に輝くプリンが乗った『特製プリン・アラモード』が、最後の一つだけ残されていた。
​その皿を挟んで、二つの巨星が火花を散らしていた。
​「……フェリルよ。年長者を敬うという言葉を知らんのか? このプリンは、どう見ても我のものだろう」
​「関係ないね! 早い者勝ちだよ! さっきのサクヤのケーキはデュークが食べたじゃないか! これは僕のだよ!」
​竜王デュークと、狼王フェリル。
最強の居候たちは、最後の一皿を巡って睨み合っていた。
​「退かぬか、駄犬」
「退かないね、トカゲ」
​バチバチバチ……!!
二人の間に見えない火花が散り、周囲の空間が歪み始める。
ただの喧嘩ではない。魔力が膨れ上がり、空が割れ、地面が揺れ始めた。
​段々と本気の喧嘩になるデューク達。
​「行くぞ!! 『アルティメット・バースト(竜王の咆哮)』!!」
​デュークが上空へ飛び上がり、口に全エネルギーを収束させる。その輝きは太陽すら霞むほど。
​「そんなの! 『アブソリュート・ゼロ(絶対零度ブレス)』!!」
​フェリルも負けじと、全てを凍てつかせる極低温の吹雪を口に集約する。
​「消し飛べェェェ!!」
「凍りつけェェェ!!」
​ズゴォォォォォォン!!!
​互いの必殺技が、あろうことか太郎城の真上で激突した。
灼熱の赤と、氷結の青。相反するエネルギーがぶつかり合い、衝撃波が城を襲う。
​「こ、この世の終わりだー!!」
​宰相マルスが頭を抱えて悲鳴を上げる。窓ガラスが割れ、植木鉢が吹き飛ぶ。
​「太郎様! 何とかして下さい! 城が消し飛びますわ!」
「貴方が飼い主でしょ!? ちゃんと躾けなさいよ!!」
​サリーとライザが、衝撃に耐えながら太郎に詰め寄る。
このままではプリンどころか、国ごと地図から消滅してしまう。
​「ハイハイ……」
​太郎はため息をつくと、ウィンドウを開いてある物を取り出した。
そして、恐るべきエネルギーの渦中へ、スタスタと歩いていった。
​「ぬ? 主よ! 邪魔するな!」
「そうだよ! これから良い感じになるのに!」
​二人が叫ぶが、太郎は平然と二人の間に割って入った。
​「まぁまぁ。喧嘩する前に、これでも見て落ち着きなよ」
​太郎が差し出したのは、細長い紙縒(こより)のようなもの。
『線香花火』だった。
​「なんだそれは……武器か?」
「匂いがする……?」
​二人が動きを止めた隙に、太郎は先端に火を点けた。
​チリチリチリ……。
​小さな火種が生まれ、やがてパチパチと繊細な火花を散らし始めた。
松葉のように広がる、儚くも美しいオレンジ色の光。
轟音と爆発の余韻が残る戦場に、静寂が訪れた。
​「…………」
​デュークとフェリルは、その小さな光の舞に目を奪われた。
​「パチパチ……」
​「……綺麗」
​フェリルがポツリと呟く。
破壊的な魔法の光とは違う、温かみのある、どこか切ない輝き。
​「うむ……。悪くない……」
​デュークも、荒ぶっていた闘気を収めた。
火花が散るたびに、二人の殺気も溶けていくようだった。
やがて、先端の火玉がポトリと落ちて、ふっと消えた。
​「どうだ? 落ち着いたか?」
​太郎が尋ねると、二人は顔を見合わせた。
​「……あれ? 僕達、何で喧嘩をしてたんだっけ?」
​フェリルが首を傾げる。
​「さぁな。……何か、どうでも良くなったわ」
​デュークも肩をすくめた。
線香花火の余韻(賢者タイム)によって、プリンへの執着など霧散してしまったようだ。
​「よし! ならば気を取り直して、今日は花火大会だ!」
​太郎はニカッと笑い、スキルから『ファミリー花火セット・徳用』を取り出した。
​「おぉ! さっきの綺麗なやつ、もっとあるのか!」
「我にも寄越せ!」
​日が暮れた中庭。
喧嘩の殺伐とした空気は消え去り、楽しい笑い声が響いていた。
​「うわぁ~! 綺麗~!」
「パパ、みて! 手持ち花火!」
​月丸と陽奈が、キラキラ光る花火を持ってはしゃいでいる。
​「ほら、これは『鼠(ねずみ)花火』だぞ。地面をクルクル回るんだ」
​シュルルルルルッ!!
太郎が火を点けた鼠花火が、不規則な動きで地面を駆け回る。
​「うわっ!? こっちに来るな!」
「ひぃぃぃ!」
​逃げ惑うマルスを追いかけ回す火花に、皆がドッと笑った。
​「ふふっ、たまにはこういうのも良いですわね」
「えぇ。あの二人が大人しく遊んでいるのが信じられませんけど」
​サリーとライザも、線香花火を眺めながら穏やかな表情を浮かべている。
最強種たちの喧嘩は、100円ショップの小さな花火によって、夏の夜の思い出へと変わったのだった。
​なお、問題のプリン・アラモードは、騒動のどさくさに紛れてサクヤが美味しくいただいていたことは、誰も知らない。
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