スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 18

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黄金の焼き芋と、未来への種芋
【太郎国・城中庭】
北風がピューピューと吹く、凍えるような寒い日だった。
執務の合間に窓の外を見た太郎は、ふと、強烈な衝動に駆られた。
(ああ……焼き芋食べてぇぇ……)
一度思いついたら止まらない。
あの、焦げた皮の香ばしさ、割った瞬間に立ち昇る湯気、そしてねっとりとした黄金色の甘み。
太郎は書類を放り出し、マフラーを巻いて中庭へと飛び出した。
「焚き火だ! 落ち葉を集めろ! 芋を投入だ!」
数十分後。
パチパチと爆ぜる焚き火の音と、甘く香ばしい匂いが中庭に充満していた。
「あら、太郎様。焼き芋を作ってるんですか?」
匂いに釣られて、サクヤがお茶のセットを持って現れた。
「あ、サクヤ。ちょうど焼けたところだよ。皆も呼んで食べる?」
「勿論ですわ。皆様、おやつの時間ですよー」
サクヤの呼びかけに、寒さで縮こまっていた面々が集まってきた。
「わぁ! 温かそうですわ!」
サリーが手を擦り合わせながら焚き火に近づく。
「寒い日には焼き芋、これぞ冬の風物詩ですわね」
ライザも嬉しそうだ。
「はい、熱いから気をつけて」
太郎は軍手をはめて、ホクホクの焼き芋を皆に配った。
デュークは、恐る恐る熱々の芋を割り、その中身を口に運んだ。
「うむ……! 甘くて旨いな。大地の恵みが凝縮されているようだ」
「アチッ! ハフッ、ハフッ! ……うめぇぇ!」
フェリルは猫舌ならぬ狼舌なのか、熱がりながらもかぶりつく手が止まらない。
「美味しいわぁ……。心まで温まりますわねぇ」
フレアも上品に、しかししっかりと頬張っている。
「風流ですな……ハフハフ」
宰相マルスも、眼鏡を曇らせながら芋の甘味に目を細めていた。
皆の幸せそうな食べっぷりを見て、太郎の中で「ある考え」が確信へと変わった。
「そうだ、マルス!」
太郎は食べかけの芋を持ったまま、立ち上がった。
「この『さつまいも』を、ワイズ皇国に配ろうかと思うんだ!」
「ブフッ!?」
マルスが芋を喉に詰まらせかけた。
「な、なんと!? 魔族の国に、でございますか!?」
周囲の空気が一変した。食べていた手が止まり、全員の視線が太郎に集まる。
「考えてみてくれよ!」
太郎は熱弁を振るった。
「さつまいもは栄養があって、保存も効く。何より、痩せた土地や荒れ地でも育てられる強い作物だ。光の届かない魔族の領土でも、これなら育つかもしれない」
太郎は、北の空――魔族の国がある方角を見つめた。
「僕は考えていたんだ。何故、魔族達はあんなにも執拗に僕達人間を襲うのか。……その原因の一つが、『食べたくても食べられないから』じゃないかって」
侵略戦争の根底にあるのは、常に資源と食料の奪い合いだ。
豊かな土地を持つ人間と、不毛の地に住む魔族。その格差が埋まらない限り、争いの火種は消えない。
「それに……デュークは言ったよな」
太郎は竜王に向き直った。
「人間も魔族も、どちらかが滅びたり、勝ちすぎたりしたら、世界のバランスが崩れて、邪神デュアダロスが復活するって。……結局、どちらかが完全勝利しても、世界は滅んでしまうんだ」
「うむ。その通りだ」
デュークが静かに頷く。
「だったら、答えは一つしかないと思うんだ」
太郎の声に力がこもる。
「人間と魔族は、いつまでも憎しみ合って、殺し合っている場合じゃない。互いを理解し、認め合い、そして……手を取り合って、共存していくしかないんだ」
太郎は手の中の焼き芋を見つめた。
「そのための、第一歩として……この『さつまいも』が、役に立つんじゃないかって、思うんだよ。武器を送るんじゃなくて、美味しい未来(タネ)を送るんだ」
場が静まり返った。
あまりにも突飛で、しかしあまりにも「太郎らしい」提案。
だが、その理想論に鋭く切り込んだ者がいた。
「し、しかし! お忘れですか!?」
ヒブネだ。彼女は震える手で槍を握りしめ、悲痛な声で叫んだ。
「魔族が……エルフの里や、魚人や、人間に何をしたか!? 私の故郷は焼かれ、多くの同胞が殺されました! 奴らは略奪者です! 殺戮者です! そんな奴らに、塩を送るような真似など……私は……ッ!!」
被害者としての叫び。
憎しみは、そう簡単に消えるものではない。芋一つで許せるような軽い傷ではないのだ。
太郎はヒブネの前に歩み寄り、その肩に手を置いた。
「分かってるさ、ヒブネ。君たちの痛みも、悔しさも、決して忘れていない」
「だったら……!」
「でも……このまま何もしなかったら、同じ事の繰り返しさ」
太郎は優しく、しかし毅然と言った。
「僕たちが報復すれば、また彼らが恨みを持つ。彼らが攻めてくれば、また誰かが死ぬ。……その連鎖の果てにあるのは、デュアダロスの復活と、世界の破滅だ」
太郎はヒブネの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「誰かが、どこかで、歯を食いしばって『剣』を置き、『芋』を差し出さなきゃいけないんだ。……辛い役回りだけど、それを出来るのは、勝者である僕たちしかいないんだよ」
ヒブネの目から涙がこぼれた。
彼女も頭では分かっているのだ。殺し合いの先に未来がないことを。ただ、心が追いつかないだけで。
「太郎様……貴方という人は……」
ヒブネはその場に泣き崩れた。それは拒絶ではなく、憎しみという重荷を下ろすための涙だった。
その様子を見ていたデュークが、口元の煤を拭いながらニヤリと笑った。
「ククク……。それが、貴様の言う、『それぞれが使命を果たして、月を見ながら酒を交わす世界』か。主よ」
かつて太郎が語った、馬鹿げた、しかし壮大な夢。
世界中の種族が、殺し合うのではなく、同じ月を見て笑い合う世界。
「まぁね」
太郎は照れくさそうに鼻をかいた。
「酒のつまみには、焼き芋も悪くないだろ?」
「違いない」
デュークが豪快に笑う。
「良かろう! ならば我等も協力しよう。その『芋外交』とやら、成功させてみせよ」
「ありがとうございます!」
太郎は空を見上げた。
冬の空は澄み渡っている。
武器ではなく、農業支援を。
憎しみではなく、満腹感を。
前代未聞の「さつまいもプロジェクト」が、今まさに始動しようとしていた。
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