スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 37

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アナザーストーリー:『百獣の王』の孤独な咆哮
​【ロムレス大陸・北部の極寒洞窟】
​佐藤太郎が、陽気な最強種たちとラーメンを啜り、平和な異世界ライフを謳歌していた頃。
同じ世界、あるいは並行世界のどこかで、もう一人の転生者が地獄を歩いていた。
​「はぁ……はぁ……ッ!」
​レオ――本名、獅子田玲央(24歳)。
かつて日本のリングでMMA(総合格闘技)の王者として君臨した男は、冷たい岩肌の上で飛び起きた。
全身が脂汗で濡れている。
​(……夢か。また、あの夢だ)
​瞼の裏に焼き付いて離れない、鮮血と炎の記憶。
​――回想――
​『レオ! 逃げろ! 俺のことはいい!』
親友であり、パーティのムードメーカーだった盗賊のラックが叫ぶ。
その首には、帝国騎士団長の剣が突きつけられていた。
​『動くなS級冒険者レオ! 貴様のその「百獣の王」の力、帝国管理下に置かせてもらう! 逆らえばコイツの命はない!』
​『やめろ……頼む、やめてくれ! 俺は従う! 言うことを聞くから!』
レオは額を地面に擦り付けた。プライドも、最強の力も、友の命の前では無意味だった。
​だが、帝国はレオの「心の弱点」を消しておきたかった。
​『見せしめだ』
ドスッ。
ラックの首が飛んだ。
​『あ……』
​レオの中で、何かが切れた。理性が蒸発し、原初の怒りが肉体を支配した。
​『百獣の王(ビースト・キング)……モード・フェニックス』
​気がつけば、帝都は地図から消えていた。
レオ自身が放った『再生と破壊の炎』によって、友を殺した騎士も、皇帝も、無関係な市民も、すべて灰になったのだ。
​――回想終了――
​「うわああああああッ!!」
​レオは頭を抱えて叫んだ。自分の手が、未だに赤く染まっているような錯覚に襲われる。
​「レオ! レオ! しっかりして!」
​温かい手が、レオの震える肩を抱きしめた。
透き通るような金髪の美女、聖女マーシャだ。彼女もまた、レオと共に国を追われた数少ない理解者だった。
​「マーシャ……。大丈夫だ、いつもの事だ……」
「大丈夫なわけないわ。貴方は泣いているもの」
​マーシャは痛ましげにレオの涙を拭った。
世界を滅ぼせる力を持っていながら、中身はただの優しい青年なのだ。
​「レオ! 追っ手が来たぞ!」
​洞窟の入り口から、小柄な少女が飛び込んできた。
大剣を背負った騎士、ルルアだ。彼女の鎧はボロボロで、連戦の過酷さを物語っていた。
​「数は!?」
「三十! でも普通の兵じゃない、近隣諸国の暗部連合よ! 完全に殺しに来てる!」
​レオたちの潜伏先は、すでに包囲されていた。
洞窟の外には、殺意を研ぎ澄ませた刺客たちが影のように蠢いている。
​「……戦うしかないのか」
​レオはふらりと立ち上がった。その瞳には、深い絶望と、諦めが宿っていた。
​「俺は……もう誰も傷つけたくないのに。戦いたくないのに!」
​レオは叫びながら、洞窟の外へ飛び出した。
一斉に放たれる矢と魔法。
​「死ね! 化け物め!」
「世界を滅ぼした悪魔め!」
​罵詈雑言がレオに突き刺さる。彼らにとってレオは、魔王以上の恐怖の対象でしかない。
​レオは涙を流しながら、自身のスキルを発動させた。
それは皮肉にも、太郎の世界で平和に暮らす「彼ら」の力を模倣し、体現する最強のスキル。
​「『百獣の王』……モード・フェンリル!」
​パキィィィィィンッ!!
​レオの体が銀色の毛並みに覆われ、四足の巨大な狼へと変貌した。
その姿は、太郎の友人である狼王フェリルに酷似していたが、その瞳に宿るのは無邪気さではなく、冷徹な殺意だった。
​「……凍れ」
​レオが短く吠えた。
​ゴオオオオオオオオッ!!
​洞窟の前が、一瞬にして絶対零度の地獄と化した。
襲いかかってきた三十人の暗部たちが、剣を振り上げたポーズのまま、瞬時に氷像へと変わる。
痛みを感じる暇も与えない、慈悲深くも残酷な一撃。
​「……ごめん」
​氷漬けになった人間たちに、狼の姿で謝罪する。
だが、感傷に浸る時間はない。遠くから、更なる増援の気配が近づいている。
​「行くぞ。ここもすぐに嗅ぎつけられる」
​レオは変身を解かずに、マーシャとルルアを振り返った。
​「『百獣の王』……モード・バハムート!」
​グォォォォォォッ!!
​今度は銀狼の姿が溶け、黄金の鱗を持つ巨大な竜へと再構成される。
竜王デュークと同等の威圧感を放つ、黄金の竜王。
​「さぁ、ここを離れるぞ。乗れ!」
​「えぇ、分かったわ」
マーシャが竜の背に飛び乗る。
「うん! 急ごうレオ!」
ルルアも続く。
​レオは巨大な翼を広げた。
その風圧だけで周囲の木々がなぎ倒される。
​「どこへ行けば……俺たちは許されるんだ」
​レオの悲痛な呟きは、風にかき消された。
黄金の竜は空高く舞い上がり、灰色の雲の中へと消えていった。
​いつか、美味しいラーメンを食べて笑い合える日が来ることを――今の彼は、まだ知らない。
彼はただ、悪夢と罪悪感を背負い、終わりのない逃避行を続けるしかなかった。
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