スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 49

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紫煙の聖域、男たちの休息
【天魔窟・VIPエリア 専用喫煙所】
重厚な防音扉が閉まると、先程までの喧騒――パチンコの電子音、キュルリンのマイクパフォーマンス、ルチアナの台パン音――が、嘘のように遮断された。
そこは、強力な魔導換気扇が静かに回る、薄暗い小部屋。
壁には黄色く変色したポスター。古びた革のソファ。そして、染み付いたタバコの匂い。
「天魔窟」において、唯一静寂が許された場所、喫煙所である。
「……ふぅぅー」
ワイズ皇国宰相ルーベンスが、世界の終わりのような深いため息をついた。
彼は壁にもたれかかり、天井を見上げた。
「うぅ……マジでないっすよ……。ラスティア様のエステ代で、ワイズ皇国の今期予算が飛びましたっつーの……」
「そうなのか」
太郎が同情を隠さずに相槌を打つ。
「あの人、美容には糸目をつけなさそうだもんなぁ」
「えぇ……『経費で落としなさい』って、国の税金を何だと思ってるんすかね。俺の胃薬代は自腹なのに」
ルーベンスは愚痴りながら、懐から緑色のパッケージ『マルボロ・メンソール(緑)』を取り出し、一本くわえた。
メンソールの冷涼感がないと、今の彼の精神は焼き切れてしまうのだろう。
その横で、カツン、と乾いた音がした。
BARのマスター、鬼神 龍魔呂だ。
彼は慣れた手付きで『マルボロ(赤)・ソフトパック』の底を叩き、一本だけスッと飛び出させた。
「……吸うか?」
龍魔呂は、無言でその一本を太郎に差し出した。
「良いのかい?」
「構わねぇよ」
太郎はありがたく受け取り、口にくわえた。
龍魔呂も自身の一本をくわえると、愛用の銀色のオイルライターを取り出した。
シュボッ。
オレンジ色の火が灯る。
龍魔呂は短く言った。
「集まれ」
「悪いね」
「へへ、すいません」
ルーベンスと太郎が、龍魔呂の手元の火に顔を寄せた。
三人の男が頭を突き合わせ、一つの火を共有する。
先端が赤く燃え、チリチリという音が微かに響く。
スゥゥゥ……プハァァ……。
三人は同時に、長く、長く煙を吐き出した。
白い煙が換気扇の方へと揺らめきながら吸い込まれていく。
その煙と共に、日々の激務、理不尽な上司、世界の命運といった重荷が、一時だけ体から抜けていくようだった。
「……旨いっすね」
ルーベンスが、しみじみと呟いた。
「あぁ、生き返る……」
「あぁ……」
龍魔呂は紫煙を目で追いながら、静かに言った。
「タバコの旨さは、どの世界も同じだ」
その言葉には、かつて元の世界(日本)で修羅場をくぐり抜けてきた彼だからこその、重みと実感がこもっていた。
地獄でも、異世界でも、戦いの合間の一服だけは裏切らない。
「そうだね」
太郎も頷き、指に挟んだフィルターを見つめた。
「言葉はいらない、ただこの時間があればいい……そんな気がするよ」
魔王城の宰相。
最強の処刑人。
そして、異世界の王。
立場は違えど、彼らは今、「疲れた男たち」という一点において、兄弟のように深く通じ合っていた。
扉の向こうの喧騒に戻るまでの、ほんの数分間。
そこには、大人の男たちだけの静謐な時間が流れていた。
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