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第五章 月下の宴
EP 13
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竜の若者、田舎を捨てる
【大陸中央部・秘境『竜人の里』】
雲海よりも遥か上空。険しい岩山に囲まれたその場所に、伝説の種族たちが暮らす里があった。
外界との交流を絶ち、数百年。時は止まり、伝統と誇りだけが支配する場所。
族長の屋敷から、空気を震わせる怒号が響いた。
「親父! 俺様はこんな田舎くせえ所にいつまでもいられるかよ!!」
ドスドスと床をきしませて歩くのは、燃えるような赤髪の巨漢、イグニス・ドラグーンだ。
背中には、自身の身の丈ほどもある巨大な『紅蓮の大戦斧』を背負っている。
「またんか馬鹿息子!!」
その後ろから、胃の辺りを押さえながら追いかけてくるのは、族長のドラグラスだ。
「貴様、外の世界を舐めておる! 今の人間の国は……特に南の『太郎国』周辺は、常識が通じない魔境なのだぞ!?」
「ハッ! 臆病風に吹かれたか、親父!」
イグニスは振り返り、鋭い牙を見せてニヤリと笑った。
「俺は50年に一人の逸材なんだろ? 試練の岩山もブレスで溶かした。長老の説教にも耐えた。……俺の力が、こんな狭い鳥籠に収まるわけねぇんだよ!」
「力だけの問題ではない! 社会の仕組みが……コンプライアンスがだな……!」
「やかましい! 俺が最強だ! 俺がルールだ! 人間の街に行って、一旗上げて来るわ!」
イグニスは聞く耳を持たず、屋敷を飛び出した。
「ま、待てイグニスーッ!! うぅ、胃が……」
ドラグラスはその場に崩れ落ちた。
【竜人の里・正門『試練の門』】
里の出口には、巨大な岩でできた門がそびえ立っている。
そこには、歴戦の猛者である二人の門番が仁王立ちしていた。
「若。お通りになれません」
「族長の許可証はお持ちですか?」
彼らはレベル80相当。人間界に行けばSランク冒険者として名を馳せるほどの実力者たちだ。
イグニスは足を止めず、斧の柄に手をかけた。
「どけ。俺様の旅立ちだ」
「ならん! 若の安全のため、ここを通すわけには……」
「力ずくでも止めるのが我らの役目!」
門番たちが構える。その全身から強烈な闘気が立ち上る。
並の竜人なら、そのプレッシャーだけで失神するだろう。
だが、イグニスは退屈そうに欠伸をした。
「……あぁ、めんどくせぇ」
イグニスの全身が、カッと赤く発光した。
周囲の気温が一瞬で急上昇し、地面の草が灰になる。
「なっ……なんだこの熱量は!?」
「ま、まさか若! 本気で……!?」
イグニスは大戦斧を振りかぶった。
斧身に紅蓮の炎と、圧縮された全闘気が螺旋状に絡みつく。
「門ごと消えな!!」
イグニスの背中の翼が展開され、ジェットエンジンのような爆発音と共に加速した。
「必殺! 『イグニス・ブレイク』ッ!!!」
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!
轟音。
そして、閃光。
衝撃波が里全体を揺らし、土煙がキノコ雲のように舞い上がった。
土煙が晴れた後。
そこには、何もなかった。
巨大な『試練の門』も、二人の門番の姿も。
ただ、地面が抉れ、地形が変わったクレーターがあるだけ。
遥か彼方の空の彼方で、
『キラーン☆』
と、二つの光(門番たち)が星になって消えていくのが見えた。
「へっ。準備運動にもなりゃしねぇ」
イグニスは斧を肩に担ぎ直し、スッキリした顔で青空を見上げた。
「待ってろよ、人間界! そして太郎国!
最強の竜人、イグニス様が支配してやるぜ! ガハハハハ!」
イグニスは翼を広げ、意気揚々と空へ飛び立った。
自分が向かう先が、腕力よりも「マイナンバーカード」が強い世界だとは、露知らずに。
【大陸中央部・秘境『竜人の里』】
雲海よりも遥か上空。険しい岩山に囲まれたその場所に、伝説の種族たちが暮らす里があった。
外界との交流を絶ち、数百年。時は止まり、伝統と誇りだけが支配する場所。
族長の屋敷から、空気を震わせる怒号が響いた。
「親父! 俺様はこんな田舎くせえ所にいつまでもいられるかよ!!」
ドスドスと床をきしませて歩くのは、燃えるような赤髪の巨漢、イグニス・ドラグーンだ。
背中には、自身の身の丈ほどもある巨大な『紅蓮の大戦斧』を背負っている。
「またんか馬鹿息子!!」
その後ろから、胃の辺りを押さえながら追いかけてくるのは、族長のドラグラスだ。
「貴様、外の世界を舐めておる! 今の人間の国は……特に南の『太郎国』周辺は、常識が通じない魔境なのだぞ!?」
「ハッ! 臆病風に吹かれたか、親父!」
イグニスは振り返り、鋭い牙を見せてニヤリと笑った。
「俺は50年に一人の逸材なんだろ? 試練の岩山もブレスで溶かした。長老の説教にも耐えた。……俺の力が、こんな狭い鳥籠に収まるわけねぇんだよ!」
「力だけの問題ではない! 社会の仕組みが……コンプライアンスがだな……!」
「やかましい! 俺が最強だ! 俺がルールだ! 人間の街に行って、一旗上げて来るわ!」
イグニスは聞く耳を持たず、屋敷を飛び出した。
「ま、待てイグニスーッ!! うぅ、胃が……」
ドラグラスはその場に崩れ落ちた。
【竜人の里・正門『試練の門』】
里の出口には、巨大な岩でできた門がそびえ立っている。
そこには、歴戦の猛者である二人の門番が仁王立ちしていた。
「若。お通りになれません」
「族長の許可証はお持ちですか?」
彼らはレベル80相当。人間界に行けばSランク冒険者として名を馳せるほどの実力者たちだ。
イグニスは足を止めず、斧の柄に手をかけた。
「どけ。俺様の旅立ちだ」
「ならん! 若の安全のため、ここを通すわけには……」
「力ずくでも止めるのが我らの役目!」
門番たちが構える。その全身から強烈な闘気が立ち上る。
並の竜人なら、そのプレッシャーだけで失神するだろう。
だが、イグニスは退屈そうに欠伸をした。
「……あぁ、めんどくせぇ」
イグニスの全身が、カッと赤く発光した。
周囲の気温が一瞬で急上昇し、地面の草が灰になる。
「なっ……なんだこの熱量は!?」
「ま、まさか若! 本気で……!?」
イグニスは大戦斧を振りかぶった。
斧身に紅蓮の炎と、圧縮された全闘気が螺旋状に絡みつく。
「門ごと消えな!!」
イグニスの背中の翼が展開され、ジェットエンジンのような爆発音と共に加速した。
「必殺! 『イグニス・ブレイク』ッ!!!」
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!
轟音。
そして、閃光。
衝撃波が里全体を揺らし、土煙がキノコ雲のように舞い上がった。
土煙が晴れた後。
そこには、何もなかった。
巨大な『試練の門』も、二人の門番の姿も。
ただ、地面が抉れ、地形が変わったクレーターがあるだけ。
遥か彼方の空の彼方で、
『キラーン☆』
と、二つの光(門番たち)が星になって消えていくのが見えた。
「へっ。準備運動にもなりゃしねぇ」
イグニスは斧を肩に担ぎ直し、スッキリした顔で青空を見上げた。
「待ってろよ、人間界! そして太郎国!
最強の竜人、イグニス様が支配してやるぜ! ガハハハハ!」
イグニスは翼を広げ、意気揚々と空へ飛び立った。
自分が向かう先が、腕力よりも「マイナンバーカード」が強い世界だとは、露知らずに。
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『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
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