スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第五章 月下の宴

EP 22

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父への手紙(虚勢)
​【太郎国・外縁部 テント村】
​満月が輝く夜。
イグニスとリーザは、河川敷の我が家(段ボールハウス)へと戻ってきた。
​「ふぅ……。食った食った」
​イグニスは満足げに腹を叩いた。
路銀は尽き、身分証もなく、住所不定無職。
客観的に見れば「詰んでいる」状態だが、不思議と心は晴れやかだった。
龍魔呂の肉じゃがと、あの圧倒的な背中を見たからだろうか。
​「さて、寝る前に……」
​イグニスは段ボールの隙間から、拾ったチラシの裏紙と、短くなった鉛筆を取り出した。
​「何してるの? 絵日記?」
リーザが毛布(新聞紙)に包まりながら尋ねる。
​「違う。……親父への手紙だ」
​イグニスは真剣な表情で言った。
里を出て数日。心配性の親父(族長)のことだ、今頃胃に穴を開けて寝込んでいるに違いない。
一応、無事であることくらいは伝えてやらねば。
​「へぇ、親孝行ねぇ。で、なんて書くの? 『ホームレスになりました』って?」
​「書くか馬鹿者!!」
イグニスはカッと目を見開いた。
​「俺は未来の英雄だぞ!? 心配かけねぇように、少し……そう、『演出』を加えるんだよ!」
​イグニスは月明かりの下、鉛筆を走らせた。
​『拝啓、親父殿。
​俺様だ。イグニスだ。
今、俺様は太郎国の王都で、人間たちに熱烈な歓迎を受けている。
​街の連中は、俺の姿を見るなり驚いて道を空け(※不審者として避けられている)、
冒険者ギルドでは受付嬢が震え上がっていた(※警備ドローンに包囲された)。
​食事も最高だ。
毎日、特上の肉と野菜をふんだんに使った煮込み料理(※炊き出しの豚汁)や、
伝説の料理人が作った宮廷料理級のディナー(※売れ残りの肉じゃが)を振る舞われている。
​さらに、俺の才能を見込んだ現地の美女(※リーザ)が、専属のガイドとして付き従っている。
彼女は俺に「一生ついていく(※借金の取り立て)」と言って聞かないほどだ。
​心配するな。
この国を支配するのも時間の問題だ。
俺様の名が世界に轟くのを、首を洗って待っていろ。
​追伸:
もし仕送りができるなら、金貨ではなく「マイナンバーカード」を送ってくれ。(※切実)
​イグニス・ドラグーンより』
​「……よし。完璧だ」
​イグニスは満足げに頷き、手紙を折り畳んだ。
嘘は書いていない。事実を少し「英雄的解釈」しただけだ。
​「書き終わった? じゃあ、明日の朝イチでポストに入れてきなさい」
​リーザが欠伸をしながら言った。
​「あぁ。……これで親父も安心するだろう」
​イグニスは段ボールハウスの入り口(ガムテープ補修済み)を潜り、煎餅布団(段ボール三枚重ね)の上に横になった。
硬い。冷たい。
だが、里のふかふかなベッドよりも、なぜか落ち着く。
​「おやすみ、後輩。明日は早いからね」
​「あぁ? 何があるんだ?」
​「決まってるでしょ。**『空き缶拾い』**よ!」
​リーザがニカッと笑った。
​「明日は燃えないゴミの日! アルミ缶を集めて換金して、借金を返すのよ!
サボったら晩飯抜きだからね!」
​「なっ……! 最強の竜人がゴミ拾いだと!?」
​「職業に貴賎なし! 働く者は食うべからずよ!」
​「ぐぬぬ……!」
​イグニスは毛布(新聞紙)を頭まで被った。
英雄への道は険しい。
だが、一歩ずつ進むしかないのだ。まずは空き缶一つから。
​「見てろよ……。いつか必ず、この街の頂点に立ってやる……!」
​イグニスは小さく呟き、眠りに落ちた。
夢の中で、彼は山積みの肉じゃがに囲まれ、龍魔呂と肩を組んで笑っていた。
​外では、満月が優しくテント村を照らしている。
住所不定無職、所持金ゼロ。
けれど、夢と希望(と借金)だけはたっぷりとある。
​最強の世間知らず、イグニス・ドラグーンの「太郎国サバイバル生活」は、まだ始まったばかりである――。
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