方向音痴の姫様を拾ったら、俺のクレジットカードで勝手に和牛を買われた件 〜植物執事が特攻服で内閣府へ迎えに来る、胃痛MAXの同居生活〜

月神世一

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EP 18

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遭難! 渋谷大雪原
 ハチ公像が、雪に埋もれて耳だけ出している。
 かつて若者で溢れかえっていた渋谷スクランブル交差点は、いまや見渡す限りの大雪原と化していた。
「はぁ……はぁ……。ここ、本当に渋谷……?」
 春太は、膝まで積もった新雪をかき分けながら、よろよろと歩いていた。
 スーツは凍りついてバリバリになっており、革靴の感覚はとうの昔に失われている。
 体温計があれば、間違いなく生命活動の維持が困難な数値を叩き出しているだろう。
「あ……なんか、目の前にお花畑が見える……。死んだばあちゃんが手を振ってる……」
 春太の意識が朦朧とし始めた。
 これが「恋のドキドキ」ではなく「死の淵の動悸」であることに、仕掛け人の二人は気づいていない。
 交差点を見下ろすビルの屋上。
 ネギオは腕組みをして、眼下の惨状(遭難しかけの春太)を見つめていた。
「……ふむ。心拍数が上がりきっていませんね。ただ凍えているだけです」
「ネギオ、どうしたの? ハルタ様、遅いわね」
 隣で、ルナが雪だるまを作りながら首をかしげる。
「姫様。ゲレンデマジックには『恐怖』というスパイスが必要です。吊り橋効果を最大化させるため、少し追い込みましょう」
 ネギオがパチンと指を鳴らした。
 周囲の雪が渦を巻き、数十体の小さな影が生まれた。
 それは、木の根と氷で構成された、凶暴な顔つきの雪だるま――小型の『スノー・ポーン(雪男兵)』たちだった。
「行け。あの虫を追い回し、恐怖のどん底に叩き落とせ。ただし、殺すなよ(ギリギリで)」
『シャアアアアア!!』
 雪男たちが奇声を上げ、ビルから飛び降りた。
 地上。
 春太が「もうダメだ、ここで眠ろう……」と雪山で一番やってはいけない決断を下しかけた、その時。
 ドササササッ!
 周囲の雪が爆発し、白い悪魔たちが襲いかかってきた。
『ギシャアアッ!』
「ひいっ!? なんだお前ら!? 雪だるま!? 歯が鋭すぎだろ!」
 春太の生存本能が火を噴いた。
 凍えていたはずの体に、アドレナリンがドバドバと放出される。
「うわあああああ! 来るなァァァァ!!」
 春太は雪原を全力疾走した。
 センター街を、道玄坂を、スーツ姿の男が転がりながら逃げ惑う。後ろからは、飢えたピラニアのような雪男の群れ。
「なんで!? なんで渋谷で雪男に食われそうになってんの!? 俺の人生設計どこで間違えたァァァ!?」
 絶叫しながら、春太はネギオの誘導通りに追い詰められていく。
 目指すは、この雪原にそびえ立つ、巨大なランドマーク。
 ――SHIBUYA109。
 今や完全に雪に覆われ、難攻不落の雪山と化したその頂上で、最後のイベントが待っていた。
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