方向音痴の姫様を拾ったら、俺のクレジットカードで勝手に和牛を買われた件 〜植物執事が特攻服で内閣府へ迎えに来る、胃痛MAXの同居生活〜

月神世一

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第二章 春太マグロ漁船に乗せられる

EP 6

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深海の帝王、襲来
 ズドオオオオオオン!!
 春太の目の前に、濡れた巨木――のようなイカの触手が叩きつけられた。
 砂浜が爆発し、春太は爆風で数メートル吹き飛ばされる。
「痛ってぇ! な、なんなんだよコイツら!?」
 春太が顔を上げると、そこには絶望がそびえ立っていた。
 海面から完全に姿を現した、全長100メートル級の巨大イカ(クラーケン)。
 その巨大な目玉が、ギョロリと春太をロックオンした。
『キュイイイイイイイイ!!』
 耳をつんざくような鳴き声。
 10本の触手が、獲物を捕らえようと蠢(うごめ)く。
「ひいっ! こっち見るな! 俺は美味くないぞ! 添加物まみれだし、ストレスで肉が硬いぞ!」
 春太は砂浜を転がるように逃げ出した。
 しかし、イカは執拗に春太だけを狙ってくる。なぜか。彼が一番「弱そうで捕まえやすそう」だからだ。
「まあ! 見てネギオ! イカさんがハルタ様と『鬼ごっこ』してるわ!」
 白亜の宮殿のテラスで、ルナは目を輝かせていた。
「ハルタ様、逃げ足が速いですわ! 頑張ってー!」
「……ふむ。素晴らしい吸盤の吸着力ですね」
 ネギオは冷静に、食材としてのスペックを評価していた。
「あの足の太さなら、イカリング一つで浮き輪サイズ……いや、土管サイズは作れそうだ。透明感のある身、活きの良さ。刺身にすれば最高でしょう」
「ネギオさん! 解説してないで助けてぇぇぇ!!」
 春太がテラスの下を走り抜ける。その直後、巨大な触手がテラスの柱を薙ぎ払った。
 バキィッ!
 宮殿の一部が崩壊するが、ルナの結界があるので二人は無傷だ。
「おっと。私のキッチン(島)を荒らすとは、躾(しつけ)が必要ですね」
 ネギオが少し不機嫌になった時。
 海が再び割れた。
 ザバァッ!! ジョキィィィィン!!
 金属を擦り合わせるような不快な音が響く。
 現れたのは、真っ赤な装甲に身を包んだ巨大伊勢海老。
 そのハサミは、重機のアームよりも巨大で、切れ味は鋭利な日本刀のようだ。
『キシャアアアアアッ!!』
 伊勢海老は、目の前で暴れるイカに敵対心を燃やし、ハサミを振り上げた。
 さらに。
 ゴゴゴゴゴ……パカッ!!
 波打ち際が隆起し、巨大なホタテが上陸した。
 その貝殻は戦車の装甲板よりも分厚く、開閉するたびに突風が巻き起こる。中身の貝柱は、巨大な円柱のようだ。
「え、エビ!? ホタテ!? なんで全員集合してんの!?」
 春太は三体の怪獣に囲まれ、砂浜の中心で立ち尽くした。
 
 右にイカ。
 左にエビ。
 正面にホタテ。
 中央に公務員。
 最悪のカルテットである。
「ハルタ様! すごいです! 水族館のパレードですわ!」
「パレードじゃない! 処刑台だ!」
 怪獣たちはお互いを牽制し合いながら、じりじりと距離を詰めてくる。
 その殺気立った空気は、まさに一触即発。
「……ほう。どうやら彼らは、この島の『覇権(メインディッシュの座)』を争っているようですね」
 ネギオが面白そうに呟いた。
「イカ、エビ、ホタテ……。海鮮の三国志、ここに開幕ですか。誰が勝っても、私の鍋に入ることには変わりありませんが」
「解説はいいから! 俺を回収して! マジで死ぬ!!」
 春太の悲鳴を合図にするかのように、巨大イカの触手が唸りを上げて振り下ろされた。
 狙いは春太――ではなく、横合いから迫ってきた伊勢海老の脳天!
 ドゴォォォォォン!!
 怪獣大決戦のゴングが、高らかに鳴り響いた。
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