29 / 30
第二章 春太マグロ漁船に乗せられる
EP 9
しおりを挟む
伝説の海鮮カレー
砂浜に横たわるのは、こんがりと焼き上がった3体の元・怪獣たち。
香ばしい匂いが島中に充満しているが、ネギオはまだ満足していなかった。
「……ふむ。素材の味を活かすのも良いですが、やはりキャンプといえば『カレー』でしょう」
ネギオはパチンと指を鳴らした。
彼が懐(四次元ポケット並みの収納力を持つ樹皮の裏)から取り出したのは、大量のスパイス瓶と、怪しげな紫色の植物の根っこ。
「ネギオ特製・超配合スパイスです。これを使えば、ゴムタイヤでも美味しく煮込めますよ」
「ゴムは煮込まないでください!」
春太がツッコミを入れるが、調理は止まらない。
ネギオは島の岩場にある、先ほどの戦闘でできた巨大なクレーター(直径20メートル)に目をつけた。
「ちょうどいい鍋がありますね」
彼は海水を魔法で淡水化してクレーターに満たし、ルナに目配せをした。
「姫様、再点火を。今度はトロ火でコトコトと」
「はーい! 温泉くらいの温度ね!」
ルナが杖を振ると、クレーターの水が適温に温まり始めた。
そこへ、ネギオがスパイスと謎の植物を投入する。
水面が黄金色に輝き、複雑で刺激的な香りが立ち昇る。
「さあ、具材の投入だ」
シュババババッ!!
ネギオの蔦が高速で動き、焼き上がった巨大イカ、伊勢海老、ホタテを「一口サイズ(といってもドラム缶サイズ)」に解体し、次々と天然の鍋へ放り込んでいく。
グツグツグツ……。
巨大なシーフードが、スパイスの海で踊る。
イカの旨味、エビのコク、ホタテの甘みがスープに溶け出し、渾然一体となっていく。
「仕上げに、ヤシの実のミルクと、私の愛情(マナ)を一搾り」
数十分後。
無人島の一角に、**【プール一杯分の特製シーフードカレー】**が完成した。
「……無茶苦茶だ」
春太は呆然と呟いた。
目の前にあるのは、料理というより「マグマの池」に見える。
だが、匂いだけは暴力的までに美味そうだ。
「さあ、虫。味見役の栄誉を与えましょう」
「毒見の間違いだろ……」
文句を言いながらも、春太は巨大な貝殻(お椀代わり)に盛られたカレーを受け取った。
スプーンはないので、手頃な木の板ですくって口に運ぶ。
「……いただきます」
パクり。
カッッッ!!
春太の目が見開かれた。
最初はスパイスの強烈なパンチ。次に、濃厚な海鮮の出汁が津波のように押し寄せてくる。
伊勢海老の味噌のコク、イカの弾力、ホタテの甘み。それらがネギオの謎スパイスで見事に調和し、脳髄を痺れさせるほどの旨味爆弾となって炸裂した。
「う……うめぇぇぇぇぇ!!」
春太の目から涙が噴き出した。
美味い。美味すぎる。
マグロ漁船での粗食、漂流の不安、怪獣への恐怖。それら全てのストレスが、カレーのスパイスと共に汗となって吹き飛んでいく。
「なんだこれ! 店が出せるレベルじゃない! 国が買えるレベルだ!」
「当然です。私の計算に狂いはありません」
ネギオが鼻を鳴らした、その時。
ボォォォォォォォ……!!
沖合から、聞き覚えのある汽笛が聞こえた。
水平線の彼方から、黒煙を上げて近づいてくる一隻の船。
『第十八根性丸』だ。
「おーい!! 生きてるか新入りーーッ!!」
甲板で船長が手を振っている。
どうやら春太たちが消えた後、必死に捜索してくれていたらしい(あるいはルナという貴賓客を失った責任を恐れて)。
「船長ーーッ!! ここですーーッ!!」
春太が手を振る。
船が岸に近づくと、船員たちが鼻をヒクヒクさせながら上陸してきた。
「なんだこの匂いは……!?」
「めちゃくちゃ美味そうな匂いがするぞ!?」
彼らの目の前に広がる、黄金色のカレーの池。
そして、山のような巨大シーフードのグリル。
「あ、あんたたち……遭難してたんじゃねえのか!? なんで宴会してんだ!?」
「まあ、細かいことはいいではありませんか」
ルナがにっこりと微笑み、カレーを差し出した。
「たーんと召し上がれ! おかわりはプール一杯分ありますわよ!」
「うおおおおお! カレーだ! シーフードカレーだぁぁぁ!!」
海の男たちが歓声を上げ、カレーになだれ込む。
「うめええ!」「このエビ、プリップリだぞ!」「酒持ってこい酒ェ!!」
無人島の砂浜は、一瞬にして大宴会場と化した。
春太も、船長と肩を組み、カレーを頬張りながら笑い合った。
「……ははっ。まあ、終わりよければ全て良しか」
地獄のマグロ漁船も、怪獣バトルも、全てはこの一杯のカレーのためにあったのかもしれない。
満腹と幸福感に包まれながら、春太は久しぶりに心からの笑顔を見せたのであった。
砂浜に横たわるのは、こんがりと焼き上がった3体の元・怪獣たち。
香ばしい匂いが島中に充満しているが、ネギオはまだ満足していなかった。
「……ふむ。素材の味を活かすのも良いですが、やはりキャンプといえば『カレー』でしょう」
ネギオはパチンと指を鳴らした。
彼が懐(四次元ポケット並みの収納力を持つ樹皮の裏)から取り出したのは、大量のスパイス瓶と、怪しげな紫色の植物の根っこ。
「ネギオ特製・超配合スパイスです。これを使えば、ゴムタイヤでも美味しく煮込めますよ」
「ゴムは煮込まないでください!」
春太がツッコミを入れるが、調理は止まらない。
ネギオは島の岩場にある、先ほどの戦闘でできた巨大なクレーター(直径20メートル)に目をつけた。
「ちょうどいい鍋がありますね」
彼は海水を魔法で淡水化してクレーターに満たし、ルナに目配せをした。
「姫様、再点火を。今度はトロ火でコトコトと」
「はーい! 温泉くらいの温度ね!」
ルナが杖を振ると、クレーターの水が適温に温まり始めた。
そこへ、ネギオがスパイスと謎の植物を投入する。
水面が黄金色に輝き、複雑で刺激的な香りが立ち昇る。
「さあ、具材の投入だ」
シュババババッ!!
ネギオの蔦が高速で動き、焼き上がった巨大イカ、伊勢海老、ホタテを「一口サイズ(といってもドラム缶サイズ)」に解体し、次々と天然の鍋へ放り込んでいく。
グツグツグツ……。
巨大なシーフードが、スパイスの海で踊る。
イカの旨味、エビのコク、ホタテの甘みがスープに溶け出し、渾然一体となっていく。
「仕上げに、ヤシの実のミルクと、私の愛情(マナ)を一搾り」
数十分後。
無人島の一角に、**【プール一杯分の特製シーフードカレー】**が完成した。
「……無茶苦茶だ」
春太は呆然と呟いた。
目の前にあるのは、料理というより「マグマの池」に見える。
だが、匂いだけは暴力的までに美味そうだ。
「さあ、虫。味見役の栄誉を与えましょう」
「毒見の間違いだろ……」
文句を言いながらも、春太は巨大な貝殻(お椀代わり)に盛られたカレーを受け取った。
スプーンはないので、手頃な木の板ですくって口に運ぶ。
「……いただきます」
パクり。
カッッッ!!
春太の目が見開かれた。
最初はスパイスの強烈なパンチ。次に、濃厚な海鮮の出汁が津波のように押し寄せてくる。
伊勢海老の味噌のコク、イカの弾力、ホタテの甘み。それらがネギオの謎スパイスで見事に調和し、脳髄を痺れさせるほどの旨味爆弾となって炸裂した。
「う……うめぇぇぇぇぇ!!」
春太の目から涙が噴き出した。
美味い。美味すぎる。
マグロ漁船での粗食、漂流の不安、怪獣への恐怖。それら全てのストレスが、カレーのスパイスと共に汗となって吹き飛んでいく。
「なんだこれ! 店が出せるレベルじゃない! 国が買えるレベルだ!」
「当然です。私の計算に狂いはありません」
ネギオが鼻を鳴らした、その時。
ボォォォォォォォ……!!
沖合から、聞き覚えのある汽笛が聞こえた。
水平線の彼方から、黒煙を上げて近づいてくる一隻の船。
『第十八根性丸』だ。
「おーい!! 生きてるか新入りーーッ!!」
甲板で船長が手を振っている。
どうやら春太たちが消えた後、必死に捜索してくれていたらしい(あるいはルナという貴賓客を失った責任を恐れて)。
「船長ーーッ!! ここですーーッ!!」
春太が手を振る。
船が岸に近づくと、船員たちが鼻をヒクヒクさせながら上陸してきた。
「なんだこの匂いは……!?」
「めちゃくちゃ美味そうな匂いがするぞ!?」
彼らの目の前に広がる、黄金色のカレーの池。
そして、山のような巨大シーフードのグリル。
「あ、あんたたち……遭難してたんじゃねえのか!? なんで宴会してんだ!?」
「まあ、細かいことはいいではありませんか」
ルナがにっこりと微笑み、カレーを差し出した。
「たーんと召し上がれ! おかわりはプール一杯分ありますわよ!」
「うおおおおお! カレーだ! シーフードカレーだぁぁぁ!!」
海の男たちが歓声を上げ、カレーになだれ込む。
「うめええ!」「このエビ、プリップリだぞ!」「酒持ってこい酒ェ!!」
無人島の砂浜は、一瞬にして大宴会場と化した。
春太も、船長と肩を組み、カレーを頬張りながら笑い合った。
「……ははっ。まあ、終わりよければ全て良しか」
地獄のマグロ漁船も、怪獣バトルも、全てはこの一杯のカレーのためにあったのかもしれない。
満腹と幸福感に包まれながら、春太は久しぶりに心からの笑顔を見せたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜
namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。
かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。
無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。
前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。
アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。
「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」
家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。
立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。
これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。
落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。
いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。
ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、
実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。
だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、
王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。
ミレイにだけ本音を見せるようになり、
彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。
しかしレオンの完璧さには、
王宫の闇に関わる秘密があって——
ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、
彼を救う本当の王子に導いていく。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる