異世界で【自動販売機】のスキルを貰ったので、外科医の知識と銃火器で無双しようとしたら、仲間が破壊神ばかりで借金生活が確定した件

月神世一

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EP 9

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『外科医の決断、9mmの弾丸』
 ジャラジャラジャラッ!!
 優太は、ルナが作った残りの金貨すべてを、自販機の投入口に叩き込んだ。
 金貨五枚。日本円にして約五万円。
 それが、仲間(キャルル)の命と、これから手にする暴力の値段だ。
 優太の指が、迷いなくタッチパネルの『購入』ボタンを叩く。
 ガコンッ、ズシッ。
 取り出し口に、重厚な金属音が響いた。
 優太は泥だらけの手を突っ込み、その冷たい鉄塊を鷲掴みにする。
 【ベレッタ 92FS】。
 米軍でも採用された実績を持つ、イタリア製の傑作自動拳銃。
 そして、別売りの**【9mmパラベラム弾(15発入り)】**。
「間に合えッ……!」
 優太の動きに無駄はなかった。
 ハワイの射撃場。元SEALsの教官ボブに、指にタコができるほど叩き込まれた動作(マッスルメモリー)。
 マガジンに弾を込める時間は惜しい。彼は「装填済み予備マガジン(別売りオプション・金貨一枚)」を選んでいたのだ。
 カシャンッ!
 グリップにマガジンを叩き込む。
 ジャキッ!
 スライドを引いて、初弾を薬室(チャンバー)に送り込む。
 セーフティ解除。
 構え(スタンス)。
 両手でグリップを包み込むように保持し、照星(フロントサイト)と照門(リアサイト)を重ねる。
 その間、わずか2.5秒。
「ギガァァァッ!!」
 ジェネラル・ゴブリンの丸太のような腕が、泥に埋まったキャルルの頭上へと振り下ろされようとしていた。
 距離は10メートル。
 通常の人間なら、震えて狙いが定まらない距離だ。ましてや、外せばキャルルに当たるかもしれない状況。
 だが、優太の視界は冷え切っていた。
 彼の脳裏には、解剖学の図面が青写真のように浮かび上がっていた。
(相手は人型。筋肉量は多いが、骨格構造は霊長類に準ずる)
(皮膚は硬い。頭蓋骨も厚いだろう。9mm弾では、前頭骨で跳弾するリスクがある)
(確実に機能を停止させるには――)
 優太の指がトリガーにかかる。
 狙うのは眉間ではない。
 大きく開いた口の奥。あるいは、眼球の奥。
 脳と脊髄を繋ぐ生命維持の中枢。
 ――延髄(Medulla Oblongata)。
「そこが、患部だ」
 優太は息を吐ききり、引き金を絞った。
 ドォォンッ!!
 乾いた爆音が、森の空気を切り裂いた。
 雷鳴とは違う、もっと鋭利で、暴力的な破裂音。
 マズルフラッシュが薄暗い森を一瞬だけ白く染める。
 銃口から飛び出した9mmの鉛玉は、音速を超えて空間を食い破り、ジェネラル・ゴブリンの右眼窩(がんか)へと吸い込まれた。
 眼球を破裂させ、薄い骨の壁を貫通し、柔らかい脳漿を掻き回しながら、正確に脳幹を破壊する。
「ギ……?」
 ゴブリンの咆哮が、唐突に途切れた。
 振り上げられた剛腕が、空中でピタリと止まる。
 まるで糸が切れた操り人形のように。
 ズズ……ズドォォン。
 巨体が、スローモーションのように後ろへ倒れ込んだ。
 泥飛沫が上がり、二度と動かなくなる。
 即死だった。
「…………」
 森に静寂が戻る。
 漂うのは、泥の臭いと、硝煙(ガンパウダー)のツンとする刺激臭。
 優太は銃口を下げず、しばらく残心(ザンシン)を続けた後、ゆっくりと息を吐いた。
 銃のスライドからは、硝煙がゆらりと立ち上っている。
「優……太……さん?」
 泥まみれのキャルルが、呆然とこちらを見ていた。
 彼女には何が起きたか分からなかっただろう。
 優太が黒い鉄の棒を向けた瞬間、雷のような音がして、強敵が一撃で絶命したのだから。
「……すげぇ」
 泥沼から顔を出したイグニスが、信じられないものを見る目で呟いた。
「魔法じゃねぇ……闘気も感じなかった。なのに、あのジェネラルを一撃かよ……。なんだありゃ、黒い筒から火を吹きやがったぞ」
「ひっ、ひぃぃ……!」
 ルナに至っては、腰を抜かして震えている。
 爆音に驚いたのだろう。
 優太はセーフティをかけ、銃を下ろした。
 途端に、腕に重みが戻ってくる。
 そして同時に、別の「重み」も心にのしかかってきた。
「……はぁ」
 優太は天を仰いだ。
「金貨、全部使っちまった……」
 借金返済のために稼ぎに来たのに、経費(銃と弾代)で売上が消えたどころか、マイナスだ。
 手元に残ったのは、護身用の銃一丁と、残弾14発。
 そして――。
「優太さんッ!!」
 キャルルが泥沼から這い出し、泥だらけのまま優太に抱きついてきた。
「ぐわっ! 汚い! 泥がつく!」
「うわぁぁぁん! 死ぬかと思いましたぁ! ありがとうございますぅ!」
「分かった、分かったから離れろ! このパーカー、ユニクロだけど気に入ってるんだぞ!」
 キャルルは泣きじゃくりながら、優太の胸に顔を埋めている。
 その温かさを感じて、優太はようやく実感した。
 救えたのだと。
 金は失ったが、命は守れた。
「……まあ、必要経費か」
 優太は苦笑し、キャルルの泥だらけの頭をポンポンと撫でた。
 医学生・中村優太が、この世界で初めて「外科手術(オペ)」を成功させた瞬間だった。
 こうして、泥沼の激戦は幕を閉じた。
 だが、本当の地獄(お会計と反省会)はこれからである。
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