異世界で【自動販売機】のスキルを貰ったので、外科医の知識と銃火器で無双しようとしたら、仲間が破壊神ばかりで借金生活が確定した件

月神世一

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EP 10

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『反省会という名の宴会』
 夕暮れ時の『冒険者ギルド』。
 そのカウンターで、優太は魂が抜けたような顔で立ち尽くしていた。
「――以上が、今回の精算となります」
 受付嬢がニコリともせずに明細書を突き出す。
 【報酬】
 ・ゴブリンの耳(98個):金貨 4枚 90銀
 ・ジェネラル・ゴブリンの角:金貨 2枚
 計:金貨 6枚 90銀
 ここまではいい。Fランクにしては破格の稼ぎだ。
 問題はその下だ。
 【天引き・罰金】
 ・森林への過度な放火(犯人:赤髪の竜人):金貨 2枚
 ・地形変動による植生破壊および泥沼化(犯人:金髪のエルフ):金貨 3枚
 ・ギルド壁面の修繕費(犯人:同上竜人):金貨 50銀
 計:金貨 5枚 50銀
「……差し引き、金貨 1枚と 銀貨 40枚のお支払いです」
 チャリン。
 カウンターに置かれたのは、雀の涙ほどの硬貨。
「……嘘だろ」
 優太は膝から崩れ落ちた。
 命がけで戦った。銃も買った。泥だらけになった。
 その結果が、これだ。
「ガハハ! プラスになっただけマシだろう! 細かいことは気にするな!」
「そうですぅ。森も綺麗になりましたし、結果オーライですぅ」
 後ろで能天気に笑う二人の巨悪(イグニスとルナ)。
 優太は震える手で報酬を握りしめ、二人の脛(すね)を全力で蹴飛ばした。
「痛っ!? 何するんだ!」
「結果オーライなわけあるか! この金で……この金でギリギリなんだよ!」
 優太は涙目で叫び、宿屋へと走った。
 ***
 『踊るグリフォン亭』。
 優太は店主のカウンターに、稼いだばかりの金貨と銀貨を叩きつけた。
「借金返済だ! 文句ないだろ!」
 店主はコインを数え、ニヤリと笑った。
「おう、期間内に耳を揃えて返すとはな。見直したぜ」
 店主は金庫から、黒い腕時計を取り出した。
 G-SHOCK。
 優太の相棒が、ようやく左手首に帰ってきた。
「よかった……本当によかった……」
 優太は時計を頬ずりしたい気分だった。
 だが、現実は非情だ。
 借金は返したが、手元に残った金はゼロ。今夜の飯代すらない。
「優太さん、お腹空きましたぁ……」
「戦った後は肉だろ! 肉屋に行こうぜ!」
「お金、ないんですよね……?」
 三者三様の反応。キャルルだけが申し訳なさそうにしている。
 優太は大きく溜息をつき、言った。
「……部屋に戻るぞ。今日は部屋飲みだ」
 ***
 狭い宿の一室。
 そこに、再び【自動販売機】が鎮座していた。
「今回は特別だぞ。……売り上げ(前のゴブリンの落とした小銭など)で奢ってやる」
 優太は自販機のボタンを連打した。
 ガコン、ガコン、ガコン。
 取り出し口から出てきたのは、光り輝く現代の保存食たちだ。
「うおおお! なんだこの缶詰は!」
「いい匂いがしますぅ!」
 優太が用意したのは、『ホテイのやきとり(たれ味)』の缶詰、『柿の種』の小袋、そして『缶ビール(発泡酒)』とジュースだ。
 全部合わせても千円もしない安上がりな宴会。
 だが、異世界の住人には「王宮の晩餐」に見えるらしい。
「いただきまーす!」
 プシュッ! パカッ!
 缶を開ける音が響く。
「んん~っ! この『やきとり』、柔らかくて味が濃くて、最高ですぅ!」
「この『柿の種』とかいう辛い豆! ポリポリして止まらねぇぞ! 酒が進む!」
「優太さん、この『サイダー』って飲み物、宝石みたいに綺麗ですね……!」
 三人は目を輝かせて貪り食っている。
 優太も、缶ビールのプルタブを開け、喉に流し込んだ。
「くぁーっ……!」
 安い発泡酒だが、疲れた体には最高のご褒美だ。
 炭酸とアルコールが脳を麻痺させていく。
「さて、反省会だ」
 優太は空き缶をテーブルに置き、ジト目で仲間たちを見た。
「イグニス。お前は森で火を吐くな。次やったら飯抜きだ」
「むぅ……分かったよ。だが、あの威力は凄かっただろ?」
「ルナ。お前は魔法の出力を今の十分の一にしろ。あと迷子になるな」
「えへへ、善処しますぅ」
「キャルル。お前は……」
 優太が視線を向けると、キャルルはビクリと背筋を伸ばし、ウサギ耳をピーンと立てた。
「は、はいっ!」
「……お前はよくやった。助かったよ」
 優太が素直に礼を言うと、キャルルはボッと顔を赤らめ、嬉しそうに耳をパタパタさせた。
「えへへ……優太さんのあの魔法(銃)、凄かったです。私、優太さんについてきてよかった」
 その純粋な笑顔を見て、優太の毒気も抜かれてしまった。
(……まあ、こんなパーティも悪くないか)
 金はない。
 仲間は災害級のトラブルメーカー。
 自分はただの医学生。
 けれど、ここには「美味い酒」と「頼れる仲間」がいる。
「よし、飲むぞ! 明日はもっと稼ぐからな!」
「おーっ!」
 笑い声が夜更けまで響いた。
 優太はまだ知らない。
 彼らが捨てた「空き缶」が、この後、とんでもない波紋を呼ぶことを。
 ***
 深夜。宿屋の裏路地。
 ゴミ捨て場に、月明かりが差し込んでいた。
 そこに、一つの影が現れる。
 質の良いスーツを着た、細目の男。
 男はゴミ箱の中から、優太たちが捨てた『アルミ缶』と『ペットボトル』を拾い上げた。
「……ふむ」
 男は、アルミ缶の薄さと、その精巧な塗装を月明かりにかざす。
 そして、ペットボトルの透明な材質を指で弾いた。
「ミスリルより軽く、ガラスより割れにくい……未知の素材(マテリアル)。それに、この完璧な成形技術」
 男の目が、鋭い光を帯びる。
 彼は懐から手帳を取り出し、何やら書き込んだ。
「噂の『自販機使い』……ですか。これは、我が『ゴルド商会』の利益になりそうだ」
 男は不敵に微笑むと、闇の中へと消えていった。
 手には、優太が飲み干したビールの空き缶が握られていた。
 医学生・中村優太の異世界冒険譚。
 その戦いは、まだ始まったばかりである。
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