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「溝:鈴守」
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あの日、私は好奇心に負けた。
灯谷の話を聞いて・・・。
その大部分はまだ、ベールに隠されたまま
それでも、彼の一部を聞いて、好奇心が湧いた。
その後、猟犬のように友人たちの悩みを嗅ぎ回り
漸く見つけた「山代 伊吹」。
この時の私は、二つの意味で悪手を取った。
でも、それに気付いた時には手遅れだった。
灯谷に山代を宛がった時、彼はずっと苦い顔をしていた。
でもそれは、普段慣れない人間関係の延長にある「苦手意識」だとばかり思っていた。
でも、それは放課後になって漸く意味が分かった。
灯谷は言っていた。
「この高校にも、中学の同期が何人かいる。」と・・・。
そして、聞いてしまった。
偶々、通り過ぎただけの数名の男子生徒の会話。
「2組の灯谷っているじゃん?あいつ、中学の時ヤベェ奴でさ~。」
「何々?」
「霊が視えるとか吹かしてやんの!ウケるだろ!?」
「はぁ?マジかよ、いい年こいて何言ってんだろうねぇ、そいつ。あははは。」
その会話を聞いて、背筋が凍った。
「それなら、今度・・・俺らも視てもらおうぜ!」
「いいねぇ!どんなホラ吹くか楽しみじゃん!」
それは、まるでつい先ほどまでの私だった・・・。
それを自覚したとき、心臓が締め付けられるように
呼吸が浅くなり、視界が薄れた。
『私は、なんて惨い事をしていたんだろう。』
彼の傷口を抉る大衆の一人になっていた・・・。
そして、その日から
やけに息苦しい日が続いた。
どうしてだろう、この事を彼に話そうとすると決まって邪魔が入った。
そして、そこでまた自己嫌悪に陥る。
マラソンの練習中
途中までは良かった。
走っている最中、後ろから山代の声がした・・・ような気がする。
軽く振り返っても、彼女はおらず・・・。
当然だ、彼女は足を怪我している。マラソンなど走ってなど居られない。
だが・・・聞こえる。
「ねぇ。」という小さな声が。
周囲を走る他の生徒たちの会話や吐息、足音に交じって
「ねぇ、どこに行くの?」という声が、小さくか細く聞こえる。
直後聞こえた声に、全身から鳥肌が立った。
「私も連れて行ってよ。」
寒気と怖気と吐き気が一遍に襲ってきた。
眼を覚ました保健室で、彼が様子を見に来ていたと・・・看護教諭から知らされた。
酷く焦った様子だったという。
それからも中々、タイミングが合わず
漸く彼と話ができたのは、そこから三日後の事だった。
彼は言う。
私に憑いたのは、間違いなく山代が関係している。と
その解決の糸口を探るため、次の休日に山代と話を行うのだと。
その顔は、何かを吹っ切ったような・・・切迫した表情にも見えた。
・・・すべて、私のせいかもしれない・・・。
どんな顔をして、話をすれば良いのか、分からなくなってしまった。
灯谷の話を聞いて・・・。
その大部分はまだ、ベールに隠されたまま
それでも、彼の一部を聞いて、好奇心が湧いた。
その後、猟犬のように友人たちの悩みを嗅ぎ回り
漸く見つけた「山代 伊吹」。
この時の私は、二つの意味で悪手を取った。
でも、それに気付いた時には手遅れだった。
灯谷に山代を宛がった時、彼はずっと苦い顔をしていた。
でもそれは、普段慣れない人間関係の延長にある「苦手意識」だとばかり思っていた。
でも、それは放課後になって漸く意味が分かった。
灯谷は言っていた。
「この高校にも、中学の同期が何人かいる。」と・・・。
そして、聞いてしまった。
偶々、通り過ぎただけの数名の男子生徒の会話。
「2組の灯谷っているじゃん?あいつ、中学の時ヤベェ奴でさ~。」
「何々?」
「霊が視えるとか吹かしてやんの!ウケるだろ!?」
「はぁ?マジかよ、いい年こいて何言ってんだろうねぇ、そいつ。あははは。」
その会話を聞いて、背筋が凍った。
「それなら、今度・・・俺らも視てもらおうぜ!」
「いいねぇ!どんなホラ吹くか楽しみじゃん!」
それは、まるでつい先ほどまでの私だった・・・。
それを自覚したとき、心臓が締め付けられるように
呼吸が浅くなり、視界が薄れた。
『私は、なんて惨い事をしていたんだろう。』
彼の傷口を抉る大衆の一人になっていた・・・。
そして、その日から
やけに息苦しい日が続いた。
どうしてだろう、この事を彼に話そうとすると決まって邪魔が入った。
そして、そこでまた自己嫌悪に陥る。
マラソンの練習中
途中までは良かった。
走っている最中、後ろから山代の声がした・・・ような気がする。
軽く振り返っても、彼女はおらず・・・。
当然だ、彼女は足を怪我している。マラソンなど走ってなど居られない。
だが・・・聞こえる。
「ねぇ。」という小さな声が。
周囲を走る他の生徒たちの会話や吐息、足音に交じって
「ねぇ、どこに行くの?」という声が、小さくか細く聞こえる。
直後聞こえた声に、全身から鳥肌が立った。
「私も連れて行ってよ。」
寒気と怖気と吐き気が一遍に襲ってきた。
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酷く焦った様子だったという。
それからも中々、タイミングが合わず
漸く彼と話ができたのは、そこから三日後の事だった。
彼は言う。
私に憑いたのは、間違いなく山代が関係している。と
その解決の糸口を探るため、次の休日に山代と話を行うのだと。
その顔は、何かを吹っ切ったような・・・切迫した表情にも見えた。
・・・すべて、私のせいかもしれない・・・。
どんな顔をして、話をすれば良いのか、分からなくなってしまった。
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