元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです

Atelier Lotus

文字の大きさ
26 / 33

24話 エレナ・テ・ラ

しおりを挟む
 赤竜――エレナ・テ・ラは穀潰しであった。

 あれからエレナが仲間に加わり、シロガネ山を下山した。

 フルールの町に入る際、エレナは変化の魔法を使用して人間に化けた。赤髪の美しい女性の姿であった。

 シャルロットは、報酬の小金貨百五十枚を持って不動産屋に行く。

 道中、皮袋に入った小金貨がとにかく重かったので、度々休憩を挟みながら不動産屋に向かった。

 契約を取り付けてから、冒険者ギルドの酒場で打ち上げを行った。

 その時のエレナの飲み食いっぷりは凄まじいものがあった。

 そうなのである。

 暴飲暴食。

 エレナの飲み食いっぷりを表現するには、その言葉が最も適切であった。

 特にエレナは、葡萄酒を好んで飲んだ。

 エレナ以外のパーティメンバーがドン引きする中、大量の料理と一樽分の葡萄酒を飲み干して、彼女はこう言うのであった。

「やっと腹八分目になったのじゃ」

 と。

 まあ、仕方がないとも言える。

 なぜかならば、エレナは巨大な竜である。

 変化の魔法で人間に擬態しているといっても、質量まで軽くなるわけではない。即ち代謝は以前のままなのである。

 それ故に、その巨体に見合った大量の食料は必要なのである。

 シャルロットは頭を抱えた。

 せっかく広い屋敷を購入したのに、エレナを仲間にしたことによって余計な出費が出てしまう。

 シャルロットは、財布の中身を確認した。竜退治の報酬以外に副業の薬売りでコツコツ貯めたお小遣いが、ほとんどなくなってしまった。
 
 食後。

 宿に帰る道中。

 シャルロットは、エレナにこう提案した。

「エレナも冒険者やってくれない?」

 と。

 するとエレナは、こう返事するのであった。

「冒険者の登録なら過去にやっておるぞ」

 と。

 ところで、エレナの言葉遣いはシロガネ山から下山してからすっかり砕けているのであった。彼女曰く、気が抜けたらキャラを作るのに疲れたとのことらしい。

 厳かに話してみたり、丁寧に話してみたり大変そうである。

 ともかく、シャルロットはエレナの冒険者のランクを確認した。

「今、ランクどれくらいなの?」

「えっと、確かなんじゃったかのう。アダマンタイトとか言ったかのう」

 大陸冒険者協会の定める冒険者のランクの中で、最も高いランクであった。

 シャルロットは問う。

「なんでそんなランク持ってるの?」

「確か、百年ほど前に戯れで人間の町に降り立ったことがあるのじゃ。その時に冒険者になってみたのじゃ」

「ふーん」

「当時は、大魔法使いエレナと言われておったぞ」

「大魔法使いエレナ……か」

 シャルロットは、その名前に心当たりがあった。

 確か、伝説的魔法使いの一人。

 世界最高峰の大魔法使い。

 そういうふうに、シャルロットはメシャント家にいた時に聞かされていた。

 ルークは、注釈した。

「大魔法使いエレナと言ったら、教皇サンセリテ様に並ぶ大魔法使いですよ! 五十年ほど昔に突如として姿を見せなくなったそうです」
 
「なるほど」

 サンセリテに並ぶ魔法使い。

 シャルロットは目を細めた。ミュゲ・ジプソフィルのかつての仲間――大魔法使いサンセリテと肩を並べる魔法使いには見えなかったのである。

 そう。

 かつての大魔法使いサンセリテは、強かった。

 とても、赤竜エレナ・テ・ラとは比べものにならないほどに――

「ほんとかなぁ?」
 
「ほんとなのじゃ!」

「じゃあ証拠は?」

「これじゃ」

 エレナは、一枚の小さなプレートを見せた。アダマンタイト製のプレートであった。

 リュンヌは、そのプレートを覗き込んだ。

「ちょっと持ってみてもいいですか?」

「構わんぞ」

 リュンヌは、つまんでプレートの隅々を見た。

「シャルロットさん、多分これ本物のアダマンタイトのライセンスプレートと思います。すごく重いし光沢感がよく似てます」

 と。

 そしてこうも続けた。

「型が古いですね。確かに仰るように昔の冒険者のライセンスプレートですね」

「だからそう言ったじゃろ」

 エレナの言っていることは本当だったようだ。

 とは言え、このライセンスプレートを既に失効しているだろう。なぜかならば、大魔法使いエレナ自体百年前の魔法使いである。

 竜は寿命が長いから、百年と言う月日はなんでもない。しかし人間にとってのその月日は、ほとんどの人にとっての一生涯である。

 大陸冒険者協会では、大魔法使いエレナはおそらく死んだことになっているだろう。

 シャルロットは提案する。

「これは古いライセンスプレートだから、新しく冒険者登録しないといけないだろうね」

「そうなのか……人間の社会と言うのは面倒臭いのう」

 後日、エレナは新たに冒険者登録をする為に、冒険者ギルドに向かった。

 簡易的な魔力及び筋力測定ではこのような結果であった。

 魔力を測定する水晶は、エレナの魔素が大きすぎて爆発した。

 筋力を測定する為の重りは、引っ張る際に取手部分を引き抜いて破壊してしまった。

 測定不能と言うことで、エレナには青銅ランクが与えられた。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

処理中です...