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25話 幽霊屋敷
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購入した屋敷の入居する準備が出来た。
シャルロット一行は、屋敷の正面玄関に立つ。
大きな門の先には、背丈ほどある雑草が生い茂っていた。
シャルロットは呟いた。
「こりゃあ、草刈りが大変だわね」
と。
一行は草木をかき分けて、屋敷の正面扉の前に立つ。そしてシャルロットは、不動産屋から貰った鍵で扉を開錠した。
中は、日当たりがいいはずなのになぜか薄暗かった。
そして埃っぽい。
そういう印象であった。
その為、入居初日はみんなで大掃除である。
小汚い屋敷ではあるけれど、二階建ての豪邸である。
そもそもこの屋敷は、五十年ほど前に町の商人が住んでいたと言う。原因は定かではないが、不幸のあと一家離散したらしい。
それ以降に入居する者曰く、謎の怪奇現象が起きて誰も買い手がつかないと言う。
どのような怪奇現象が起きるかと言うと、子供の幽霊が出てくるらしい。それは、最初に住んでいた商人の娘の霊であるとのことらしい。
とは言え、幽霊なんていうものはどこにでもいるものである。
人間は強い執着を残して死ぬと、その執着の念に引かされて霊魂がこの土に留まる。人はそれを見て幽霊と言うのである。
そして、幽霊はその執着の念が消滅しない限り他界することが出来ないのであるから、その如き幽霊はその辺に無限的に存在するのである。
故に、今更幽霊がと騒いでも仕方がないと言うのがシャルロットの意見である。
出たら出たで、その時に対処すれば良い。そうシャルロットは思った。
とりあえず大掃除の振り分けは、こうなった。
シャルロット――一階の床掃除及び埃取り。
ソレイユ――二階の床掃除及び埃取り。
リュンヌ――全体の窓拭き。
ルーク――二階の床掃除及び埃取り。
エレナ――庭の草刈り。それが終わればシャルロットの手伝い。
である。
大掃除は、丸一日掛かる大仕事であった。
途中、ルークとソレイユが喧嘩していたが、リュンヌが仲裁してくれた。
暮れ頃に、ようやく大掃除も切りがついてきた。
リビング。
シャルロット一行は、テーブルを囲んで夕食と洒落込んだ。
テーブルには、昼頃から仕込んでおいたご馳走がならべられている。
エレナは、シャルロットにこうお願いした。
「師よ、何か乾杯の音頭をとってはくれないか?」
と。
シャルロットは、告げた。
「皆んなとの出会いに乾杯!」
そうして、一行は杯を酌み交わす。
ちなみにソレイユだけは、お酒が飲めないので葡萄ジュースである。
楽しい。
シャルロットはそう思った。
シャルロットは、皆を見る。
ソレイユは、がっついて走鳥の丸焼きを食べている。
リュンヌは、案外ベジタリアンであった。マリネをちまちま食べている。
ルークは、お行儀よくステーキを切り分けている。
エレナは、樽ジョッキで葡萄酒を煽っている。
皆んなそれぞれ個性があって面白かった。
シャルロットの頬を涙が伝う。
こんな団欒、いつ以来であろうか。
シャルロットは、想いに耽る。
幼少期、シャルロットは孤独であった。無能の烙印を押されたシャルロットには、家族の団欒はおろか誰かと食事することも許されなかった。
離宮にいた頃もそうである。その頃は、シャルロットは伯爵令嬢であったから、使用人のセバスチャンと食事する事も許されなかったのである。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルであった前世も同様である。
両親から切り離されて、入りたくもない教会に入れられた。当時の食事は、団欒と言うよりも修行の一環であった。
講堂で修道士達と味気のない食事を摂る。当然、黙食である。
大聖女の位を授けられてからは、基本的に個室で食事をとった。暗い部屋での食事は寂しかった。
他人がいる食事は要人が来た時のみで、常に緊張が絶えなかった。
月に一度、親元に帰ることの出来る日だけがミュゲ・ジプソフィルの楽しみであった。
あるいは、魔王討伐の旅。
その旅の道中は、毎日かつての仲間達と一緒に食事をとった。元魔王寮から魔王城への一年の旅路は、ミュゲ・ジプソフィルにとってはかけがいのない時間であった。
そう思ったとき、シャルロットの瞼から停めどなく涙が溢れるのであった。
ソレイユは、心配そうに声をかけた。
「おい、シャルロット! なんで泣いてるんだ? 大丈夫か?」
「大丈夫、埃が入ったみたい」
「埃が入った感じじゃないだろそれ!」
ソレイユは、ハンカチを手渡す。
シャルロットは、ハンカチで鼻をかんだ。
ソレイユは、目をしかめる。
「きったね」
「悪かったわね!」
そんなこんなで、シャルロット一行の宴会は終わりを遂げた。
そして。
就寝。
屋敷には相当数の部屋があったので、各々それぞれの寝室が割り当てられた。
皆が寝静まったころ、異変が起きた。
最初は、ソレイユの悲鳴である。
ソレイユの悲鳴で目を覚ましたシャルロット、ルークは、彼の寝室に駆け込んだ。
寝室には、十歳ほどの金髪碧眼の少女がソレイユを見つめていた。
シャルロット一行は、屋敷の正面玄関に立つ。
大きな門の先には、背丈ほどある雑草が生い茂っていた。
シャルロットは呟いた。
「こりゃあ、草刈りが大変だわね」
と。
一行は草木をかき分けて、屋敷の正面扉の前に立つ。そしてシャルロットは、不動産屋から貰った鍵で扉を開錠した。
中は、日当たりがいいはずなのになぜか薄暗かった。
そして埃っぽい。
そういう印象であった。
その為、入居初日はみんなで大掃除である。
小汚い屋敷ではあるけれど、二階建ての豪邸である。
そもそもこの屋敷は、五十年ほど前に町の商人が住んでいたと言う。原因は定かではないが、不幸のあと一家離散したらしい。
それ以降に入居する者曰く、謎の怪奇現象が起きて誰も買い手がつかないと言う。
どのような怪奇現象が起きるかと言うと、子供の幽霊が出てくるらしい。それは、最初に住んでいた商人の娘の霊であるとのことらしい。
とは言え、幽霊なんていうものはどこにでもいるものである。
人間は強い執着を残して死ぬと、その執着の念に引かされて霊魂がこの土に留まる。人はそれを見て幽霊と言うのである。
そして、幽霊はその執着の念が消滅しない限り他界することが出来ないのであるから、その如き幽霊はその辺に無限的に存在するのである。
故に、今更幽霊がと騒いでも仕方がないと言うのがシャルロットの意見である。
出たら出たで、その時に対処すれば良い。そうシャルロットは思った。
とりあえず大掃除の振り分けは、こうなった。
シャルロット――一階の床掃除及び埃取り。
ソレイユ――二階の床掃除及び埃取り。
リュンヌ――全体の窓拭き。
ルーク――二階の床掃除及び埃取り。
エレナ――庭の草刈り。それが終わればシャルロットの手伝い。
である。
大掃除は、丸一日掛かる大仕事であった。
途中、ルークとソレイユが喧嘩していたが、リュンヌが仲裁してくれた。
暮れ頃に、ようやく大掃除も切りがついてきた。
リビング。
シャルロット一行は、テーブルを囲んで夕食と洒落込んだ。
テーブルには、昼頃から仕込んでおいたご馳走がならべられている。
エレナは、シャルロットにこうお願いした。
「師よ、何か乾杯の音頭をとってはくれないか?」
と。
シャルロットは、告げた。
「皆んなとの出会いに乾杯!」
そうして、一行は杯を酌み交わす。
ちなみにソレイユだけは、お酒が飲めないので葡萄ジュースである。
楽しい。
シャルロットはそう思った。
シャルロットは、皆を見る。
ソレイユは、がっついて走鳥の丸焼きを食べている。
リュンヌは、案外ベジタリアンであった。マリネをちまちま食べている。
ルークは、お行儀よくステーキを切り分けている。
エレナは、樽ジョッキで葡萄酒を煽っている。
皆んなそれぞれ個性があって面白かった。
シャルロットの頬を涙が伝う。
こんな団欒、いつ以来であろうか。
シャルロットは、想いに耽る。
幼少期、シャルロットは孤独であった。無能の烙印を押されたシャルロットには、家族の団欒はおろか誰かと食事することも許されなかった。
離宮にいた頃もそうである。その頃は、シャルロットは伯爵令嬢であったから、使用人のセバスチャンと食事する事も許されなかったのである。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルであった前世も同様である。
両親から切り離されて、入りたくもない教会に入れられた。当時の食事は、団欒と言うよりも修行の一環であった。
講堂で修道士達と味気のない食事を摂る。当然、黙食である。
大聖女の位を授けられてからは、基本的に個室で食事をとった。暗い部屋での食事は寂しかった。
他人がいる食事は要人が来た時のみで、常に緊張が絶えなかった。
月に一度、親元に帰ることの出来る日だけがミュゲ・ジプソフィルの楽しみであった。
あるいは、魔王討伐の旅。
その旅の道中は、毎日かつての仲間達と一緒に食事をとった。元魔王寮から魔王城への一年の旅路は、ミュゲ・ジプソフィルにとってはかけがいのない時間であった。
そう思ったとき、シャルロットの瞼から停めどなく涙が溢れるのであった。
ソレイユは、心配そうに声をかけた。
「おい、シャルロット! なんで泣いてるんだ? 大丈夫か?」
「大丈夫、埃が入ったみたい」
「埃が入った感じじゃないだろそれ!」
ソレイユは、ハンカチを手渡す。
シャルロットは、ハンカチで鼻をかんだ。
ソレイユは、目をしかめる。
「きったね」
「悪かったわね!」
そんなこんなで、シャルロット一行の宴会は終わりを遂げた。
そして。
就寝。
屋敷には相当数の部屋があったので、各々それぞれの寝室が割り当てられた。
皆が寝静まったころ、異変が起きた。
最初は、ソレイユの悲鳴である。
ソレイユの悲鳴で目を覚ましたシャルロット、ルークは、彼の寝室に駆け込んだ。
寝室には、十歳ほどの金髪碧眼の少女がソレイユを見つめていた。
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