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8話 王都の聖女
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霊園。
それはシャルロットの記憶にはない。であるから、必然的に大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの死後に作られたのものでる。
またソレイユ曰く、彼女両親の墓も霊園の方に移転したと言う。
そして、霊園の奥には大きな墓石があった。
これが、シャルロットにとっては自分の墓。
前世の自分の墓である。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの墓石の手前両側に、二つの墓があった。
シャルロットは、その墓石に刻まれている名前を見た。
サジェス・ジプソフィル――
シャリテ・ジプソフィル――
それは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの両親の名前であった。
サンセリテは、死後にちゃんと約束を果たしてくれていたのである。
シャルロットは、膝をついて手を合わせた。
「私の本当のお父さんとお母さんは、あなたたちです」
頬に涙が伝う。
考えてみれば、シャルロットの人生は散々であった。
辛く、不安が尽きないものであった。
魔法が使えないと言うだけで、一族から爪弾きにされて、愛想が尽きれば離宮送りである。
セバスチャンが親代わりをしてからいいものの、両親からまともな愛情を受けたことは一切なかった。
寂しかったのである。
しかしシャルロットは、結果として一族を追われて清々していた。
これから、自由に生きていける。
シャルロットは、自由である。
ソレイユは、心配そうにシャルロットを見た。
「大丈夫か? てかなんで泣いてるだ?」
「いや、別に……目にゴミが入ったみたいねー」
シャルロットは、誤魔化す。
「さて、じゃあ戻ろっか」
その時。
足音。
来た道に、人影があった。
先頭に女性。その後ろには男の姿。
ソレイユは、まだ遠方にいる彼らを見て、シャルロットに耳打ちした。
「あいつ、聖女だ。僕を無視した聖女だ。あと後ろのやつは取り巻きの修道士だ」
「あの人が、王都から派遣された聖女なの?」
「うん」
ソレイユは、頷いた。
聖女。
それは、女性の聖者の謂である。
このナルシス王国では、聖者と並んで国の象徴とされているお方の称号である。
所謂、人間国宝である。
聖女及び聖者は、魔法とはまた違う不思議な力を持っている。
魔法は、体内外にある魔素を魔力に変換したものを言う。
ところが彼らは、己が清い心から生み出された精神力以って様々な通力を得る。その力は、魔素を浄化する働きがある。
聖女の力は、魔法と異なり魔素を媒介としないものであるが、その特異性から便宜上光魔法と称される。
光魔法を使えるものは、百年に一人かそれ以下と言われている。
今はどうか知らないが、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生きていた時代は、光魔法の素質があると分かると、強制的に教会入りさせらた。
しばらく来たところで、聖女はこちらに気がついた。
「あらあら、あなたは先日教会にいた坊やですね。先日はごめんなさい。お母様にお祈りしてくれる人は見つかりましたか?」
「ああ、このシャルロットがしてくれた」
ソレイユは、シャルロットに擦り寄りながら言う。
「だから、聖女様の祈りはいらない」
「そう言われると残念だわ。でもこんな平民さんのお祈りでお母様が浮かばれるか不安だわ」
「祈る人を選ぶお前の祈りよりは、浮かばれると思うけどな」
そう言ったところで、後ろに控えていた修道士がソレイユを捕えようとする。
「貴様! 聖女様に不敬な口を叩きおって! このかたを誰と心得る! 聖女ソフィア様であらせられるぞ!」
「やめなさい!」
聖女ソフィアは、修道士を止めた。
「ここは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィル様とそのお父君、お母君の御前です。無益な争いは避けましょう。きっと大聖女様方が悲しんでおいでです。故に、此度のあなたの不敬な発言も見逃しましょう」
「聖女様、なんて慈悲深いおかた!」
修道士は、感激していた。
シャルロットは、下手な小芝居を見ている気持ちになった。
あんたの言う大聖女様は、目の前にいるんだけどなぁ――
修道士は、吐き捨てるように言う。
「聖女様のご慈悲が分かったか! とにかく、今から聖女ソフィア様は、ミュゲ・ジプソフィル様に祈りを捧げる儀式があるから、さっさとどきたまえ!」
渋々、シャルロットとソレイユは霊園を後にした。
シャルロットは、現在の教会のレベルを嘆いた。あんな乱暴な連中に、聖女や修道士が務まると思わなかっだからである。
「酷い人たちだったね」
「とんだ災難だよ」
これも、時代の流れか。
そうシャルロットは思った。
もう一つ、サンセリテに言う文句が増えるシャルロットであった。
それはシャルロットの記憶にはない。であるから、必然的に大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの死後に作られたのものでる。
またソレイユ曰く、彼女両親の墓も霊園の方に移転したと言う。
そして、霊園の奥には大きな墓石があった。
これが、シャルロットにとっては自分の墓。
前世の自分の墓である。
そして、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの墓石の手前両側に、二つの墓があった。
シャルロットは、その墓石に刻まれている名前を見た。
サジェス・ジプソフィル――
シャリテ・ジプソフィル――
それは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの両親の名前であった。
サンセリテは、死後にちゃんと約束を果たしてくれていたのである。
シャルロットは、膝をついて手を合わせた。
「私の本当のお父さんとお母さんは、あなたたちです」
頬に涙が伝う。
考えてみれば、シャルロットの人生は散々であった。
辛く、不安が尽きないものであった。
魔法が使えないと言うだけで、一族から爪弾きにされて、愛想が尽きれば離宮送りである。
セバスチャンが親代わりをしてからいいものの、両親からまともな愛情を受けたことは一切なかった。
寂しかったのである。
しかしシャルロットは、結果として一族を追われて清々していた。
これから、自由に生きていける。
シャルロットは、自由である。
ソレイユは、心配そうにシャルロットを見た。
「大丈夫か? てかなんで泣いてるだ?」
「いや、別に……目にゴミが入ったみたいねー」
シャルロットは、誤魔化す。
「さて、じゃあ戻ろっか」
その時。
足音。
来た道に、人影があった。
先頭に女性。その後ろには男の姿。
ソレイユは、まだ遠方にいる彼らを見て、シャルロットに耳打ちした。
「あいつ、聖女だ。僕を無視した聖女だ。あと後ろのやつは取り巻きの修道士だ」
「あの人が、王都から派遣された聖女なの?」
「うん」
ソレイユは、頷いた。
聖女。
それは、女性の聖者の謂である。
このナルシス王国では、聖者と並んで国の象徴とされているお方の称号である。
所謂、人間国宝である。
聖女及び聖者は、魔法とはまた違う不思議な力を持っている。
魔法は、体内外にある魔素を魔力に変換したものを言う。
ところが彼らは、己が清い心から生み出された精神力以って様々な通力を得る。その力は、魔素を浄化する働きがある。
聖女の力は、魔法と異なり魔素を媒介としないものであるが、その特異性から便宜上光魔法と称される。
光魔法を使えるものは、百年に一人かそれ以下と言われている。
今はどうか知らないが、大聖女――ミュゲ・ジプソフィルの生きていた時代は、光魔法の素質があると分かると、強制的に教会入りさせらた。
しばらく来たところで、聖女はこちらに気がついた。
「あらあら、あなたは先日教会にいた坊やですね。先日はごめんなさい。お母様にお祈りしてくれる人は見つかりましたか?」
「ああ、このシャルロットがしてくれた」
ソレイユは、シャルロットに擦り寄りながら言う。
「だから、聖女様の祈りはいらない」
「そう言われると残念だわ。でもこんな平民さんのお祈りでお母様が浮かばれるか不安だわ」
「祈る人を選ぶお前の祈りよりは、浮かばれると思うけどな」
そう言ったところで、後ろに控えていた修道士がソレイユを捕えようとする。
「貴様! 聖女様に不敬な口を叩きおって! このかたを誰と心得る! 聖女ソフィア様であらせられるぞ!」
「やめなさい!」
聖女ソフィアは、修道士を止めた。
「ここは、大聖女――ミュゲ・ジプソフィル様とそのお父君、お母君の御前です。無益な争いは避けましょう。きっと大聖女様方が悲しんでおいでです。故に、此度のあなたの不敬な発言も見逃しましょう」
「聖女様、なんて慈悲深いおかた!」
修道士は、感激していた。
シャルロットは、下手な小芝居を見ている気持ちになった。
あんたの言う大聖女様は、目の前にいるんだけどなぁ――
修道士は、吐き捨てるように言う。
「聖女様のご慈悲が分かったか! とにかく、今から聖女ソフィア様は、ミュゲ・ジプソフィル様に祈りを捧げる儀式があるから、さっさとどきたまえ!」
渋々、シャルロットとソレイユは霊園を後にした。
シャルロットは、現在の教会のレベルを嘆いた。あんな乱暴な連中に、聖女や修道士が務まると思わなかっだからである。
「酷い人たちだったね」
「とんだ災難だよ」
これも、時代の流れか。
そうシャルロットは思った。
もう一つ、サンセリテに言う文句が増えるシャルロットであった。
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