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番外編:幼い日の記憶 〜二人の出会いの物語〜
15.久しぶりの街
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クリスティーナはブルクハルトと街を歩く。いつも以上に街の人達の視線を感じるが、気のせいではないだろう。しっかりと繋ぎ合った手が温かい。
「姫様、お久しぶりです」
「ご婚約おめでとうございます」
「「ありがとう」」
街の人達はブルクハルトと一緒でも、変わらず声をかけてくれる。ブルクハルトも嫌な顔一つせず、対応してくれていた。
「姫様、お祝い申し上げます」
「うん、ありがとう」
街の人に祝ってもらえるのは嬉しいことだが正直恥ずかしい。ヴェロキラ辺境伯家との婚約は公表されている。ブルクハルトの特徴的な髪の色で、一緒にいるのが婚約者であると気づいているのだろう。クリスティーナが誰かと会話するたびに、ブルクハルトがピッタリ寄り添ってくるせいではないと思いたい。
「街の人たちに慕われているんだな」
「どうでしょう? 親戚の子みたいな感覚なんだと思います」
伯爵邸のあるこの町を歩くと、皆に見守られている気がする。魔獣の脅威が近くにあり命が失われやすい環境のためか、どの家の子も町全体の子供として大切にされる。
「うちの領地も似ているかもしれないな。今度ティーナがヴェロキラ辺境伯領に来たときには案内するよ」
「楽しみにしています」
クリスティーナは伯爵とともに辺境伯領に挨拶に行ったが、ブルクハルトの家族と対面しただけで帰ってきてしまった。辺境伯領の魔獣は強いと聞くので怖いが、ブルクハルトと一緒なら楽しそうだ。
ドリコリン伯爵領の見慣れた市場も、いつもより輝いている気がする。
「この通りが食材を主に扱う市場になっています」
「賑やかだな」
「はい。ドリコリン伯爵領の中でも、一番大きい市場なんですよ」
クリスティーナはブルクハルトに説明しながらゆっくり歩く。ブルクハルトはクリスティーナの買い物に付き合いながら、興味深そうに食材を見ていた。
「葉物の野菜が安いんだな」
「ドリコリン伯爵領の畑での栽培が盛んなんです。今が旬で美味しいですよ。あ、この人参一箱ください」
「毎度あり」
ブルクハルトがいつもどおりで良いと言うので、会話をしながらも買った食材の箱が積み上がっていく。いつもはクリスティーナが抱える箱は、ブルクハルトが全部持ってくれている。これが男性からのエスコートかと感動するが、なんかちょっと違う気もする。
「おじさん。小麦粉を一番大きな袋でちょうだい」
「お買い上げありがとうございます」
クリスティーナは、最後に小麦粉を買い足して市場を出た。ブルクハルトが一番上に乗せろと言ってくれたが、手持ち無沙汰だったので、それだけはクリスティーナが抱えて歩く。いつもに比べれば、手ぶらで歩いているのと変わらない。
「今日は北地区の孤児院に行きますね。少し前に魔獣災害があった場所なので、どうなっているか気になっていたんです」
「そうか。父上も討伐隊に……いや、ティーナのお父上も討伐に参加したと聞いている。かなりの災害だったらしいな」
「その節は竜騎士を派遣して下さりありがとうございます」
「いや。こういうときはお互い様だ」
ブルクハルトが慌てた様子で言い直していたが、クリスティーナは気づかないふりをする。辺境伯が討伐隊に参加したという話は聞いていない。
辺境伯はブルクハルトと同じラピスラズリのような髪と瞳を持っている。ブルクハルトが小さな青龍なら、その親である辺境伯が伯爵の相棒ということになるだろう。あの日、クリスティーナも伯爵邸で青龍の姿を見ているし討伐隊にも参加していた。
「やっぱり……」
「どうした?」
「何でもありません!」
ブルクハルトが不思議そうに聞いてくるので、クリスティーナは慌てて誤魔化した。赤くなった顔を小麦粉で隠すと、ブルクハルトは、クリスティーナが落ち着くまでこちらを見ないように歩いてくれた。
「姫様、お久しぶりです」
「ご婚約おめでとうございます」
「「ありがとう」」
街の人達はブルクハルトと一緒でも、変わらず声をかけてくれる。ブルクハルトも嫌な顔一つせず、対応してくれていた。
「姫様、お祝い申し上げます」
「うん、ありがとう」
街の人に祝ってもらえるのは嬉しいことだが正直恥ずかしい。ヴェロキラ辺境伯家との婚約は公表されている。ブルクハルトの特徴的な髪の色で、一緒にいるのが婚約者であると気づいているのだろう。クリスティーナが誰かと会話するたびに、ブルクハルトがピッタリ寄り添ってくるせいではないと思いたい。
「街の人たちに慕われているんだな」
「どうでしょう? 親戚の子みたいな感覚なんだと思います」
伯爵邸のあるこの町を歩くと、皆に見守られている気がする。魔獣の脅威が近くにあり命が失われやすい環境のためか、どの家の子も町全体の子供として大切にされる。
「うちの領地も似ているかもしれないな。今度ティーナがヴェロキラ辺境伯領に来たときには案内するよ」
「楽しみにしています」
クリスティーナは伯爵とともに辺境伯領に挨拶に行ったが、ブルクハルトの家族と対面しただけで帰ってきてしまった。辺境伯領の魔獣は強いと聞くので怖いが、ブルクハルトと一緒なら楽しそうだ。
ドリコリン伯爵領の見慣れた市場も、いつもより輝いている気がする。
「この通りが食材を主に扱う市場になっています」
「賑やかだな」
「はい。ドリコリン伯爵領の中でも、一番大きい市場なんですよ」
クリスティーナはブルクハルトに説明しながらゆっくり歩く。ブルクハルトはクリスティーナの買い物に付き合いながら、興味深そうに食材を見ていた。
「葉物の野菜が安いんだな」
「ドリコリン伯爵領の畑での栽培が盛んなんです。今が旬で美味しいですよ。あ、この人参一箱ください」
「毎度あり」
ブルクハルトがいつもどおりで良いと言うので、会話をしながらも買った食材の箱が積み上がっていく。いつもはクリスティーナが抱える箱は、ブルクハルトが全部持ってくれている。これが男性からのエスコートかと感動するが、なんかちょっと違う気もする。
「おじさん。小麦粉を一番大きな袋でちょうだい」
「お買い上げありがとうございます」
クリスティーナは、最後に小麦粉を買い足して市場を出た。ブルクハルトが一番上に乗せろと言ってくれたが、手持ち無沙汰だったので、それだけはクリスティーナが抱えて歩く。いつもに比べれば、手ぶらで歩いているのと変わらない。
「今日は北地区の孤児院に行きますね。少し前に魔獣災害があった場所なので、どうなっているか気になっていたんです」
「そうか。父上も討伐隊に……いや、ティーナのお父上も討伐に参加したと聞いている。かなりの災害だったらしいな」
「その節は竜騎士を派遣して下さりありがとうございます」
「いや。こういうときはお互い様だ」
ブルクハルトが慌てた様子で言い直していたが、クリスティーナは気づかないふりをする。辺境伯が討伐隊に参加したという話は聞いていない。
辺境伯はブルクハルトと同じラピスラズリのような髪と瞳を持っている。ブルクハルトが小さな青龍なら、その親である辺境伯が伯爵の相棒ということになるだろう。あの日、クリスティーナも伯爵邸で青龍の姿を見ているし討伐隊にも参加していた。
「やっぱり……」
「どうした?」
「何でもありません!」
ブルクハルトが不思議そうに聞いてくるので、クリスティーナは慌てて誤魔化した。赤くなった顔を小麦粉で隠すと、ブルクハルトは、クリスティーナが落ち着くまでこちらを見ないように歩いてくれた。
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