イーハトーブに虹を

安芸月煌

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赤の国 ロッソ①

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 南へ下ると、高い山が見えてきました。どうやら山を越えなければ、赤の国には行けないようです。トトリとアリスは意を決してそびえたつ山を登り始めました。
 山道は今まで歩いて来たような森の小道や、草原とは全く違います。生い茂る草木が行く手を阻み、足に絡みついてくるのです。明るいイーハトーブの森とは違って、山の中は薄暗く、湿気を含み、足元はぬかるんでいます。

「なんだか薄気味悪いわ、そろそろ陽が落ちるし、早く野営の準備をしないと……火をたかないと獣が出るわ」

 アリスはココを抱きかかえ、トトリの服の裾をひっぱりました。空がだんだん暗くなってきたのです。もうじき夜のとばりが降りるのでしょう。暗い夜を、恐ろしい山の中で過ごすことに、アリスは大きな不安を抱えていました。

「もう少し上ろう。そうしたら山小屋があるみたいだ」

 トトリはリリエから受け取った地図を慎重に見ていました。リリエの地図には、どうやら魔法がかかっているようです。リリエと一緒に見たときには、おおざっぱな大陸の地理しか書かれていませんでしたが、今見ると、山の中が詳しく見えるようになっています。地図のよると、山頂近くに山小屋があるようでした。アリスはそれを見て勇気を出します。

「あと少し、頑張りましょう」
「その意気だよアリス!」

 二人は手を取り合って、暗くなっていく山の道を歩きました。すると、遠くに明かりが見えるではありませんか。
その明かりに二人はとても驚きました。なにに驚いたというのでしょう。そう、色です。その明かりは、二人が今まで見たこともないような色をしていました。明かりは小屋に灯っていました。窓からは湯気まで漏れ出ています。中に誰かいるのでしょう。
 小屋の扉の前まで来ると、二人はトントンと戸を叩きました。すると、しばらくしてからすっと扉が開きました。中から、トトリよりも頭一つ分大きな男の子が出てきました。いぶかしそうな顔で二人を見ています。

「なんだおまえたち」

 トトリもアリスもその男の子を見て驚きました。男の子は、目の色も、髪の色も、今まで二人が見たこともないような色をしていたからです。

「何を驚いている。こんなところに何をしに来た」
「や、山を越えて、ロッソの国に行きたいんだ。どうか一晩止めてください」

 トトリがそう言うと、男の子はトトリとアリスそれからココの頭のてっ
。ぺんから足の先までをじろりと見てから怖い声を出しました。

「その色……おまえたち、山の向こうから来たな。今、国の中によそ者を入れるわけにはいかない。一晩泊めてやるから諦めて山を下りるんだな」
「そんな! それはダメだ。僕たちは赤の国で赤い色を集めないといけないんだから!」

 トトリの言葉に、男の子は耳を貸そうとしません。怒ったような顔をしたまま、奥の部屋にある布団を指さしただけで、自分は奥にある小さな部屋に入ってしまいました。

「どうしようトトリ……」
「ここであきらめるわけにはいかないよ。なにか事情があるのかもしれない。明日になったら話を聞いてみよう。まずは腹ごしらえだ」

 お腹はペコペコです。トトリはカバンの中から残り少ないパンとバター、それからミルクの瓶を取り出しました。アリスとココに少しずつパンをちぎって渡し、ミルクをみんなで飲みました。三人のお腹を満たすには全然足りませんが、なにもないよりましです。どうにかお腹が落ち着いて、二人と一匹は薄い布団の上に寝転がります。小屋には天窓が開いていました。星が不思議な色で瞬いています。見たこともない色で――

 翌朝、二人が目を覚ますと、男の子はすでに起きて薪を割っていました。トトリは声をかけます。

「泊めてくれてどうもありがとう。僕はトトリ、向こうにあるネロの国から来たんだ」

 男の子は手を止めて、トトリをじっと見つめます。

「俺はカシャ、ここで薪を切って生活をしている」
「一人で?」
「そうだ。ついでにおまえたちみたいな侵入者が来ないか見張っているんだ」
「何か国で悪いことがあったのかい? 君の色、これが『赤』なのかな?」

 トトリは見たこともない色についてカシャに尋ねました。カシャは実に不思議な色をしています。まるで、紅葉しかけのもみじのようです。

「違う。俺は『赤』くない。それで、おまえたちのその色は『黒』だろう? 悪いことは言わない。そんな目立つ格好で町になんか行ったら大変だ」
「どうして?」

 トトリは食い下がりました。どうしてもあきらめるわけにはいかないのです。トトリの代わりにカシャがあきらめたようにため息をつき、口を開きました。

「ここから一番近いところに、ロッソの都市、エルドラドがある。そこに生える大樹が枯れてしまったんだ。噂によると何者かに毒をかけられたらしい。王様はひどくお怒りになって、犯人探しに目を剥いている。そんなところに、おまえたちみたいなよそ者が入ってきたら大ごとだ。王様は、『赤』以外の色を毛嫌いしているんだ」
「そんな……僕たちはこの国で最も赤いものから『赤』を集めないといけないんだ」
「どうしてそんなことをしてるんだ?」

 カシャの言葉に答えたのは、トトリではなくアリスでした。アリスはカシャが怖くてたまりませんでしたが、勇気を振り絞ったのです。

「わ、私のお母さんが病気になってしまったの。それで、七色の色を集めて、虹をかけるのよ。そうしたら、虹から七色の雫が落ちて、どんな病気も瞬く間に治してしまう薬が手に入るの」

 アリスの言葉を聞き終えたカシャは、じっと考え込むようにアリスを睨みつけました。アリスはとても怖かったので足がブルブルと震え、涙が零れ落ちそうになりましたがじっとこらえました。

「小屋の中に入れ」

 カシャは斧を置くと、小屋の中に入って行ってしまいます。二人は後に続きました。

 小屋に入ると、カシャは温かなスープとパンを出してくれました。

「食え」

 昨晩少しパンを食べましたが、トトリもアリスもココもお腹はペコペコでした。木のスプーンで湯気の立つスープを口に運びます。ミルクとトウモロコシがたっぷり入ったスープはとても甘くてほっぺたが落ちそうになりました。

「美味しい!」

 トトリとアリスとココは顔を見合わせて微笑みました。

「おまえの母さんは病気なのか?」

 カシャはカップにミルクを注ぎながら問いかけます。二人の前に、ミルクの入ったカップが置かれました。ココの前には小さなお皿が置かれます。

「ありがとうカシャ。アリスのお母さんは雪が解ける前に病気になって、もうずっと寝たっきりだ」
「……俺の母さんもそうだった」

 カシャはぽつりとこぼします。

「父さんは母さんを治す薬を探しに出かけて、もう五年も帰ってきていない。その間に母さんは死んだ」
「君は、それから一人で?」
「そうさ、母さんは絶対に町に行ってはいけないと言っていた。だけど、どうしたって行かなきゃいけない時がある。そんなときはけっして長居なんかせずに、さっさと用事だけすませて帰るのさ」
「見張りをしているっていうのは?」

 アリスが尋ねると、カシャはバツが悪そうに頭を掻いた。

「悪いな、嘘を吐いた。おまえたちが町に行くのを止めたかったんだ。安易にエルドラドの町に行くのは危険じゃないかと思ったんだ。王様は大の他の色嫌いなんだ。ロッソ以外の人間が町に入るのは危ない」
  
 カシャの言葉は温かなスープのように優しかった。

「ありがとうカシャ。でも僕たちはいかないといけないんだ」
「おまえたちの事情はよくわかったよ。とにかく腹ごしらえしろ。俺も一緒に行ってやる。たぶん、おまえたちが探している『赤』の色は、大樹の実から採れるかもしれない」
「大樹の実?」
「そうだ、城の中庭に生えている大木だ。世にも美しい真っ赤な実がなる。俺が案内してやるよ」

 カシャは自分もミルクをぐいっと飲み干すとそう言ってくれました。赤の国のことがわからない二人にとっては、願ってもない申し出です。

「本当かい! とても嬉しいけれど、君はお母さんに町に行ってはいけないって言われたんだろう? 君にとっても町は危険じゃないのかい?」
「その理由を、母さんは教えてくれなかった。町が危険だからとか、そういう理由ではないと思うけれど、一つ思い当たることがあるとしたら、俺のこの肌の色だ」
「君のその色は『赤』じゃないって言っていたね?」

 カシャは頷きました。カシャの上半身は美しい赤色でしたが、足元は緑色だったのです。使い古されたズボンから覗く足は、美しい緑色をしていました。それはまさに新緑のような美しい色でしたが、この町の葉はどれも真っ赤でしたし、イーハトーブの葉はどれも真っ黒でしたので、三人はそうは思いませんでした。
 
「俺の父さんは緑の国からの旅人だった。父さんは母さんと一緒に町から離れたこの場所に小屋を作って三人で隠れるように住んでいたんだ。そう、母さんが病気になるまでは――」

 カシャはぐっと涙を答えるように唇を噛み締めました。

「だからおまえたちの気持ちはよくわかるつもりだ。アリス、おまえの母さんの病気が良くなるなら、俺も協力してやるよ」
「ありがとうカシャ!」

 アリスは嬉しくなって頬を赤く染めました。

「さぁ、腹が膨れたら出かけるぞ!」

 カシャを先頭に、トトリとアリスとココは山を下ります。山のふもとはジャングルのようになっていて、とてもではありませんが不案内なトトリとアリスだけでは通り抜けることが困難だったことでしょう。カシャがいてくれてとても助かりました。

 入り組んだジャングルを抜けると、もうじきエルドラドの町に着きます。トトリとアリスの黒い色は、この国ではとても目立ちますので、二人は大きな赤い布を頭からすっぽりと被りました。黒猫のココはトトリの方に飛び乗り、布の中に隠れました。カシャは足元をしっかりと布で巻いて、緑色の肌が見えないようにしています。

「俺はここに立ち寄る行商人相手に商売をしているから、町には再々行くわけじゃないけれど、父さんに抜け道や隠し通路を教えてもらっていたからすごく詳しいんだ。父さんは路銀を稼ぐのに、町の自警団で働いていたらしい。安心してついてきてくれ」
「すごく助かるよ。カシャの父さんは勇敢な人なんだね」

 トトリの言葉に、カシャは照れ臭そうに顔を赤らめましたが、その表情はすぐに曇りました。

「勇敢なものか、母さんが病気になって、薬を探しにって言っていたけれど、本当はただ逃げただけかもしれない。俺たちを捨てて、緑の国に帰ったのかもしれない」

 五年も帰らない父親へ、カシャは疑いを抱いていました。大好きだったお父さんです、会えないことで寂しさが募っているのかもしれません。トトリには、なんとなくカシャの気持ちがわかりました。トトリのお父さんもお母さんも、トトリを置いていなくなってしまったからです。だけど、トトリは寂しいと感じないようにしていました、育ててくれたおじいさんはとても優しく、トトリを愛してくれましたし、アリスの家族もトトリを大切にしてくれたからです。

「何か理由があるんだよ、だから、そんな風に言わないでカシャ」

 それはトトリを育ててくれたおじいさんの言葉でした。トトリが悲しくなるたびに、おじいさんはそう言って勇気づけてくれたのです。

「そうだな……俺が父さんを疑ったら、父さんは悲しい気持ちになるもんな!」

 カシャは元気を取り戻しました。山を下りると、エルドラドの町がありました。町の真ん中に、大きなお城があります。赤の国を治める王様のお城です。お城から何本もの道が放射状に伸びていて、その間にひしめき合うように家が建っていました。市場のある通りもあり、どこもとても賑やか絵豊かな町のようです。

 カシャの案内でトトリたちは町の中に入りました。赤い布を被っているトトリとアリスのことを、道行く人は気にも留めません。良かった――トトリは胸をなでおろしました。

「大樹があるのはお城の庭なんだ。大樹は枯れてしまっているたしいけれど、実の一つや二つ残っているかもしれない。ほら、ここにお城に抜ける隠し通路があって、庭に出られる」

 カシャは人気ひとけのない通りで立ち止まりました。どこをどう見たって行き止まりです。目の前には赤いレンガの壁しかありません。トトリは不安そうな目でカシャを見ました。

「まぁ見てろ」

 カシャは右から三つ目、下から四つ目のレンガを押しました。するとどうでしょう、レンガの壁に、小さな穴が開いたではありませんか。

「すごい! 隠し通路だ!」
「ここは、お城が敵に襲われたときに王様たちが逃げるための通路なんだって父さんが言っていた」
「君のお父さんは本当にすごいねカシャ!」

 カシャは誇らしげに鼻を鳴らしてから、通路の中に入って行きました。トトリとアリスも続きます。全員がすっかり入ってしまうと、カシャは違うレンガを押して、通路の入り口を閉じました。入り口を閉じてしまうと、真っ暗です。アリスは恐ろしくなってトトリの服を掴みました。

「今明かりをつけるから」

 カシャは持ってきていた木の枝に油の付いた布を巻き、火を灯しました。あたりがぼんやりと明るくなります。

「さぁ、ここは一本道のはずだ、行くぞ」

 暗い通路を進んでいくと、行き止まりに当たりました。アリスが不安そうに尋ねます。

「ねぇ、行き止まりよ」
「大丈夫だ、ここを押せば……」

 カシャがレンガの一つを押すと、行き止まりの壁から、まぶしいほどの光が降り注いできました。トトリとアリスは思わず目をつむります。ゆっくりと目を開けると、目の前に大きな大きな木が生えていました。イーハトーブの森にはないような大きな大きな木です。二人は歓声を上げました。

「大きな木だ……だけど、なんだか元気がなさそうだね。木の実はあるな……」

 トトリは木の周りに駆け寄り、上を見上げては実を探しましたが、見つかりません。アリスは下に落ちている実はないかと地面をキョロキョロと、だけど、一つもありません。ココは木に登って探してみましたが、一つも見つかりませんでした。
 みんなががくりと肩を落としていると、大きな声がします。

「侵入者め! さてはおまえたち、樹を枯らした犯人だな! おい、みんなこっちに集まれ!」

 お城を守る兵隊の声が響き渡ると、あっという間にトトリたちは取り囲まれてしまいました。そのとき、はらりとアリスのかぶっていた布が落ちました。アリスの真っ黒な目を見て、兵隊たちは驚きの声と悲鳴を上げました。

「おまえたち! よそ者ではないか! 神聖な赤の国の城に他の色を持つ人間が立ち入るなど言語道断である! ひっ捕らえろ!」
「待ってください! 忍び込んだことは謝ります。だけど、僕たちにはどうしても大樹の実が必要なのです! どうか聞いてください!」

 トトリの必死の説得も、兵隊の耳には全く届きません。三人と一匹はあっという間に牢屋の中に放り込まれてしまいました。冷たい石の壁に小さく開いた窓には鉄格子がはめられています。トトリは赤く染まる空を見上げてため息を吐きました。

「巻き込んでごめんねカシャ、君は何も悪くないのに」
「何を言ってるんだよ。忍び込もうっていたのは俺だし、なにより、俺が手伝いたかったんだ」
「ありがとう。あぁ、どうやってここから出るか考えないと……」

 ですが、どんなに考えてもよい案は浮かびません。三人が途方に暮れていると、牢屋の前に誰かがやってきました。若い女の人です。美しい髪を結い上げた頭の上には、小さな冠が乗っていました。この国の王妃様です。

「侵入者というのはあなたたちのことね、まぁ、ほんの幼い子供ではありませんか」
「王妃様、このような場所に来られては困ります……」
「まぁ良いではありませんか。私はこの子たちにチャンスを上げたいと思うのです、少し話を聞かせてはくれませんか?」

 優しく微笑む王妃様に、トトリはすべてを話しました。すると、王妃様は少し考え込んでから、ぱちんと手を叩きます。

「それではこういたしましょう。あなたたち――」

 王妃様はトトリとカシャを指さしました。

「大樹が枯れた原因を突き止めて来てはくれませんか? もしも日暮れまでに突き止めてくれたら、みんなを牢から出してあげましょう。そして、城で保存している木の実を一つ分けてあげるわ」
「本当ですか!?」
「えぇ、私は嘘はつきません。だけど、全員を出してあげるわけにはいきません。あなたと猫ちゃんには残っていてもらいましょう」

 王妃様はアリスとココを指さしました。

「もしも見つからなくても日暮れまでには帰ってきてね、そうしないと王様にバレてしまうわ。あの人は他の色に人間を毛嫌いしているの」
「わかりました王妃様、必ず突き止めて帰ってまいります!」

 トトリは力強くそう誓うと、カシャを顔を見合わせて頷き合った。それから、アリスとココに声をかける。

「僕たちを信じて待っていてくれ。必ず、戻ってくるから」

 アリスも力強く頷いて、二人を送り出しました。
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