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閑話。メアリーとウィリアム。ヒューズランド国王の贖罪
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⌘ メアリー視点 ⌘
「メアリー、ウィリアム…本当にすまない…王命が出された…」
本来なら、めでたい話だが、我がコールマン家にとっては葬式と変わりなかった。
弟のウィリアムが再従姉妹のマリア アズグランとの婚約が発表され、私はコールマン公爵としての家督を継ぐ準備しているときに事件が起きる。
建国記念のパーティーに参加した私を見て隣国のヒューズランド王太子が私を見初め〝側室〟で迎えたいと言ってきたのだ。
彼には既に停戦調停で娶った正妃がおり、しかも孕ったばかりだった…
ヒューズランド王太子に対して私は怒りしかない…
王命が下された為、私は否応でもヒューズランド王太子に嫁ぐ事となり、マリーと婚約中のウィリアムが公爵家の当主を継ぐ事に…その所為で2人の婚約は白紙に戻される。
私は我が家の事よりマリーが心配だった。
いくら白紙とは言え口さがない貴族達、噂に背鰭尾鰭が付き勝手に独り歩きする。
この婚約が白紙となった事によりマリーの結婚は難しくなる…
私は居ても経ってもおられずマリーに手紙を送り面会を依頼しつつも返事が無かった…
そうこうしているうちに、隣国に向かう日がやってきた…
「お嬢様、準備が整いました…それとマリア アズグラン様から、お手紙が届いてます」
揺れる馬車の中で手紙を読む…すぐに返事が出来なかったのは、体を壊した為だったとの事。
婚約が白紙になった事に関しては、思う所はあるが、〝何かの思し召し〟なんだろう…お互い、今は辛いだろうけど、笑い合える日が来ます様に…
また隣国へ嫁ぐ私への慮る言葉が綴られていた…
私は涙を流しながらアズグランの屋敷の方向に体を向け祈るように手を合わせた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…マリー」
私の嗚咽は馬車の音で掻き消された…
ーーーーヒューズランド国ーーーー
「あぁメアリー嬢…いやメアリー私の元に来てくれて、ありがとう。長旅で疲れただろう」
頬を染めヒューズランド王太子が私を見つめた…私は扇子で口元を隠し横を向く。
「王命を使わせるなんて卑怯者‼︎貴方のワガママで、取り返しのつかない迷惑をかけてる事がわからないんですか?」
私は、公爵家の当主として立ち振る舞いを小さい頃から学んでいたが彼の顔を見た瞬間に我慢ならなかった…
「メアリー…私は、どうしても、そなたを妃として迎えたかったのだ…」
「へぇ正妃様が身重の身体にも関わらずですか?」
次から次と辛辣の言葉しか出てこない…
幸い、正妃様とは友好関係は良好で、お互いにサポートし合いながら過ごした。
夫に対して許せないままだったが、程なくしてヨシュアを孕った…私は正妃様に申し訳なく涙すると彼女は優しく、どのような形であれ王族に嫁いだなら世継ぎを産む役割も妃としての務めと諭してくれた。
しかし私は我が子に王位継承権は要らないと王太子から国王になった夫と正妃様に伝え今に至る…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
⌘ ウィリアム視点 ⌘
初恋だったマリーと婚約者となり、私の心は胸が高鳴る。
結婚式を待ちながらマリーに似合うドレスやアクセサリーを選ぶ日々は楽しかった…
しかし、その喜びは姉の急な婚姻でぬか喜びとなってしまう。
国を上げての建国記念パーティーに家族で参加した。
姉メアリーは次期公爵家当主として振る舞う様を隣国のヒューズランド王太子が見初めてしまう。
打診は何回かあったが私がマリア アズグランと婚約し姉がコールマン公爵を継ぐ事になっている為、断り続けたが、あの王太子は〝王命〟を出してきた。
王宮に呼び出され王命を受けた父は力無く、自身の不甲斐なさを吐露する。
私達、家族は逆らう事ができず、姉は隣国へ嫁ぐ事になった…
ーーーーある茶会ーーーー
「…そう王命が出たなら、逆らえないわよね…白紙に戻しましょう」
ティーカップに品よく口を当て優雅にお茶を飲むマリア…
「王命を出してまでメアリーの事が好きになったのね…」
「しかし納得いかない‼︎」
私は握り拳を作り、隣国の王太子の〝ワガママ〟で振り回された事に腹が立つ。
「…でも、やられっぱなしじゃ癪だから手は打たないとね」
マリアは身体は弱いが、それに反比例して気がとても強い。
〝やられたら、やり返す〟これが彼女の信条。
王命を出した後、王国はアズグラン家からの支援を一切断ち、自国だけでなく他国にまで影響を及ぼす…
国王が根を上げ公式の場ではないが謝罪する。
それでも暫くは攻撃の手を緩めることはなかった。
「ウィリアム…悲しい顔しないで…仕方ない事だから…メアリーが他国で幸せに暮らせる事だけ願いましょう…公爵家当主として頑張るのよ」
彼女は、そっと私の頬に口付けし最後の別れをした…
私は程なくして新しい婚約者が見つかる…彼女は私の想いを知りながらも寄り添ってくれた…
しかしマリアは、なかなか婚約者が見つからず大商人とは言え平民の次男と婚姻したがクズ男だった…
どうしてマリーだけが、こんなに苦労をしないといけないのか…腑が煮え繰り返るくらいに怒りが込み上げた…マリーには何も出来なかったが、せめてライラの幸せを守ろうと決意する。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
⌘ ヒューズランド国王の贖罪 ⌘
隣国の建国祭に招待され参加する。
パーティーは、どこも同じと思いながら会場を見て回ると1人の女性に目が止まった…
他の令嬢達とは明らかに違う…凛とした佇まい、強い意志を持った瞳に私は心奪われる…
何気ない会話を交わしても隙がなく、聞き上手な上、話し上手…
「あの令嬢は誰だい?」
「コールマン公爵家のメアリー嬢です」
メアリー嬢かぁ…私は既に正妃を迎えているが停戦調停の為の政略結婚…情はあっても愛情までは無い…
メアリーをどうしても娶りたい…欲望が私を支配した。
何回か婚約の打診をするが〝公爵家の跡取り〟を理由に断られ続けられた。
私は最終手段として彼女を私の元へ嫁がせないなら国交を理由に王命を出させた…それぐらい彼女が欲しかった…。
彼女が我が国に来たと聞き居ても立っても居られず彼女に会いに行った。
「王命を使わせるなんて卑怯者‼︎貴方のワガママで、取り返しのつかない迷惑をかけてる事がわからないんですか?」
「メアリー…私は、どうしても、そなたを妃として迎えたかったのだ…」
「へぇ正妃様が身重の身体にも関わらずですか?」
私に対して彼女が発する言葉は鋭利な刃物のように突き刺し、正妃と仲睦まじい姿は私の心を抉る…
あの微笑みを私にも向けて欲しいと言う気持ちは募るばかりだが言えない自分が居る。
私は彼女の人生を狂わせたのだから…
子を成すためでヨシュアを身籠り少しは気持ちが通じ合うかと思ったが、逆に塞ぎ込み正妃に謝り続けた…
私は初めて自分の欲望で人が苦しむ姿を目の当たりにし絶望した…
正妃の言葉でメアリーは癒されヨシュアを産んだ。
私が欲しかった微笑みはヨシュアに注がれる…
正妃が亡くなり、メアリーは王妃として確り勤めながら正妃の忘れ形見である息子達を王族として教育してる…
我が子を国王にしない為に…
あれから十数年経っても外交辞令以外は私には微笑まないメアリー…
彼女が、私に微笑むのは、きっと私が亡くなる時だろう…
それでも私は貴女が好きなんだ…
「メアリー、ウィリアム…本当にすまない…王命が出された…」
本来なら、めでたい話だが、我がコールマン家にとっては葬式と変わりなかった。
弟のウィリアムが再従姉妹のマリア アズグランとの婚約が発表され、私はコールマン公爵としての家督を継ぐ準備しているときに事件が起きる。
建国記念のパーティーに参加した私を見て隣国のヒューズランド王太子が私を見初め〝側室〟で迎えたいと言ってきたのだ。
彼には既に停戦調停で娶った正妃がおり、しかも孕ったばかりだった…
ヒューズランド王太子に対して私は怒りしかない…
王命が下された為、私は否応でもヒューズランド王太子に嫁ぐ事となり、マリーと婚約中のウィリアムが公爵家の当主を継ぐ事に…その所為で2人の婚約は白紙に戻される。
私は我が家の事よりマリーが心配だった。
いくら白紙とは言え口さがない貴族達、噂に背鰭尾鰭が付き勝手に独り歩きする。
この婚約が白紙となった事によりマリーの結婚は難しくなる…
私は居ても経ってもおられずマリーに手紙を送り面会を依頼しつつも返事が無かった…
そうこうしているうちに、隣国に向かう日がやってきた…
「お嬢様、準備が整いました…それとマリア アズグラン様から、お手紙が届いてます」
揺れる馬車の中で手紙を読む…すぐに返事が出来なかったのは、体を壊した為だったとの事。
婚約が白紙になった事に関しては、思う所はあるが、〝何かの思し召し〟なんだろう…お互い、今は辛いだろうけど、笑い合える日が来ます様に…
また隣国へ嫁ぐ私への慮る言葉が綴られていた…
私は涙を流しながらアズグランの屋敷の方向に体を向け祈るように手を合わせた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…マリー」
私の嗚咽は馬車の音で掻き消された…
ーーーーヒューズランド国ーーーー
「あぁメアリー嬢…いやメアリー私の元に来てくれて、ありがとう。長旅で疲れただろう」
頬を染めヒューズランド王太子が私を見つめた…私は扇子で口元を隠し横を向く。
「王命を使わせるなんて卑怯者‼︎貴方のワガママで、取り返しのつかない迷惑をかけてる事がわからないんですか?」
私は、公爵家の当主として立ち振る舞いを小さい頃から学んでいたが彼の顔を見た瞬間に我慢ならなかった…
「メアリー…私は、どうしても、そなたを妃として迎えたかったのだ…」
「へぇ正妃様が身重の身体にも関わらずですか?」
次から次と辛辣の言葉しか出てこない…
幸い、正妃様とは友好関係は良好で、お互いにサポートし合いながら過ごした。
夫に対して許せないままだったが、程なくしてヨシュアを孕った…私は正妃様に申し訳なく涙すると彼女は優しく、どのような形であれ王族に嫁いだなら世継ぎを産む役割も妃としての務めと諭してくれた。
しかし私は我が子に王位継承権は要らないと王太子から国王になった夫と正妃様に伝え今に至る…
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⌘ ウィリアム視点 ⌘
初恋だったマリーと婚約者となり、私の心は胸が高鳴る。
結婚式を待ちながらマリーに似合うドレスやアクセサリーを選ぶ日々は楽しかった…
しかし、その喜びは姉の急な婚姻でぬか喜びとなってしまう。
国を上げての建国記念パーティーに家族で参加した。
姉メアリーは次期公爵家当主として振る舞う様を隣国のヒューズランド王太子が見初めてしまう。
打診は何回かあったが私がマリア アズグランと婚約し姉がコールマン公爵を継ぐ事になっている為、断り続けたが、あの王太子は〝王命〟を出してきた。
王宮に呼び出され王命を受けた父は力無く、自身の不甲斐なさを吐露する。
私達、家族は逆らう事ができず、姉は隣国へ嫁ぐ事になった…
ーーーーある茶会ーーーー
「…そう王命が出たなら、逆らえないわよね…白紙に戻しましょう」
ティーカップに品よく口を当て優雅にお茶を飲むマリア…
「王命を出してまでメアリーの事が好きになったのね…」
「しかし納得いかない‼︎」
私は握り拳を作り、隣国の王太子の〝ワガママ〟で振り回された事に腹が立つ。
「…でも、やられっぱなしじゃ癪だから手は打たないとね」
マリアは身体は弱いが、それに反比例して気がとても強い。
〝やられたら、やり返す〟これが彼女の信条。
王命を出した後、王国はアズグラン家からの支援を一切断ち、自国だけでなく他国にまで影響を及ぼす…
国王が根を上げ公式の場ではないが謝罪する。
それでも暫くは攻撃の手を緩めることはなかった。
「ウィリアム…悲しい顔しないで…仕方ない事だから…メアリーが他国で幸せに暮らせる事だけ願いましょう…公爵家当主として頑張るのよ」
彼女は、そっと私の頬に口付けし最後の別れをした…
私は程なくして新しい婚約者が見つかる…彼女は私の想いを知りながらも寄り添ってくれた…
しかしマリアは、なかなか婚約者が見つからず大商人とは言え平民の次男と婚姻したがクズ男だった…
どうしてマリーだけが、こんなに苦労をしないといけないのか…腑が煮え繰り返るくらいに怒りが込み上げた…マリーには何も出来なかったが、せめてライラの幸せを守ろうと決意する。
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⌘ ヒューズランド国王の贖罪 ⌘
隣国の建国祭に招待され参加する。
パーティーは、どこも同じと思いながら会場を見て回ると1人の女性に目が止まった…
他の令嬢達とは明らかに違う…凛とした佇まい、強い意志を持った瞳に私は心奪われる…
何気ない会話を交わしても隙がなく、聞き上手な上、話し上手…
「あの令嬢は誰だい?」
「コールマン公爵家のメアリー嬢です」
メアリー嬢かぁ…私は既に正妃を迎えているが停戦調停の為の政略結婚…情はあっても愛情までは無い…
メアリーをどうしても娶りたい…欲望が私を支配した。
何回か婚約の打診をするが〝公爵家の跡取り〟を理由に断られ続けられた。
私は最終手段として彼女を私の元へ嫁がせないなら国交を理由に王命を出させた…それぐらい彼女が欲しかった…。
彼女が我が国に来たと聞き居ても立っても居られず彼女に会いに行った。
「王命を使わせるなんて卑怯者‼︎貴方のワガママで、取り返しのつかない迷惑をかけてる事がわからないんですか?」
「メアリー…私は、どうしても、そなたを妃として迎えたかったのだ…」
「へぇ正妃様が身重の身体にも関わらずですか?」
私に対して彼女が発する言葉は鋭利な刃物のように突き刺し、正妃と仲睦まじい姿は私の心を抉る…
あの微笑みを私にも向けて欲しいと言う気持ちは募るばかりだが言えない自分が居る。
私は彼女の人生を狂わせたのだから…
子を成すためでヨシュアを身籠り少しは気持ちが通じ合うかと思ったが、逆に塞ぎ込み正妃に謝り続けた…
私は初めて自分の欲望で人が苦しむ姿を目の当たりにし絶望した…
正妃の言葉でメアリーは癒されヨシュアを産んだ。
私が欲しかった微笑みはヨシュアに注がれる…
正妃が亡くなり、メアリーは王妃として確り勤めながら正妃の忘れ形見である息子達を王族として教育してる…
我が子を国王にしない為に…
あれから十数年経っても外交辞令以外は私には微笑まないメアリー…
彼女が、私に微笑むのは、きっと私が亡くなる時だろう…
それでも私は貴女が好きなんだ…
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