白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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外待雨

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どこかの地下駐車場に入り車から降りた。

急かすようにエレベーターに乗せられ晃さんはパネルにパスケースを近づけただけでエレベーターが動き出した。付いてきた如月さんは慣れてるのか平然としてる。
パネルの他には1階のボタン、後は開くと閉じる、延長、緊急ボタン。だけど、階を表す表示は1階を過ぎ2階、3階と上昇し、13階で止まった。エレベーターから降りて驚いた!ドアが1つしかない。

「あの、ドアが1つしか見当たらないんですけど」

「ワンフロア ぶち抜きで作ってもらったからな」

「はぁ、・・・えっ!ワン、ワンフロア ぶち抜き?!?!」

「ああ、最上階にも部屋は有るけど、防災上だいたい10から14階までがベストだからな。我慢してくれ」

「防災・・上ですかぁ」

「あぁ、万が一 火災にあった時にはしご車がギリギリ届くのが10階から14階とされてる。ま。そうそう火事とかもないと思うが 用心に越したことはないからな」

サラッとしすぎてて上手く飲み込めないけど、ツッコミどころ満載ですよ。

玄関を開けると、床はスタイリッシュな黒地に白い更紗模様が入いってる、こんなの見たことないから触って見たくなる、壁紙みたいな物なのかな?それとも何処かの石なのかな?冷たくてヒンヤリして気持ちいいのかな?ボーっと、どうでもいいことを考えてたら、コッチだと背中を押されて 部屋に入るとそこは真っ白な壁に床が・・大理石のリビング・・・・広、野球でもすんの?

「流石にココで野球は無理だな、せめて3on3だな」

驚きの声が勝手にでてた。如月さんはまた背中を向けてるけど肩が震えてるし 噴き出して笑ってるのバレてるから。

「あの、階段って・・」

「メゾネットにしてもらったから部屋数も十分確保出来てる。安心しろよ」

めぞねっと、ここが13階で階段登ると14階になる部屋の事だよね?!なんだか住んでる世界が違いすぎて目眩がしてきた。色々と聞くだけでも 自分と住んでる世界が違いすぎるから 聞くのはやめて晃さんの後について行くだけにしよう。

案内された部屋は俺の6畳一間より広くて家具も揃ってた。ベッド以外は

「あのベッドは・・・」

部屋のドアを1つ開けると存在感が有りすぎるベッドがデーンと置いてあった。デカいよ このベッド 何人と寝るつもりなの?

カンタンにほかの部屋も案内されたけど、若干目を回してます9SLDK、トイレ3つ お風呂4つ、パントリー、ウォークインクローゼット、シューズクローゼット、布団をひろげて干し放題のバルコニー。何か疲れる。終いには訳の分からんことをおっしゃった。「鈴の部屋に俺の部屋、寝室は1つでいいよな?」
いやいや、部屋数いっぱいあるからって態々部屋と寝室わけなくても十分あの部屋にベッド置けますから。心の中で突っ込んだけど口には出さなかった。

「気に入らない場所があれば言ってくれ、直ぐにリホォームする」

経済力ある男は魅力的だけど、行き過ぎると恐ろしいな。

「事件解決するまでしか居ませんから、気を使って頂かなくても」

正直な気持ちを伝えたのに晃さんは苦虫を噛み潰した顔になったし、如月さんの笑いのツボがイマイチよく分からないけどまた背中を向けて笑ってる如月さん一睨みすると気を取り直した晃さん。

「はぁ、飯 まだだったな」

食べるはずだった弁当を広げてくれる晃さん。

「お茶をお入れしてますからどうぞ、われわれは署の方に戻りますよ」

「そうだな、後は好きな様に寛いでくれ。着替えの服は取り敢えずウォークインクローゼットに揃ってるから好きに使え、それとコレな。この階で勝手に止まるし部屋の鍵でもある。それに、マンションに入ってる店ならこのカードで1枚で支払いが出来るから遠慮せずに使ってくれ」

なんか無くしたら恐ろしいカードを手渡されてしまった。

分からないことは電話でもメールでも何時でもしてくれと 笑顔で手を振って仕事に戻って行った晃さんにドッと疲れた。

手渡されてしまったカードを無くさないように財布を取り出すと携帯が震えてる。昨日の嫌な記憶が蘇りながらも掛けてきた相手を確認すると優からだった。

「もしもし」

「やーっと出た。あのさぁ~ 今日さ泊めてくんない?」

「え?」

「門限過ぎてさ、とっさに鈴兄の所に泊めてもらう約束してるって言っちゃんだ。やっぱりさ、この歳になるとダチと遊びたいじゃん。って事で住所宜しく」

宜しくされても困る。

「ゴメン、今日は知り合いの家に泊めてもらうから」

「ふーん、もしかして バーガーショップにいた人?彼氏?」

「ちがうよ、彼氏じゃなくてお世話になった人」

「違うならいいじゃん、今から帰って来れないの?」

「いや、チョット無理かな」

「しかたない。今日は野宿かな」

野宿と聞いて胸が痛んだ。一緒に育ったのだ、血が繋がってなくても家族であり兄弟でもる。少なからずともそう思ってる相手を野宿はさせられない。だからと言って此処に連れてくるのは違うよな。財布の中身を見てため息を洩らす。無駄な出費は痛いけどネカフェなら何とかなるだろう。

「泊めてあげれないけど ネカフェに泊まれ。野宿よりかはマシだろ。その分の金ならやるから」

「やった、鈴兄ありがとう」

聞いた場所に行こうとして昨日の服装のまんまだった。教えてもらったウォークインクローゼットを開けると、驚いた。晃さんのサイズと俺のだと思うサイズがズラリ。揃えてるって言ってたけど 一通り開けてみたけど 揃えすぎだ!
軽く羽織る上着からシャツにズボン下着から靴下 サイズを観ればおれのサイズをにピッタリ合わせて揃えられてた。

背中に冷たい物が流れ落ちる。
一気に囲われた気分になるのは 後ろめたい俺にとっては恐怖でしかない。
いつ本当の事を言わないと行けない時が来る。でも、ソレはもう少し先の事だと自分に言い聞かせた。

シンプルにジーンズにクロのプリントTシャツを着て玄関にいくと履いてきたスニーカーがない。
もしかしてと 教えられたシューズクローゼットをひらいた。晃さんの靴ではないとひと目でわかる靴のサイズを見れば俺の靴のサイズ、その中にオレが履いてた靴がキチンと並べられてた。

折角なので 服装に合わせて一足借りる事にした。

エレベーターに乗り込み 1階を押すと音もなく下降する。何処かのホテルかと見間違う程のエントランスに豪奢なシャンデリアが天井からぶら下がってる受け付けのような前を通らないと外に出れないようだ。

男性が立っていたので軽く会釈をすると、ニッコリと微笑まれて「田中様 お出かけですか?」と、自己紹介もした事ないのに知っていて当然とばかりに声を掛けてきた。

ビックリして立ち止まってしまった俺にニコニコと人好きする笑顔で近づいてきた。

「驚かせてしまい、申し訳ございません。わたくしは当マンションのサービスマネジメントをさせて頂いております 朝岡と申します。常にこのフロントに誰かおりますので 気軽にどうぞお声をお掛けくださいませ。」

「田中様は当マンションは初めてなので織田様からも詳しく説明して欲しいと頼まれたのですがお時間は大丈夫でしょうか?」

「はぃ、ですが 手短によろしくお願いします」

晃さんが頼んでたとなると無下に断れない。説明を聞くだけでもセレブだった。
1階のエントランスは二重で 1つ目の玄関は外から入ってくるのは誰でも入ってこれるが、住居部分のエントランスは別で部屋の鍵となるカードを読み込ませないと開かない仕組みのドアになってる。部屋のカギは1階から5階までテナントが入ってるのでそのカードでのお支払い可能。このマンション内に入ってる物をお届けするサービス・・・・・何度となくしてきたであろう説明を、淀みなくスラスラと所要時間約10分程で終わらせてくれた。
初めの方しか聞いてなかった俺はサービス過剰気味で引いてしまった。
その中で 1番印象的にはなのが、ゴミ位自分で捨てろよ!!サービスだからって 人にごみ捨てさせるのって間違ってる!だ。お金持ちはごみも人に捨てさせるのか?そんな事を思いながらあいさつをして無かったと思い頭を下げる事にした。

「あの、今日から数日間 織田 晃さんのお宅にお世話になります。よろしくお願いします」

一瞬 ?みたいな顔をしたけど直ぐに笑顔を取り戻してお出かけならタクシーを手配しましょうか?と聞かれたけど、この時間だと、まだ電車もバスも動いてるから断った。



自分がどこに居ても 向かう方面さえ分かってれば乗り間違えることも無い。ソレに日雇いであっちこっちに行くから大体の場所は把握出来る。

優との待ち合わせ場所に着いたのは22時を少し回った時だった。指定されたゲームセンターの前には優は居らず 電話をかけた。

「もしもし、ゴメン 今 ゲーセンの前に着いたんだけど」

「ありがとう!!そこに居て 直ぐに行くから」

分かったと言って電話を切った。
キョロキョロと周りを見てみるが、数時間前に顔を覚えてくれと言われた人の姿が見えなくてホッとしてる。
警護が付くからと行っていたが 俺が外に出ても誰も付いてないな。ヤッパリ大袈裟に言っただけなんだろう。刑事さんも忙しいのに俺一人に時間を割くのは気の毒に感じるし、警護なんてされる必要も感じない。

ポンと肩を叩かれて振り返れば優がいた。が、見たこともない人たちも一緒にいた。優の友だちなんだろうな。

「おまたせ。迷わ無かった?」

「いや、大丈夫だけど。優も余り園長を心配・・・・えっ?」

優のまわりにいた友達らが動き出したオレを取り囲んだ。

「ねェ、鈴兄も一緒に遊んで帰りなよ。夜遊びのたのしさ教えてやるよ」

「・・・友達の家から来てるから戻らないと心配かけるから」

ポケットから財布を抜き取ると 横から腕が伸びて来て俺の財布をかってに奪った。

「へ?ちょっ!!」

「おい、サトシ その態度は良くない鈴兄に財布返して」

「はぁ~、金くれんだろ」

「ネカフェ代を俺にくれるって事で言ってんだよ」

「じゃ、俺にもネカフェ代ちょーだい鈴兄さん」

俺の財布を片手に金をくれと言ってるが、知りもしない人にお金をやる人は居ないだろう。

「ごめん、そこまで持ち合わせがないんだ」

「ダッサッ、じゃさぁクレジットでいいや」

それこそ有り得ないだろうー!
優!!お前の友達 ろくな奴じゃねーぞー!!

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