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徒話 車中にて

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「だからっ!どうしていつも、加減をしないの!?いつか本当に死んでしまうわ!」

「はい……本当に申し訳なく……」

「思ってるの!本当に!?」

交渉を済ませた後、そのまま王城へ向かう組(クリスタ、ローラント、ヴィクトール、レオン、ザックス、トビアス)は2つの車に別れて目的地を目指していた。
クリスタとローラントを乗せた車は、ヴィクトールが運転し、助手席にはレオンが乗っている。

ローラントに締め上げられ意識がなかったクリスタは、目覚めるとすぐローラントに馬乗りになり、逆にぐいぐい締め上げていた。

運転席のミラーで様子を伺っていたヴィクトールは、後ろの二人に聞こえないようにレオンに話しかけた。

「今日も尻に敷かれてるねぇ」

「ああ、見ろよ、あの嬉しそうな顔。首を締め上げられて喜んでるぞ。そういう趣味があったのか……知らなかったな」

「いやいや、クリスタにされるんだったらオレも嬉しい、そういうもんだ」

「………………わかる」

わかるのかよ!?
とヴィクトールは心の中で叫んだ。
冗談で言ったつもりがこんな反応をされるとは。
案外本人は気付いていないが、レオンもクリスタに心引かれているのかもな。
ふん、だが気付かせてやらないけどな。
これ以上いろいろ拗らせたくないしな!

「あとどのくらい??」

突然後ろから顔を覗かせたクリスタに驚き、ヴィクトールは急ブレーキを踏んだ。

「きゃっ!」

「おっと!」

前にふわりと飛んで行こうとするクリスタの体をローラントが腕で掴まえる。

「悪い!!大丈夫か!?」

後ろを振り向くと、ローラントの腕の中に綺麗にちょこんと収まっているクリスタが見えた。
二人は何故か見つめ合ったまま動かなかった。

「あ、ありがとう、ローラント」

「危ないから前に乗り出すな、君に何かあったら困る」

「はい、ごめんなさい」

なんだよ、仲良くなるの早いな。
面白くない!

ローラントは体を支えていない方の手を、クリスタの頬に添え静かに自身の唇を近付け………っておいっ!

「ちょっと待て!そこでいちゃつくなよ」

ローラントは体勢を変えずに目だけでヴィクトールを見た。

「いいだろう、誰も見ていないんだから」

「………お前、オレ達を人類にカウントしてないのか。ちょっと酷くない?」

「人類というか、空気みたいなもんだ」

そういうと、仕切り直してクリスタを見つめ、一呼吸も置かずに口付けた。

はぁ、空気ね。
お前、わかっているか?
空気がないと生きられないんだからなっ!





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