君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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夜が来て奏叶の家に来た私は奏叶のお母さんと一緒の部屋で眠ることになった
1人じゃないって分かってるけど…やっぱり眠るのが怖い
またあの悪夢を見てしまったら…

母「千菜ちゃんきてきて!奏叶のアルバム!」

奏叶のお母さんに手招きされると一冊のアルバムを見せてくれた

母「奏叶が小学生の時のなの」

アルバムに写る幼い奏叶
小さい頃の奏叶…なんだか可愛い
運動会やマラソン大会、それに家族で遊びに行ったような写真まで沢山…
だけどそのほとんどの写真が…

千菜「冬馬くんと…一緒に写ってるのが多いですね」

母「そうなの。冬馬も奏叶の事凄く好きだったから奏叶の後をよく追いかけてて…奏叶もそんな冬馬の面倒をよく見てくれたの
男の子だから2人揃うとヤンチャで大変だったわ」

千菜「そうなんですか…」

母「だから…冬馬が亡くなった時は奏叶もだいぶ落ち込んだわ
塞ぎ混む事も多かったし心配してたの」

奏叶もそれだけ辛い想いをしてたのに私は何も知らないで…ただ冷たく当たってしまっていた…
だけどそんな表情ほとんど見せないで、いつでも笑っていて…
私は奏叶を幸せにするのだろうか…
それとも不幸にしてしまうのだろうか…

母「昔話しちゃったわね。そろそろ寝ましょうか」

千菜「はい…」

私は布団に入った

母「電気消すわよ?」

お母さんも電気を消すと布団に入った
お母さんのお陰で少し気が紛れたかも
少しほっとしてる感じ…

千菜「あの…奏叶の事教えてくれてありがとうございました」

母「どういたしまして。おやすみ千菜ちゃん」

千菜「お休みなさい…」

暗闇の中…ゆっくり目を閉じると深い眠りの中に落ちていった

千菜が眠りについて数時間後―…
奏叶の母は何かに気付き布団から起きた

母「…千菜ちゃん?」

千菜「ぅ…お父さん…お母さん…おに…行かないで…」

奏叶が教えてくれた通りね…
毎晩悪夢にうなされてるのね…
苦しくて辛いでしょうに…
奏叶の母は悪夢にうなされて寝ている千菜の手を優しく握った

母「大丈夫よ。お母さんはここに居るからね」

その言葉と優しい手の温もりに安心し、うなされていた千菜の表情は和らいでいた
その様子を見ると奏叶のお母さんももう一度眠りについた

ー…長く深い眠りだった
気がつくともう朝が来ていた
目を開けると見慣れない天井と風景
ここは何処だろう…
思い出した…私、昨日は奏叶の家に泊まったんだった
久しぶりにゆっくり寝れたかも…
夢も見なかったし良かった…
ふと隣を見ると一緒に寝ていたはずの奏叶のお母さんの姿がなかった
私は布団から起きて部屋を出てキッチンへ向かった
キッチンに近づくと色んな音が聞こえてきた
覗いてみると奏叶のお母さんが一生懸命ご飯を作っていた
不思議な感覚だった
ご飯のいい匂いとご飯を作っている音
懐かしかった
起きても誰も居ない静な家
居ない事が当たり前でいつのまにか慣れていった
だから…

母「あら?千菜ちゃん起きてたのね。おはよう」

笑って私におはようって言ってくれる人が居る
それが凄く輝いて見えた

千菜「おはよう…ございます」

かな母「よく眠れたかしら?」

千菜「はい…ありがとうございます」

母「良かった。向こうで顔洗ってきなさい?
そしたら奏叶を起こして来てくれる?
あの子、朝弱くて自分じゃ起きれないのよ」

千菜「はい」

奏叶のお母さんは凄く優しくて暖かい人…
それに…

母「それに千菜ちゃんが起こしに行ったらきっとビックリするわね♪」

少しイタズラっぽい所があるみたい
私は顔を洗って着替えた後、奏叶の部屋に向かった

コンコン

千菜「奏叶?」

ドアを叩いて呼んでみても反応がなかったので私はドアを開けて中に入った
中に入るとベッドの上でまだ気持ち良さそうに寝ていた


千菜「まだ寝てる…」

…思ったけど奏叶の寝顔を見るの初めて?
家に来た時は私が先に寝ちゃうし…朝も私の方が起きるの遅かった
だから朝が弱いなんて初めて知った
もしかして早起き頑張ってくれてたのかな…

千菜「奏叶起きて」

声をかけても起きない
こんな1面もあるなんて知れて良かったかもしれない
そっと手を伸ばして奏叶に触れてみた

奏叶「…ん?母さん…?」

眠たそうに目を開けた奏叶
いつもお母さんに起こされてるせいなのか、私のことお母さんと勘違いしてるみたい

千菜「あ…おはよ」

寝ぼけてるのか奏叶は私をじっと見てから大声をあげた

奏叶「うわぁぁ!?千菜!?」

ー…キッチン
母「あら、起きたみたいね♪」

奏叶の声は家中に響くくらいだったかもしれない
それくらいびっくりしていた奏叶

奏叶「な、なんで千菜がここに居るの!?」

千菜「奏叶のお母さんに頼まれて…」

奏叶「母さん…!ちょ…起こしてくれたのはありがと!でも恥ずかしいから出てって」

千菜「恥ずかしい?」

奏叶「寝起きだし…!好きな子にカッコ悪い所見せたくないから!」

好きな子…
いつも奏叶は余裕で大人っぽいと思ってたけど、子どもっぽい所もあるんだな…
こんなに慌てる奏叶珍しいかも…
そしていつも私の前では早起きを頑張ってくれてることも分かっちゃった

母「何一人前に言ってるんだか」

奏叶「母さん!余計なことしないでよ!」

母「うふふ、ビックリしたでしょ?
千菜ちゃん起こしてくれてありがとね
奏叶も起きたなら早く支度しなさい
ご飯出来たわよ」

奏叶「分かったよ」

私は奏叶のお母さんと先に戻るともう既にご飯を食べ終わってる奏叶のお父さんが居た

千菜「おはようございます」

父「おはよう。よく眠れたかな?」

千菜「はい」

父「そうか。気をつけて学校行くんだよ
じゃ、行ってくる」

母「いってらっしゃい」

奏叶のお父さんが出ていくと入れ代わりで奏叶が入って来た

母「さぁ2人もご飯食べちゃって」

千菜「いただきます」

私は奏叶と一緒に温かいご飯を食べた
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