魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。(趣味用)

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第四章

塞翁が馬15

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 翌朝、少女は現れた。
その真っ白なドレスが地面につかないよう両手で持ち、肩で息をしながら泉の辺りを見回す。

けれどもいつもの場所に彼の姿はなかった。
代わりに木の影に隠れるように一本の花だけが置かれている。
彼女はベールを上げると、その花を手にとり、そして森を見詰めた。


「……行ってしまったのね」


そしてもう一度、花を見詰める。
それは彼女の瞳と同じ、綺麗な空色の花びらだった。

「最後に、この姿を見て欲しかったんだけどな」

寂しげに微笑すると、直ぐそばから泣き声が聞こえた。

まるで赤ん坊のような。

振り向くと泉の傍に


「え?」


少女は一瞬眼を見開いて、そして直ぐ優しげに目尻を下げる。
赤ん坊をそっと抱き上げると、嘘みたいに泣き止んで、すやすやと寝息をたてだした。


「貴方……そう、そうなのね」



遠くから聞こえる少女を呼ぶ声と足音。
それがだんだんと近付いて


「姫さまー姫さま!」

自国から共に来たお目付け役が、少女の元へ。


「こんな所に! 何もこんな日まで手を煩わせてくれなくても! さぁもう式が始まりますお早く」

そこまで言ってその女性は振り向いた彼女の姿にぎょっとした。


「姫? 違うわ。私はもう、あの方とそしてこの国の王妃なのですから」


吹っ切れたように歩きだす我が主に。

「ひ、姫さま! その腕の者はいったい、姫さま!」

これまた面倒な事になったと青ざめ、冷や汗を流しながらお目付け役はあとを追う。



「レーヴ、私はこの子と共に頑張るわ。貴方もきっと」




彼女にはもはや迷いも戸惑いも恐れもない。

すみわたる青空の元、小さな王妃はしっかりとした足取りで、自分のあるべき場所へと進むのだった。


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