水華館−水の中の華たち−

桜月 翠恋

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女神編

1葬目−優しい小さな華−

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…その日は雨が降っていた。
何故か女神は雨の日を嫌い、館は閉鎖されるらしい。
その日、変わった男性がその館を訪れた



キィッ…鈍い音を立てて館の扉が開く

『あら…今日はもうお終いなのですけれど』

女神…と呼ばれる館の主が暗闇の中から男に声をかけた

「あぁ、すまない。だか、一つだけ噂に聞いた花を見たい」


その言葉を聞くやいなや、館内の電気がつく

『あら、貴方の言うお花はどちらかしら?』



男は女神の姿をみて息を呑んだ。
透き通るような白い肌に床につくのではないかというくらいの長く、漆黒の髪
白いブラウスに上は黒いカーディガンを羽織っているのだろうか?
長めのおとなしいスカートを履いておりちらりと見える足首はとても細い

女神、と言うより暗闇では魔女、とも言えそうな風貌だった


『どうかなされたの?』

その声も、とても透き通っており確かに周りが美しいと褒めるのも頷けた

暫く思考を巡らせた男は咳払いをし

そしてきりだす



「俺が言う花は、幼い花だ。その色は白いと聞いた。そして噂では、一番新しいはなだと…」


女神は口角をあげ、嬉しそうに微笑む

『その花はこちらです』

ついておいでと言うように背を向ける女神。
男は慌てて後を追う





館内の電気は薄暗く、コポコポと水の音が聞こえるのみ

不気味な光景なのだろうが水槽にはカーテンがされ、何も見えなくなっている

男が怯え、足取りが重くなっているところで女神は立ち止まった

『さあ、こちらよ』


女神がスッと黒いカーテンを引けば水槽が現れる

「っ、……」

男は言葉を失った


水槽の中には幼い少女がいた。
短めの茶髪に白いワンピース、真っ赤な靴を履いた少女は一緒に入れられている椅子に腰をかけたまま目を閉じている

まるで、今にも動き出しそうな程に、綺麗だった


『こちらの花はつい最近、私のもとへ運ばれたんですよ。私のもとへ来る花はとても綺麗にさせてもらってますの』

不気味なほど、ニッコリと笑う女神に男は微かな恐怖心を覚える

「やっぱり、あんたはこの花についても話せるのかい?」

男は恐る恐る女神に聞く
女神は待っていたかのように笑い

『もちろん…では、彼女のお話でも』



語り始めた


『……この少女は昔、貧しい夫婦の元に生まれました。名ははづき。華の月と書いて華月。
とても優しく素直に育ったのですが…
この子の両親が離婚してしまってね。そして華月は父親に引き取られたんですよ

ところがその父親、華月に色香を感じて襲ってしまうんです』

と、そこまで言ったところで女神はニッコリと微笑む

男は震えながらも女神を見つめ続けていた。

『そして華月は何度も何度も父親の狂乱に付き合い
ある日、近所のおばさまにバレそうになってしまうんですよ

「あら、華月ちゃん、そのあとは?」

華月は首をおさえ、横に首をふる。
そう、そんな何気ないことにも周りは怪しむもので、父親は自分に疑いが向く前に華月を亡きものにしようと企んでねぇ

そんなとき…華月ちゃんのお友達が溺れるの。
優しい華月ちゃんは助けようとする。
父親はそれをみて……』

バンッ…と大きな音が鳴り響く

「それで、その話は警察にはしてねぇのかい?」

『警察?何故です?私が語るのはお客様にだけですわ』

女神は 変なことを仰るのね、と笑う
男は震えを抑えようと必死だ

「あんたは、知っちまったんだから!!」

男は女神の首を絞める。
ギリギリとしめるが…女神は笑顔のままだ

「そうさ、俺が殺した。事故に見せかけるためになぁ、死体が見つかったって聞いてたが、引き取り手が見つかってねぇって聞いてなぁ!俺が引き取りに行って証拠ごと抹消しようとしたら、これだ!」

水槽の中の少女を睨みつける男。
なおも、しめるてはとめない
あとが残るのではないかと思うほど強く、首が締まっていく

けれど、どうしたことか、女神は顔色一つ変えない

「お前は見てたんだなぁ!!」

『ふふっ……あはははは!!』

女神が大声で笑う

「なっ…」

男は恐怖で手を話してしまう。

『私は聞いたの。この少女に
このお話を
新しい罪の華を受け取れるお話を…
さて、貴方はどんな罪になるのかしら?』

すっと女神が男の頬を撫でる

『残念だけれど、私は死ねないの』

女神の言葉に男が怯え、逃げようとする…が……

男は、身体が動かないことに気がつく

『私は案内をして、この子達の無念を晴らす。そして……』

女神の言葉が止まると同時に部屋が暗くなる

『その念を、あなたのような人に罪として届け、華たちの願いを叶えるのが私…なのよ』


断末魔のような悲鳴が響く……


そして、明かりがついた頃にはもう男はどこにもいなかった。

ただ、白い花の隣に、黒い花が咲いているだけだった…



『さぁ、これであなたも眠れるわね。華月ちゃん。
あなたの願いは叶ったわ…
もとの優しいお父様と一緒にお眠りなさい…
ゆっくり、おやすみなさい。最後まで優しかった…幼く、可憐な白い花。』

そっと、華月の水槽の周りの電気が消え華月の水槽はどこかに収納されていった。


『さぁ、次の花はだれかしら?』

女神の言葉に反応するように、華月の水槽のあったところに新しい水槽が現れる

まるで、次は私の番だよ、とでも言うように


数日後、白い花と黒い花は、元妻が引き取り、埋葬したのだと噂が流れていた…


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