水華館−水の中の華たち−

桜月 翠恋

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女神編

10葬目−雑草のような可愛い華−

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「あった!」


そう声に出して私は花を摘む


「私の好きな花」


そっと館に向かう私

今日の語り部は女神でも、記者さんでもありません…

また華なのか?

いいえ…ここの元々の語り部の私です…
元館長…花苑かえんと申します

珍しいでしょうが…記者様の手記にこのような記述を残していいものか…
悩みましたが

この館について彼が語っているのであれば語らねばなりませんから…


まず私の名前も花が由来です

かえんそう、というものがあります

それが私の名前
花苑の由来


さて、このような話はいいですね

私の語る昔話は
この水槽の少女

イヌフグリの咲いてる中に少女が居るでしょう?
この華です

彼女のお話を語りましょう










昔…遊女、なんてものがいた時代ですね
彼女、イヌフグリからとって

ふぐり…と名付けましょう

ふぐりはそれはとても綺麗な遊女でした
歌も、舞も、話も


人を魅了するそれが彼女にはあったのです

けれど彼女の願いは1つだけ



「人を守りたいの」


ただそれだけ

あなたはどう思いますか?
人を守りたい少女
でもふぐりは遊女

それぞれ思いは違うでしょうね

ふぐりは諦めなかったんですよ

それもそのはず、ふぐりは妹が売られぬようにここに売られたのですから


ある日、ふぐりのところにとても顔立ちの整った殿方がやってきましてね

ふぐりはいつものように
歌い、舞い、語ったの


するとその殿方はふぐりに惚れたの


「ふぐり、お前が好きだ」

「冗談はいけませんよぉ、全く~」


そう、その男は本気だった

名前はなんと言ったか…


左京、といったか…


それから左京はふぐりのところに毎日通うようになってね



「ふぐり、今日も会いに来た」

「またきてくださったのですか?」

「ふぐりを妻に貰いたいからな」

「また、ご冗談を」


なんて笑っていたある日
ふぐりもいつの間にか左京に好意を抱いていた

でも、左京には金がない

だから二人は駆け落ちをしたんだ

だけれどそれは…




ふぐりを慰みものにしたあとに売っぱらうためでね…
それを拒否したふぐりは…左京にころされてしまったの…





ひどい話だとは思いませんか?

そう、ここで終わればただの悲劇

神様は意地悪なのさ…









そう、ふぐりは目を覚した
そして自覚した…



「私…もう死んでるのね…」


ポツリとつぶやいた独り言は誰にも聞かれなかった

でもね

「ふぐり」

「誰?」

「お前の念は、強すぎる。
天国にも地獄にも行けないくらいに…」

「お迎えの人なのかな…なら私はどこへ行くというの?」

「どこへもいけない、念をとかねばならないよ」


白い服を着た女性にそう言われて
ふぐりはぼんやりと考えた


「1つだけ力をあげよう」

「力?」

「罪をなすも成さぬもふぐり次第。
ふぐり、今の貴方は人間には触れられぬ、だから」


そう言うやいなや、女性はふぐりの手に華の種を渡したの


「これは特別な種。これを使えば念をとけるだろう…だけれど1つ」


「なんですか?」

「罪をおかせば、役目を全うするまで迎えに来れない」


そういう女性は少しかなしげだったの


「役目?」

「同じような念を持った者たちをその力で導く…そんな役目」


ふぐりはその種を飲んだわ

そして……




この先は内緒。

さて、館が開くよ




この話の続きも結末も館に隠されているの…

さぁ、今日も彼女が語る






悲しい者たちの


美しく


怖く


けれど悲しい



そんな物語じんせい













館が開く。


そして女神は今日も微笑む


『今日はどの華にしましょうか…?』












イヌフグリ(オオイヌフグリ)…忠実、信頼、清らか












火焔草(マネッチア)……

たくさん話しましょう





楽しい語らい
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