水華館−水の中の華たち−

桜月 翠恋

文字の大きさ
13 / 13
女神編

11葬目 −謙虚な華−

しおりを挟む
語り部の変わりは物語の変わり

日高の手記に紛れ込む

他の誰かのキオクの欠片

そんなことは気にもせず、日高は今日も館へ向かう

物語を聞きに……






「女神様!」

『日高さん、いらっしゃい』



いつもと変わらない
少し変わったのは日高の鼓動が僅かに早いことくらいだろうか?


「今日もオススメのお話お願いします!」

『そうですねぇ…』


こてっと首を傾げる女神。
そうだ、と口にすれば優しく微笑む


『日高さんはこういう華のお話がききたいとかないかしら?』


「そうですね、個人的にこれだけ華が居るのなら… 変わった病気を持った華とかもあったのでは?」

『…そうですね、ではこちらへどうぞ』


一瞬考えたようだが、女神は部屋へ案内した…


その部屋はいつもの暗い部屋とは違っていた



日高の目に飛び込んだのは先程までの薄暗い部屋とは違い、明るい部屋だった

カーテンの代わりにキラキラしたビーズのようなものがかかっている

そこにいるのは白い服を着た少女のようだった…

目を閉じ、ボロボロの本を抱きしめている




「彼女は……」


『病名はわかりませんが…生まれてから一度しか目を開けたことのない華です…』

「一度? 」


『では…話しましょうか』





コホン…と女神が場を仕切り直す






   
 
 
 
 
  
 
 
 

 
 

 







彼女は生まれたときから目を閉じていた
父や母も不思議に思い医者に問えば
彼女は病気らしい

「この子の目は」

「見えないでしょう。光に弱すぎる」

「私達の姿も」

「えぇ、見えません。それに目を開けてしまえば二度とは目を開けませんよ」


それは………死を意味していた





彼女は大きくなった
自分の目隠しは目を怪我しているからだと

そう習っていた

「とおさま、かあさま」

「なぁに?」

「私はいつになったら目の怪我治るのかなぁ」


彼女は理解してた
治らないことを……


「きっと、すぐ良くなるわ」


ぎゅっと母に抱きしめられる彼女
彼女は嬉しそうに微笑みました

母の存在を、家族の存在を実感できるのは体温のみ

彼女にはひとつだけ夢がありました

いつか、両親の顔を見る、という夢が…


そんなある日、彼女の体調が崩れ…

意識が朦朧とし始めます

彼女は悟りました、死を…

そして


両親に彼女は頼みました


「目隠しを外してください」






「だめよ、あなたが外すと…」

「二人の顔が見たいの…」


かなしげに微笑む彼女に、両親は頷き、そっと目隠しを外しました



「とおさま…かあさま…」


パチっと目を開くと優しい両親の顔…
彼女は嬉しそうに微笑み、そのまま………











                       
 
 

 
 
 
『と、言う話です』

女神の話が終わった途端、日高の瞳には涙が滲んだ


「…すみません……」

『大丈夫ですよ、さぁ、今日は閉めます、お帰りくださいな』

「あの」


『はい?』



「彼女は、なぜここに?」


『…彼女の願いです』


それだけ言うと女神は日高を追い出した



日高は少し悲しい
この話を記事にのせようとそう決めた





ころっ…….ときれいなビーズが日高の足元に落ちる

それを拾い、日高は会社にむかった……








エビネ…花言葉




謙虚、謙虚な恋



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

百万年の孤独

プレアデス
ミステリー
世界中の人々から愛されるスーパーアイドル、ヨハン。しかし彼の心は虚ろだった。かれは成功したK−POPアイドルで、すべてを手に入れたかのように思われていた。しかし気づいたときには、一番大切なひとは彼のそばから永遠に去っていた。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...