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4話
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「入れない?」
約束を取り付け、婚約者に会いに来た私は固まってしまった
門番をしている兵士に、中に入れることはできないと言われてしまったのだ
「王太子様は体調を崩されておいでです。お帰りください」
「……わかりました」
仕方なく私は馬車の方へ向かう
横目で門番を見るともう一人の門番に、なにか話をしていた
「ヒナ」
「わかりました」
ヒナの魔法は風を操ることができる
その一つに小さな音を聞く魔法がある
門番達の話を聞いてもらうことにしたのだ
「……お嬢様」
「…何かわかった?」
「……第一王子は現在行方不明だそうです」
「なっ……」
行方不明。私の記憶の彼が亡くなった時期とは違う。ましてやそんな話なんて聞いたことがない
「…まだ見つかってないの?」
「どうやら魔物が現れたらしく、第一王子を探すことに兵を割けないらしいです」
「……そんな…」
再び私の前に現れた壁に座り込んでしまう
第一王子が消えてしまうと、私はザクロ王子との婚約が決まり……ローリエにぞっこんなザクロ王子が私との婚約を蹴り、ましてや第一王子を殺したのが私だとかなんだとか言われて…処刑されてしまう
絶望している私の耳に届いたのは
『きゅ……っ』
何かの鳴き声…
「…行かなきゃ」
何故か口からその言葉が漏れた
私は立ち上がると、ドレスの裾を掴み、走り出した
「お嬢様!!」
ヒナの叫ぶ声も耳に入らないくらい、私はその声にひかれていった
「こっちの方から聞こえたけど……」
近くの森の奥まで入ってきてしまった
太陽の光がさしてこないくらいの、深い森に後先考えずに入ってしまった
「やばいかもしれないわね…」
私の魔法は光の魔法なのだが
どういうわけか回復くらいしかできない
ここで魔物が襲ってきたら私は多分殺される
少なくともランを連れてくるべきだった
ランは魔法をほとんど使えないが体術が兵士並みに強く、魔物ですらすぐに倒せてしまうくらいに強い…
『きゅ……』
ガサガサと近くの草むらが揺れる
この鳴き声はさっきの声?
じっと草むらを見ていると白い綿が飛び出してきた
「きゃっ」
私に飛びついてきた綿はどうやら綿ではなく真っ白な子犬のようだった
「あなた…」
『きゅっ……きゅぅっ……』
その子犬は私に擦り寄ってきて何かを訴えようとしていた
「あれ…貴方もしかして……」
その子犬の耳の横には本来の犬なら無いような角のようなものが生えていた
「……貴方、魔族なのね」
『きゅ…ぅ、きゅ』
「そう…大丈夫よ。私は貴方を傷つけたりしないわ」
そう、本来なら魔族と人間は領土が分かれており、お互いの領土に入らないことを約束している
そして敵意のない魔族、または人間を攻撃することはしないとお互いの決めごとが結ばれている
「…よしよし」
私が魔物の子どもを撫でているとその子は痛そうに顔を歪める
「どうしたの!」
『きゅ…』
「…?」
『あ……し』
私の頭に直接聞こえるかのように声が響く
これはこの子の声だろうか?
そう思いながらその子の足を見ると剣でつけられたような切り傷ができていた
「そんな…人間にやられたの?」
『きゅう…』
頷くように一声鳴くと小さく丸まってしまう
「…待ってて」
私はその子の傷口に手をかざし、力を込める
そう、唯一使える回復魔法を使うのだ
けれど……
「え……」
いつも使っていた魔法より、眩い光が目の前を包む
「な、にっ……」
ぎゅっと目を閉じ、温かい光に包まれながら
私の耳にはその子の声が聞こえていた
『やっぱり、君だった』
と
約束を取り付け、婚約者に会いに来た私は固まってしまった
門番をしている兵士に、中に入れることはできないと言われてしまったのだ
「王太子様は体調を崩されておいでです。お帰りください」
「……わかりました」
仕方なく私は馬車の方へ向かう
横目で門番を見るともう一人の門番に、なにか話をしていた
「ヒナ」
「わかりました」
ヒナの魔法は風を操ることができる
その一つに小さな音を聞く魔法がある
門番達の話を聞いてもらうことにしたのだ
「……お嬢様」
「…何かわかった?」
「……第一王子は現在行方不明だそうです」
「なっ……」
行方不明。私の記憶の彼が亡くなった時期とは違う。ましてやそんな話なんて聞いたことがない
「…まだ見つかってないの?」
「どうやら魔物が現れたらしく、第一王子を探すことに兵を割けないらしいです」
「……そんな…」
再び私の前に現れた壁に座り込んでしまう
第一王子が消えてしまうと、私はザクロ王子との婚約が決まり……ローリエにぞっこんなザクロ王子が私との婚約を蹴り、ましてや第一王子を殺したのが私だとかなんだとか言われて…処刑されてしまう
絶望している私の耳に届いたのは
『きゅ……っ』
何かの鳴き声…
「…行かなきゃ」
何故か口からその言葉が漏れた
私は立ち上がると、ドレスの裾を掴み、走り出した
「お嬢様!!」
ヒナの叫ぶ声も耳に入らないくらい、私はその声にひかれていった
「こっちの方から聞こえたけど……」
近くの森の奥まで入ってきてしまった
太陽の光がさしてこないくらいの、深い森に後先考えずに入ってしまった
「やばいかもしれないわね…」
私の魔法は光の魔法なのだが
どういうわけか回復くらいしかできない
ここで魔物が襲ってきたら私は多分殺される
少なくともランを連れてくるべきだった
ランは魔法をほとんど使えないが体術が兵士並みに強く、魔物ですらすぐに倒せてしまうくらいに強い…
『きゅ……』
ガサガサと近くの草むらが揺れる
この鳴き声はさっきの声?
じっと草むらを見ていると白い綿が飛び出してきた
「きゃっ」
私に飛びついてきた綿はどうやら綿ではなく真っ白な子犬のようだった
「あなた…」
『きゅっ……きゅぅっ……』
その子犬は私に擦り寄ってきて何かを訴えようとしていた
「あれ…貴方もしかして……」
その子犬の耳の横には本来の犬なら無いような角のようなものが生えていた
「……貴方、魔族なのね」
『きゅ…ぅ、きゅ』
「そう…大丈夫よ。私は貴方を傷つけたりしないわ」
そう、本来なら魔族と人間は領土が分かれており、お互いの領土に入らないことを約束している
そして敵意のない魔族、または人間を攻撃することはしないとお互いの決めごとが結ばれている
「…よしよし」
私が魔物の子どもを撫でているとその子は痛そうに顔を歪める
「どうしたの!」
『きゅ…』
「…?」
『あ……し』
私の頭に直接聞こえるかのように声が響く
これはこの子の声だろうか?
そう思いながらその子の足を見ると剣でつけられたような切り傷ができていた
「そんな…人間にやられたの?」
『きゅう…』
頷くように一声鳴くと小さく丸まってしまう
「…待ってて」
私はその子の傷口に手をかざし、力を込める
そう、唯一使える回復魔法を使うのだ
けれど……
「え……」
いつも使っていた魔法より、眩い光が目の前を包む
「な、にっ……」
ぎゅっと目を閉じ、温かい光に包まれながら
私の耳にはその子の声が聞こえていた
『やっぱり、君だった』
と
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