20 / 115
最果ての森編
19. 発音練習
しおりを挟む
朝だ!
しっかり熟睡して、気分爽快だ。
ベッドが高くて一人で降りられないので、ジルが来てくれるまで待っていよう。なんだかすっかり甘えてしまっている。
さて、それまで何をして時間を潰すかというと···発音練習だ!
ちゃんとした言葉を発さなくてもジルがイケメンスキルで察してくれるが、早く喋れるようになった方がいいだろう。
ということで、
「あ、い、う、え、お」
あ行は大丈夫だ。次はか行。
「きゃ、···」
だ、大丈夫、もう一度だ。
「きゃ、き、きゅ、きゅえ、きょ」
『き』しか言えてないっ!
そうだ、か行は難しいんだ。さ行からやろう。
「しゃ、···」
も、もう一度だ。
「しゃ、し、しゅ、しゅえ、しょ」
『し』しか言えてないっ!か行と全く同じ結果になり、ちょっと凹む。
濁点が付くとどうなんだろうか。
「ちゃ、ち、ちゅ、ちゅえ、ちょ」
ち、違うんだ!た行じゃなくて、ざじずぜぞと言いたかったんだ!た行だとしても言えてないけども!
はっ!なら、ら行はどうだろう。
「りゃ、り、る、りぇ、りょ」
やった!ちょっと言えた!
もはや自分の中のハードルは限りなく低い。
「ち、る、ちる、ちる」
うーん、もう少しな気がするんだけどな。
「ちる、ちる」
まだ練習が必要だ。
僕が発音練習を頑張っていると、ガチャリと部屋のドアが開き、ジルが入ってきた。
「おはよう」
「おあおー!」
「!」
挨拶できた!ドヤ顔も忘れない。
「···おはよう」
「ん?おあおう!」
「!!」
ジルが二度目の挨拶をしてきたので挨拶を返した。
僕が少し喋ったから驚いたのだろう。僕は日々成長する男なのだ。
ジルが僕を撫でてから抱え、リビングへと向かうが、途中でふと立ち止まる。
どうしたのだろう。
ジルがじっと僕の顔を見つめる。
なんだ?さすがに顔はまだ成長してないと思うよ?
「···ちるちるって、何だ?」
聞かれてたー!
ちゃんと言えるようになってから披露するつもりなんだ。もうちょっと待っていて欲しい。
僕があわあわしていると、
「ウィル君!おはよう!今日もいい天気だね!こんな日は、魔法の勉強がしたくなるね!」
とても眩しいオーラを振りまくライがやって来た。直射日光を浴びてる気分だ。···ああ、とてもいい天気だね。
「おい、まずは朝食だ」
「分かってるよー。ウィル君、待ち遠しいと思うけど、まずはご飯を食べようね」
え、僕が諭されてるの?なんだか釈然としないが、ジルの気を逸らしてくれたので感謝するとしよう。
リビングに着くと、僕は定位置に座る。
テーブルには、サラダとスープ、それからパンが置かれている。
「昨日、サラダを気に入っていたようだからな」
ほんと、こういうところがイケメンだ。
今日もパリッとした葉野菜の歯応えを楽しむ。
しゃくしゃく。
うまうま。
「ふふ、ジル、楽しそうだね」
え、僕じゃなくて?
「美味そうに食べてくれるからな」
「そうだね。嬉しいよね」
「ああ」
「ふふ、なんだか餌付けしてるみたい」
僕はペットかな?まあ、現状は似たようなものかもしれないが。
「こいつは息子だ。父親として世話をしている」
イクメン!素敵!
「ふふ、そうだね。大事な愛息子だよね」
称号を気に入りすぎだろう。
「ああ」
否定しないところもまたイケメンだ。
スープは具だくさんのクリームスープだ。豊かなミルクの風味の中で、野菜はほっこり柔らかく、ベーコンのようなお肉の旨味が効いていてとても美味しい。幸せの味だ。
野菜とお肉の味が溶け込んだスープにパンを付けて食べるのもいい。ふわっとしたパンにスープが染み込んで、口の中でじゅわっと味が広がる。この食感も最高だ。
朝からお腹いっぱい食べて、気分も満たされる。いい朝だ。
「ふふ、満足そうな顔をしてるね」
そりゃそうだ。大満足してるからね。
「本当はすぐにでも魔法を教えたいんだけどね。魔法の練習をするには外に出た方がいいから、まずは昨日の復習から。お腹が落ち着くまで、魔力操作と魔力感知をしようか」
それがいい。今は動ける気がしない。
体内で魔力をぐるぐると回す。たまに一箇所に集めたり、逆に均一にしたり。まだまだ粗はあるが、ちょっとずつきれいに出来るようになっていると思う。
それからライに小さめの魔力を体内で動かしてもらったり、魔力を放出してもらったりしながら魔力感知も練習した。
「そろそろ大丈夫かな?ウィル君、外に出てみようか!」
しばらく練習していると、ライがそう言った。
うずうずしている様子を隠すことなく、一人外に飛び出す。
「あ、おい」
ジルが呼び止めるも、すでに遅く。
はあ、と溜息をついたジルに抱えられ、僕も外に出た。
しっかり熟睡して、気分爽快だ。
ベッドが高くて一人で降りられないので、ジルが来てくれるまで待っていよう。なんだかすっかり甘えてしまっている。
さて、それまで何をして時間を潰すかというと···発音練習だ!
ちゃんとした言葉を発さなくてもジルがイケメンスキルで察してくれるが、早く喋れるようになった方がいいだろう。
ということで、
「あ、い、う、え、お」
あ行は大丈夫だ。次はか行。
「きゃ、···」
だ、大丈夫、もう一度だ。
「きゃ、き、きゅ、きゅえ、きょ」
『き』しか言えてないっ!
そうだ、か行は難しいんだ。さ行からやろう。
「しゃ、···」
も、もう一度だ。
「しゃ、し、しゅ、しゅえ、しょ」
『し』しか言えてないっ!か行と全く同じ結果になり、ちょっと凹む。
濁点が付くとどうなんだろうか。
「ちゃ、ち、ちゅ、ちゅえ、ちょ」
ち、違うんだ!た行じゃなくて、ざじずぜぞと言いたかったんだ!た行だとしても言えてないけども!
はっ!なら、ら行はどうだろう。
「りゃ、り、る、りぇ、りょ」
やった!ちょっと言えた!
もはや自分の中のハードルは限りなく低い。
「ち、る、ちる、ちる」
うーん、もう少しな気がするんだけどな。
「ちる、ちる」
まだ練習が必要だ。
僕が発音練習を頑張っていると、ガチャリと部屋のドアが開き、ジルが入ってきた。
「おはよう」
「おあおー!」
「!」
挨拶できた!ドヤ顔も忘れない。
「···おはよう」
「ん?おあおう!」
「!!」
ジルが二度目の挨拶をしてきたので挨拶を返した。
僕が少し喋ったから驚いたのだろう。僕は日々成長する男なのだ。
ジルが僕を撫でてから抱え、リビングへと向かうが、途中でふと立ち止まる。
どうしたのだろう。
ジルがじっと僕の顔を見つめる。
なんだ?さすがに顔はまだ成長してないと思うよ?
「···ちるちるって、何だ?」
聞かれてたー!
ちゃんと言えるようになってから披露するつもりなんだ。もうちょっと待っていて欲しい。
僕があわあわしていると、
「ウィル君!おはよう!今日もいい天気だね!こんな日は、魔法の勉強がしたくなるね!」
とても眩しいオーラを振りまくライがやって来た。直射日光を浴びてる気分だ。···ああ、とてもいい天気だね。
「おい、まずは朝食だ」
「分かってるよー。ウィル君、待ち遠しいと思うけど、まずはご飯を食べようね」
え、僕が諭されてるの?なんだか釈然としないが、ジルの気を逸らしてくれたので感謝するとしよう。
リビングに着くと、僕は定位置に座る。
テーブルには、サラダとスープ、それからパンが置かれている。
「昨日、サラダを気に入っていたようだからな」
ほんと、こういうところがイケメンだ。
今日もパリッとした葉野菜の歯応えを楽しむ。
しゃくしゃく。
うまうま。
「ふふ、ジル、楽しそうだね」
え、僕じゃなくて?
「美味そうに食べてくれるからな」
「そうだね。嬉しいよね」
「ああ」
「ふふ、なんだか餌付けしてるみたい」
僕はペットかな?まあ、現状は似たようなものかもしれないが。
「こいつは息子だ。父親として世話をしている」
イクメン!素敵!
「ふふ、そうだね。大事な愛息子だよね」
称号を気に入りすぎだろう。
「ああ」
否定しないところもまたイケメンだ。
スープは具だくさんのクリームスープだ。豊かなミルクの風味の中で、野菜はほっこり柔らかく、ベーコンのようなお肉の旨味が効いていてとても美味しい。幸せの味だ。
野菜とお肉の味が溶け込んだスープにパンを付けて食べるのもいい。ふわっとしたパンにスープが染み込んで、口の中でじゅわっと味が広がる。この食感も最高だ。
朝からお腹いっぱい食べて、気分も満たされる。いい朝だ。
「ふふ、満足そうな顔をしてるね」
そりゃそうだ。大満足してるからね。
「本当はすぐにでも魔法を教えたいんだけどね。魔法の練習をするには外に出た方がいいから、まずは昨日の復習から。お腹が落ち着くまで、魔力操作と魔力感知をしようか」
それがいい。今は動ける気がしない。
体内で魔力をぐるぐると回す。たまに一箇所に集めたり、逆に均一にしたり。まだまだ粗はあるが、ちょっとずつきれいに出来るようになっていると思う。
それからライに小さめの魔力を体内で動かしてもらったり、魔力を放出してもらったりしながら魔力感知も練習した。
「そろそろ大丈夫かな?ウィル君、外に出てみようか!」
しばらく練習していると、ライがそう言った。
うずうずしている様子を隠すことなく、一人外に飛び出す。
「あ、おい」
ジルが呼び止めるも、すでに遅く。
はあ、と溜息をついたジルに抱えられ、僕も外に出た。
84
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる