転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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最果ての森編

19. 発音練習

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 朝だ!
 しっかり熟睡して、気分爽快だ。

 ベッドが高くて一人で降りられないので、ジルが来てくれるまで待っていよう。なんだかすっかり甘えてしまっている。

 さて、それまで何をして時間を潰すかというと···発音練習だ!

 ちゃんとした言葉を発さなくてもジルがイケメンスキルで察してくれるが、早く喋れるようになった方がいいだろう。

 ということで、

「あ、い、う、え、お」

 あ行は大丈夫だ。次はか行。

「きゃ、···」

 だ、大丈夫、もう一度だ。

「きゃ、き、きゅ、きゅえ、きょ」

 『き』しか言えてないっ!

 そうだ、か行は難しいんだ。さ行からやろう。

「しゃ、···」

 も、もう一度だ。

「しゃ、し、しゅ、しゅえ、しょ」

『し』しか言えてないっ!か行と全く同じ結果になり、ちょっと凹む。
 濁点が付くとどうなんだろうか。

「ちゃ、ち、ちゅ、ちゅえ、ちょ」

 ち、違うんだ!た行じゃなくて、ざじずぜぞと言いたかったんだ!た行だとしても言えてないけども!
 はっ!なら、ら行はどうだろう。

「りゃ、り、る、りぇ、りょ」

 やった!ちょっと言えた!
 もはや自分の中のハードルは限りなく低い。

「ち、る、ちる、ちる」

 うーん、もう少しな気がするんだけどな。

「ちる、ちる」

 まだ練習が必要だ。



 僕が発音練習を頑張っていると、ガチャリと部屋のドアが開き、ジルが入ってきた。

「おはよう」

おあおーおはよー!」

「!」

 挨拶できた!ドヤ顔も忘れない。

「···おはよう」

「ん?おあおうおはよう!」

「!!」

 ジルが二度目の挨拶をしてきたので挨拶を返した。

 僕が少し喋ったから驚いたのだろう。僕は日々成長する男なのだ。

 ジルが僕を撫でてから抱え、リビングへと向かうが、途中でふと立ち止まる。
 どうしたのだろう。

 ジルがじっと僕の顔を見つめる。
 なんだ?さすがに顔はまだ成長してないと思うよ?

「···ちるちるって、何だ?」

 聞かれてたー!
 ちゃんと言えるようになってから披露するつもりなんだ。もうちょっと待っていて欲しい。

 僕があわあわしていると、

「ウィル君!おはよう!今日もいい天気だね!こんな日は、魔法の勉強がしたくなるね!」

 とても眩しいオーラを振りまくライがやって来た。直射日光を浴びてる気分だ。···ああ、とてもいい天気だね。

「おい、まずは朝食だ」

「分かってるよー。ウィル君、待ち遠しいと思うけど、まずはご飯を食べようね」

 え、僕が諭されてるの?なんだか釈然としないが、ジルの気を逸らしてくれたので感謝するとしよう。



 リビングに着くと、僕は定位置に座る。

 テーブルには、サラダとスープ、それからパンが置かれている。

「昨日、サラダを気に入っていたようだからな」

 ほんと、こういうところがイケメンだ。

 今日もパリッとした葉野菜の歯応えを楽しむ。
 しゃくしゃく。
 うまうま。

「ふふ、ジル、楽しそうだね」

 え、僕じゃなくて?

「美味そうに食べてくれるからな」

「そうだね。嬉しいよね」

「ああ」

「ふふ、なんだか餌付けしてるみたい」

 僕はペットかな?まあ、現状は似たようなものかもしれないが。

「こいつは息子だ。父親として世話をしている」

 イクメン!素敵!

「ふふ、そうだね。大事な愛息子だよね」

 称号を気に入りすぎだろう。

「ああ」

 否定しないところもまたイケメンだ。

 スープは具だくさんのクリームスープだ。豊かなミルクの風味の中で、野菜はほっこり柔らかく、ベーコンのようなお肉の旨味が効いていてとても美味しい。幸せの味だ。

 野菜とお肉の味が溶け込んだスープにパンを付けて食べるのもいい。ふわっとしたパンにスープが染み込んで、口の中でじゅわっと味が広がる。この食感も最高だ。

 朝からお腹いっぱい食べて、気分も満たされる。いい朝だ。

「ふふ、満足そうな顔をしてるね」

 そりゃそうだ。大満足してるからね。

「本当はすぐにでも魔法を教えたいんだけどね。魔法の練習をするには外に出た方がいいから、まずは昨日の復習から。お腹が落ち着くまで、魔力操作と魔力感知をしようか」

 それがいい。今は動ける気がしない。

 体内で魔力をぐるぐると回す。たまに一箇所に集めたり、逆に均一にしたり。まだまだ粗はあるが、ちょっとずつきれいに出来るようになっていると思う。
 それからライに小さめの魔力を体内で動かしてもらったり、魔力を放出してもらったりしながら魔力感知も練習した。

「そろそろ大丈夫かな?ウィル君、外に出てみようか!」

 しばらく練習していると、ライがそう言った。
 うずうずしている様子を隠すことなく、一人外に飛び出す。

「あ、おい」

 ジルが呼び止めるも、すでに遅く。
 はあ、と溜息をついたジルに抱えられ、僕も外に出た。
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