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「ありがとうございます」
ツカサさんは髪の毛をボサボサにしながら頭を下げた。
「大丈夫ですか? 血が……」
アカネちゃんが駆け寄り、ツカサさんの手を取った。
「うん、ちょっとヒリヒリするけど血は止まってるみたい」
そう言ったツカサさんの手は震えている。
どれだけ怖かったことか……。
空中に投げて爆発したドローンは白い煙を上げて転がっている。
きっとアンジさんの水がドローンの回路をショートさせてアームが緩んだのだろう。
「3人は私の命の恩人ね」
ツカサさんはもう一度深く頭を下げた。
助けることができて本当に良かった。
それから俺達はアカネちゃんの提案で最初にドローンを撃墜した場所に戻った。
ホンマに脱がされたブラウスでツカサさんの傷口を包帯替わりにしようとのことだ。ドローンの爆破でボロボロになっているから使えないかもしれないって俺は言ったけど、思っていたよりも使える部分が多くて丁度良かった。
段ボールに入った綺麗な水で傷口を洗って手当をしていると、ホンマ達も戻ってきた。
オオバさんも一緒だった、ついでにドローンも連れていた。
ホンマ達のグループでもオオバさんを発見した後にドローンの撃墜を目論んだらしいが、サトシさんが一つの懸念を示して様子見したそうだ。
それは最初のドローン撃墜後にドローンの数が増えたこと。
俺達のグループが先にドローンの一機を撃墜していた場合。もう一機、つまりサトシさん達が追っていた機体を落とした瞬間に、次のドローン部隊が投入される可能性がある。
一機から二機に増援されたように、もう一機追加、もしくは最悪の場合、倍の四機のドローンが一気に襲ってくる可能性が考えられた。
そうなると4人で行動しているそれぞれのグループでは太刀打ちできなくなる。
それは避けなければならないと、サトシさんは提言したみたいだ。
あのドローンと一対一なんて想像しただけで絶望だ。
だから無理に撃墜するのを避け、うまく誘導しながら戻ってきたらしい。
「最初から散り散りに逃げ回らずに、こうやってみんなで1ヶ所に集まって協力合っていれば余裕でクリアできるゲームだったみたいですね」
オオバさんの言葉に、みんな頷いた。
ドローンは誰かを標的にして襲ってくるけど、標的にされた人以外が妨害すれば、また距離をとる。
全方向衝突防止センサーとやらが発動し、こちらの攻撃は当たらない。いや当てようと思えば全員で一斉攻撃すれば流石のセンサーも対応しきれないかもしれない。
けど撃墜することが目的じゃないから問題なかった。
制限時間までドローンのアタックを避け続ければ良いだけだったんだ。
俺達は女性陣を中心にして男性陣で守るように囲み、ドローンの攻撃を凌ぎ続けた。
そして......。
♪
『ゲーム終了の時間となりました』
優雅な音楽と一緒にモニターに映し出されたアバターは、そう宣言した。
俺達は一人の犠牲者も出すことなくゲームをクリアした。
死ぬかもしれない緊張感の中で、みんな走り回り、ドローンの攻撃を掻い潜り、疲労しきっていたが、みんなの表情からは安堵と達成感が見て取れる。
危険な場面もあったのも事実だ。
だけど、みんなで知恵を出し合い、協力し、助け合った。
みんな数時間前まで赤の他人で、最悪な自己紹介をされ、疑心暗鬼の塊だった。
けど今は互いを称え合い、笑顔も溢れている。
そして莫大な賞金が目の前に転がっているこの状況。
口の悪い者もいるけど、その行動力に助けられたのも事実。
ここにいる誰もが、このまま協力し助け合えば......。
そう考えているに違いなかった。
『皆様お疲れさまです。
お食事を用意しましたので
しばしご歓談下さい』
「そういえばお腹空きましたね」
アバターの言葉にオオバさんがお腹をさすった。
「わーい、ご飯だ」
アカネちゃんもピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいる。
「酒も出るんだろうな?」
ホンマも……。
というか、食事を出すってことは……。
『お手洗いとシャワールームも設置しております。
次回ゲームのアナウンスは明朝となりますので
ごゆっくりお休みください』
やっぱり、まだ終わりじゃないってことか。
「ちょっと待って、明朝って、泊まるの? ここで?」
ツカサさんが怒りの表情で叫ぶ。
「もう、帰りたいです」
トキネさんは今にも泣きだしそうだ。
「とりあえず、お風呂入ってこようかな」
アカネちゃんは自分の体をクンクンと嗅いでしょんぼりしている。
女性陣には死活問題らしい。
アバターはその言葉を最後にモニターの電源と共に消えた。
「賞金10億円のゲームが1回で終わるはずがないとは思っていましたけど、これはいつまで続くのでしょうか……」
一方通行のアバターのアナウンスに諦めの表情でサトシさんが呟いた。
「あのCGだかロボットだか分からない人は、こちらの問いには何も答えてくれませんからね」
年齢の高いオオバさんとサトシさんは少し不安そうだ。
「でも俺はなんかやれそうな気がします」
根拠はまったく無かった。ただそう思い込みたかっただけかもしれない。
そうやって俺は自分を奮い立たせたとも思う。
「トーゴくんは強いね」
オオバさんの優しい声が胸に響く。
「ええ、私も助けられました」
サトシさんも頷いた。
「いや、強くなんかないですよ。ただみんなとなら上手くやれそうな気がして」
「そうですね、目的が同じなら協力し合えば問題ないでしょう」
膨大な賞金、そしてなによりこの場所から無事に出ること。
オオバさんが言ったように、みんなの目的が一致していれば、こんな理不尽な状況でも絶望より希望の方が強い。
だから、きっとみんなリラックスしているのだろう。
そう思うと、俺の中にも遊び心というか冒険心というか、そういったモノが芽生えてきたのが分かった。
ツカサさんは髪の毛をボサボサにしながら頭を下げた。
「大丈夫ですか? 血が……」
アカネちゃんが駆け寄り、ツカサさんの手を取った。
「うん、ちょっとヒリヒリするけど血は止まってるみたい」
そう言ったツカサさんの手は震えている。
どれだけ怖かったことか……。
空中に投げて爆発したドローンは白い煙を上げて転がっている。
きっとアンジさんの水がドローンの回路をショートさせてアームが緩んだのだろう。
「3人は私の命の恩人ね」
ツカサさんはもう一度深く頭を下げた。
助けることができて本当に良かった。
それから俺達はアカネちゃんの提案で最初にドローンを撃墜した場所に戻った。
ホンマに脱がされたブラウスでツカサさんの傷口を包帯替わりにしようとのことだ。ドローンの爆破でボロボロになっているから使えないかもしれないって俺は言ったけど、思っていたよりも使える部分が多くて丁度良かった。
段ボールに入った綺麗な水で傷口を洗って手当をしていると、ホンマ達も戻ってきた。
オオバさんも一緒だった、ついでにドローンも連れていた。
ホンマ達のグループでもオオバさんを発見した後にドローンの撃墜を目論んだらしいが、サトシさんが一つの懸念を示して様子見したそうだ。
それは最初のドローン撃墜後にドローンの数が増えたこと。
俺達のグループが先にドローンの一機を撃墜していた場合。もう一機、つまりサトシさん達が追っていた機体を落とした瞬間に、次のドローン部隊が投入される可能性がある。
一機から二機に増援されたように、もう一機追加、もしくは最悪の場合、倍の四機のドローンが一気に襲ってくる可能性が考えられた。
そうなると4人で行動しているそれぞれのグループでは太刀打ちできなくなる。
それは避けなければならないと、サトシさんは提言したみたいだ。
あのドローンと一対一なんて想像しただけで絶望だ。
だから無理に撃墜するのを避け、うまく誘導しながら戻ってきたらしい。
「最初から散り散りに逃げ回らずに、こうやってみんなで1ヶ所に集まって協力合っていれば余裕でクリアできるゲームだったみたいですね」
オオバさんの言葉に、みんな頷いた。
ドローンは誰かを標的にして襲ってくるけど、標的にされた人以外が妨害すれば、また距離をとる。
全方向衝突防止センサーとやらが発動し、こちらの攻撃は当たらない。いや当てようと思えば全員で一斉攻撃すれば流石のセンサーも対応しきれないかもしれない。
けど撃墜することが目的じゃないから問題なかった。
制限時間までドローンのアタックを避け続ければ良いだけだったんだ。
俺達は女性陣を中心にして男性陣で守るように囲み、ドローンの攻撃を凌ぎ続けた。
そして......。
♪
『ゲーム終了の時間となりました』
優雅な音楽と一緒にモニターに映し出されたアバターは、そう宣言した。
俺達は一人の犠牲者も出すことなくゲームをクリアした。
死ぬかもしれない緊張感の中で、みんな走り回り、ドローンの攻撃を掻い潜り、疲労しきっていたが、みんなの表情からは安堵と達成感が見て取れる。
危険な場面もあったのも事実だ。
だけど、みんなで知恵を出し合い、協力し、助け合った。
みんな数時間前まで赤の他人で、最悪な自己紹介をされ、疑心暗鬼の塊だった。
けど今は互いを称え合い、笑顔も溢れている。
そして莫大な賞金が目の前に転がっているこの状況。
口の悪い者もいるけど、その行動力に助けられたのも事実。
ここにいる誰もが、このまま協力し助け合えば......。
そう考えているに違いなかった。
『皆様お疲れさまです。
お食事を用意しましたので
しばしご歓談下さい』
「そういえばお腹空きましたね」
アバターの言葉にオオバさんがお腹をさすった。
「わーい、ご飯だ」
アカネちゃんもピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいる。
「酒も出るんだろうな?」
ホンマも……。
というか、食事を出すってことは……。
『お手洗いとシャワールームも設置しております。
次回ゲームのアナウンスは明朝となりますので
ごゆっくりお休みください』
やっぱり、まだ終わりじゃないってことか。
「ちょっと待って、明朝って、泊まるの? ここで?」
ツカサさんが怒りの表情で叫ぶ。
「もう、帰りたいです」
トキネさんは今にも泣きだしそうだ。
「とりあえず、お風呂入ってこようかな」
アカネちゃんは自分の体をクンクンと嗅いでしょんぼりしている。
女性陣には死活問題らしい。
アバターはその言葉を最後にモニターの電源と共に消えた。
「賞金10億円のゲームが1回で終わるはずがないとは思っていましたけど、これはいつまで続くのでしょうか……」
一方通行のアバターのアナウンスに諦めの表情でサトシさんが呟いた。
「あのCGだかロボットだか分からない人は、こちらの問いには何も答えてくれませんからね」
年齢の高いオオバさんとサトシさんは少し不安そうだ。
「でも俺はなんかやれそうな気がします」
根拠はまったく無かった。ただそう思い込みたかっただけかもしれない。
そうやって俺は自分を奮い立たせたとも思う。
「トーゴくんは強いね」
オオバさんの優しい声が胸に響く。
「ええ、私も助けられました」
サトシさんも頷いた。
「いや、強くなんかないですよ。ただみんなとなら上手くやれそうな気がして」
「そうですね、目的が同じなら協力し合えば問題ないでしょう」
膨大な賞金、そしてなによりこの場所から無事に出ること。
オオバさんが言ったように、みんなの目的が一致していれば、こんな理不尽な状況でも絶望より希望の方が強い。
だから、きっとみんなリラックスしているのだろう。
そう思うと、俺の中にも遊び心というか冒険心というか、そういったモノが芽生えてきたのが分かった。
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