22 / 51
イチゴの色
しおりを挟む
「参加者の名前を問題に入れるという条件が、曖昧で良いということが分かったのは僥倖でしたね。しかしトーゴくん、この出題の仕方は危険です」
オオバさんの目に力が入ったのが分かった。
難しく考えずに出した問題だけど、なにか間違っていたのか?
「答えが一致して尚且つ正しい答えを出すには重要な内容だと思いますので、私の考えをみなさんも参考にして問題を出すようにして下さい」
まず今回の俺の問題についてオオバさんは、こう説いた。
イチゴはまず小さな実を作り、光合成を行う段階の葉緑素の色、つまり緑を帯びる。次に葉緑素が分解されると色が抜けて白色に、その後アントシアニン色素が合成され始めると淡いピンクに、そして完熟を迎え赤く染まる。
つまり、アカネちゃんが好きなイチゴがどの状態かということも問題文に入れないと“赤”であるとは言い切れない可能性が出てくる。
だから、今回の答えをマルにするのは危険だし、きっとアカネちゃんは完熟前の淡いピンクのイチゴが好きなんだろうからバツだな、そう勘ぐる人が居てもおかしくないのだそうだ。
そうなると全員の答えが一致し、尚且つ正解という判定を受けられなくなり、俺のライフが1つ減ってしまうということらしい。
それに加えて、正解の内容、つまりマルかバツかの判定もドローンに委ねなければならないということも懸念材料だとオオバさんは言った。
出題者は問題を出すだけで、答えがマルかバツかの入力を行っていないからだそうだ。
確かに俺は今回の問題の答えは赤だと思って宣言したけど、マルが正解なんて入力はしていない。つまりドローン、または別の管理者がバツだと判断した場合、俺の思惑はまったくの見当違いとなりライフが減る。
「心配し過ぎだろジジイ」
ホンマの突っ込みに俺も賛同したい気分になったのは確かだ。
けど、ライフが0になったら殺される可能性……いや、最初のゲームのことを考えれば確実に殺しに来る。
それだけは絶対に阻止しなければならない。そのためにはあらゆる可能性を考慮しないと。
「まぁホンマくんの言う様に、考え過ぎなだけかもしれませんが、綻びは出来るだけ取り除いた方が懸命でしょう。それに最初にも言いましたが、参加者の名前を必ず入れるという条件も難しく考える必要なさそうですからね」
オオバさんはそう言うと、ドローンのセグメントが5になっていることを確認した。
タイムアップになってしまったら回答者のライフが減ってしまう。そんなヘマは避けねばならない。
「僕はマルを押しました」
不意にアンジさんが声を上げた。
「それってアリなの?」
ツカサさんが不安げに言う。
「試す価値はあるかも」
トキネさんもだいぶ落ち着いてきたみたいで良かった。
「アホらしい、どんだけガバガバなゲームなんだよ」
ホンマの言う通りだ、これがまかり通るなら、みんなの答えを一致させなければならないという懸念は完全に無くなる。
「じゃあ、僕もマルを」
そう宣言したサトシさんのドローンの数字が消えた。
おそらく回答を入力した人のドローンのカウントダウンが止まる仕組みなのだろう。
他の人の数字も順番に消え、最後のアカネちゃんが入力を終えた後。
俺のドローンのセグメントが変化した。
赤と青に光るゼロの数字が2つ、その少し上に小さなマルとバツの記号が表示されセ・トゥ・マミの聞きなれた音が鳴り、赤の、つまりマルのセグメントが7の数字に変化した後、ドローンに備えられている全てのランプが一斉に騒がしく点滅した。
「せ、正解ってことでいいんですかね?」
俺はみんなの同意を求めた。
「3つの緑ランプも消えてないし、そうなんじゃない?」
問いに答えたツカサさんの言葉に、俺は“なるほど”と頷いた。
ドローンをよく見ると、セグメント機構の上部に緑色のランプが3つ付いている。たぶんライフの残量を表しているのだろう。
「地味過ぎじゃね? もっとパチンコみたいに盛大にやってもらわないと盛り上がらねぇっつうの」
ホンマがぼやく。
「地味でもいいですよ、早く終わらせましょう」
急かしたアカネちゃんのドローンに“30”が表示された。
「私の番ですね……」
ゴクリと喉を鳴らすアカネちゃん。
「ど、どうしよう、みんなが色々言ったせいで、どんな問題出せばいいのか分からなくなっちゃった」
また眉をへの字に曲げるアカネちゃんを見て、みんなから笑顔がこぼれた。
「じゃあ、みんなでゆっくりと自己紹介の続きでもしましょうかね」
オオバさんのその言葉は、アカネちゃんを落ち着かせるためでもあるし、問題を考えるヒントを出し合おうという意味もあるのだと直ぐに分かった。
正解を確実なものにする為には、もう少しだけみんなの情報が必要だ。
オオバさんの目に力が入ったのが分かった。
難しく考えずに出した問題だけど、なにか間違っていたのか?
「答えが一致して尚且つ正しい答えを出すには重要な内容だと思いますので、私の考えをみなさんも参考にして問題を出すようにして下さい」
まず今回の俺の問題についてオオバさんは、こう説いた。
イチゴはまず小さな実を作り、光合成を行う段階の葉緑素の色、つまり緑を帯びる。次に葉緑素が分解されると色が抜けて白色に、その後アントシアニン色素が合成され始めると淡いピンクに、そして完熟を迎え赤く染まる。
つまり、アカネちゃんが好きなイチゴがどの状態かということも問題文に入れないと“赤”であるとは言い切れない可能性が出てくる。
だから、今回の答えをマルにするのは危険だし、きっとアカネちゃんは完熟前の淡いピンクのイチゴが好きなんだろうからバツだな、そう勘ぐる人が居てもおかしくないのだそうだ。
そうなると全員の答えが一致し、尚且つ正解という判定を受けられなくなり、俺のライフが1つ減ってしまうということらしい。
それに加えて、正解の内容、つまりマルかバツかの判定もドローンに委ねなければならないということも懸念材料だとオオバさんは言った。
出題者は問題を出すだけで、答えがマルかバツかの入力を行っていないからだそうだ。
確かに俺は今回の問題の答えは赤だと思って宣言したけど、マルが正解なんて入力はしていない。つまりドローン、または別の管理者がバツだと判断した場合、俺の思惑はまったくの見当違いとなりライフが減る。
「心配し過ぎだろジジイ」
ホンマの突っ込みに俺も賛同したい気分になったのは確かだ。
けど、ライフが0になったら殺される可能性……いや、最初のゲームのことを考えれば確実に殺しに来る。
それだけは絶対に阻止しなければならない。そのためにはあらゆる可能性を考慮しないと。
「まぁホンマくんの言う様に、考え過ぎなだけかもしれませんが、綻びは出来るだけ取り除いた方が懸命でしょう。それに最初にも言いましたが、参加者の名前を必ず入れるという条件も難しく考える必要なさそうですからね」
オオバさんはそう言うと、ドローンのセグメントが5になっていることを確認した。
タイムアップになってしまったら回答者のライフが減ってしまう。そんなヘマは避けねばならない。
「僕はマルを押しました」
不意にアンジさんが声を上げた。
「それってアリなの?」
ツカサさんが不安げに言う。
「試す価値はあるかも」
トキネさんもだいぶ落ち着いてきたみたいで良かった。
「アホらしい、どんだけガバガバなゲームなんだよ」
ホンマの言う通りだ、これがまかり通るなら、みんなの答えを一致させなければならないという懸念は完全に無くなる。
「じゃあ、僕もマルを」
そう宣言したサトシさんのドローンの数字が消えた。
おそらく回答を入力した人のドローンのカウントダウンが止まる仕組みなのだろう。
他の人の数字も順番に消え、最後のアカネちゃんが入力を終えた後。
俺のドローンのセグメントが変化した。
赤と青に光るゼロの数字が2つ、その少し上に小さなマルとバツの記号が表示されセ・トゥ・マミの聞きなれた音が鳴り、赤の、つまりマルのセグメントが7の数字に変化した後、ドローンに備えられている全てのランプが一斉に騒がしく点滅した。
「せ、正解ってことでいいんですかね?」
俺はみんなの同意を求めた。
「3つの緑ランプも消えてないし、そうなんじゃない?」
問いに答えたツカサさんの言葉に、俺は“なるほど”と頷いた。
ドローンをよく見ると、セグメント機構の上部に緑色のランプが3つ付いている。たぶんライフの残量を表しているのだろう。
「地味過ぎじゃね? もっとパチンコみたいに盛大にやってもらわないと盛り上がらねぇっつうの」
ホンマがぼやく。
「地味でもいいですよ、早く終わらせましょう」
急かしたアカネちゃんのドローンに“30”が表示された。
「私の番ですね……」
ゴクリと喉を鳴らすアカネちゃん。
「ど、どうしよう、みんなが色々言ったせいで、どんな問題出せばいいのか分からなくなっちゃった」
また眉をへの字に曲げるアカネちゃんを見て、みんなから笑顔がこぼれた。
「じゃあ、みんなでゆっくりと自己紹介の続きでもしましょうかね」
オオバさんのその言葉は、アカネちゃんを落ち着かせるためでもあるし、問題を考えるヒントを出し合おうという意味もあるのだと直ぐに分かった。
正解を確実なものにする為には、もう少しだけみんなの情報が必要だ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる