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警報
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「これは正解だったということでしょうか……」
オオバさんがホンマに10億円の示談金を支払うと宣言した後、滞空していたドローン達が一斉に動き出した。
そして棺桶に向かい、その中の札束を次々に運び出す。
みんなの棺桶にはトキネさん脱落によって残った9億。いや、アンジさんの情報によれば、ホンマがちょっとずつ抜き取ったから8億数千万が残っている。
ドローンはまず俺の名前が入った棺桶から5000万円の束を抜き取った。
「なんで俺の賞金を?」
思わず言葉が出てしまった。
ここに連れてこられた時点では賞金なんていらないと思っていたのに、自分の名前の入った箱からお金が無くなると不満が湧いてくる。だからお金は嫌いだ。
「わ、わたしのもだ……」
アカネちゃんの箱からも5000万円無くなった。
そして順番にツカサさん、アンジさん、やっぱりドローンは5000万円ずつ抜き取っていく。
「な、なんなんだよ、オイッ」
サトシさんがらしからぬ叫び声を上げた。
その視線の先には、サトシさんの箱から次々に札束を抜き取って行くドローン。
俺達の5000万円を運び終えたドローンも参加して、サトシさんの棺桶の中にあった札束は残り数千万まで減らされた。
パッと見て1億の束が8個無くなっている。
たぶんだけど、サトシさん以外の4人から5000万ずつで合計2億円、そしてサトシさんから8億円、合計10億円をドローンは持ち去った。
これはオオバさんが宣言した示談金の金額だ。
でもなんでだ。普通だったらオオバさんの箱から回収すべきだ。足りない分を他のメンバーが補填するならまだ分かる。
なんでサトシさんの賞金の大半を奪うんだ?
「どういうことでしょう、私は何の指示も出していませんよ」
常に冷静だったオオバさんの額から汗が流れ落ちる。
「オオバさん勘弁してください。僕、ここを出たら、このお金で人生をやり直したいんです」
サトシさんが悲痛な顔でオオバさんを見た。
「だから私じゃないのです。信じて下さい」
オオバさんの声は落ち着いていたけれど、ポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭った。
「じゃあなんであんたの金は減ってないんですか?」
サトシさんが声のトーンをひとつ上げて睨んだ。
「落ち着いて下さいサトシさん、お金なら渡します。私の賞金から抜いてくださって構いませんから」
「サトシさん、俺の箱からも抜いて下さい」
なんだかオオバさんが追い詰められている気がして、思わず名乗り出てしまった。けど後悔はない、これでサトシさんが冷静になってくれるなら。
「じゃ、じゃあわたしのも」
アカネちゃんも俺に続いてくれた。
「……」
ツカサさんとアンジさんは無言を貫いた。
「ま、まぁそれならば」とサトシさんは腕を組んで下唇を噛んだ。
この誘拐茶番ゲームを使って、俺達を不仲にでもするつもりだったのか?
どんな意図があったか知る由もないけど、これでクリアだろう。なんだか呆気なかったな……。
「おかしいですね」
オオバさんがホンマを見て呟いた。
ホンマの頭上を漂っているドローンのセグメントは相も変わらず数字を減らし続けている。
残り15分、ホンマは解放されないままだ。
「示談金じゃダメだったってこと?」
ツカサさんが眉をひそめて言った。
「お金、持って行かれましたよね?」
アカネちゃんも呆気に取られている。
「ホンマさんは確かに10億円の示談金で受け入れましたよ」
オオバさんの言葉に首を縦に振るホンマ。
「ちょっと待って下さい。なんでホンマさんに渡す予定の示談金をドローンは回収しちゃったんですか? 本当ならホンマさんの箱に移すのが道理ですよね」
アンジさんが異変に気付いた。
確かに、これは一体……。
「どうでもいいですけど、僕のお金は回収しますよ」
サトシさんは足早に棺桶に向かっていく。
そして、オオバさんの箱から札束を抜き取り、自分の箱に移していく。
貰えるかどうかも怪しい賞金なのに、なにをそんなに必死になるのだろうか……。
ビービービービー。
サトシさんの行為に意味を見いだせず、見守っていた俺の耳の傍で、けたたましい警報音が鳴った。
オオバさんがホンマに10億円の示談金を支払うと宣言した後、滞空していたドローン達が一斉に動き出した。
そして棺桶に向かい、その中の札束を次々に運び出す。
みんなの棺桶にはトキネさん脱落によって残った9億。いや、アンジさんの情報によれば、ホンマがちょっとずつ抜き取ったから8億数千万が残っている。
ドローンはまず俺の名前が入った棺桶から5000万円の束を抜き取った。
「なんで俺の賞金を?」
思わず言葉が出てしまった。
ここに連れてこられた時点では賞金なんていらないと思っていたのに、自分の名前の入った箱からお金が無くなると不満が湧いてくる。だからお金は嫌いだ。
「わ、わたしのもだ……」
アカネちゃんの箱からも5000万円無くなった。
そして順番にツカサさん、アンジさん、やっぱりドローンは5000万円ずつ抜き取っていく。
「な、なんなんだよ、オイッ」
サトシさんがらしからぬ叫び声を上げた。
その視線の先には、サトシさんの箱から次々に札束を抜き取って行くドローン。
俺達の5000万円を運び終えたドローンも参加して、サトシさんの棺桶の中にあった札束は残り数千万まで減らされた。
パッと見て1億の束が8個無くなっている。
たぶんだけど、サトシさん以外の4人から5000万ずつで合計2億円、そしてサトシさんから8億円、合計10億円をドローンは持ち去った。
これはオオバさんが宣言した示談金の金額だ。
でもなんでだ。普通だったらオオバさんの箱から回収すべきだ。足りない分を他のメンバーが補填するならまだ分かる。
なんでサトシさんの賞金の大半を奪うんだ?
「どういうことでしょう、私は何の指示も出していませんよ」
常に冷静だったオオバさんの額から汗が流れ落ちる。
「オオバさん勘弁してください。僕、ここを出たら、このお金で人生をやり直したいんです」
サトシさんが悲痛な顔でオオバさんを見た。
「だから私じゃないのです。信じて下さい」
オオバさんの声は落ち着いていたけれど、ポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭った。
「じゃあなんであんたの金は減ってないんですか?」
サトシさんが声のトーンをひとつ上げて睨んだ。
「落ち着いて下さいサトシさん、お金なら渡します。私の賞金から抜いてくださって構いませんから」
「サトシさん、俺の箱からも抜いて下さい」
なんだかオオバさんが追い詰められている気がして、思わず名乗り出てしまった。けど後悔はない、これでサトシさんが冷静になってくれるなら。
「じゃ、じゃあわたしのも」
アカネちゃんも俺に続いてくれた。
「……」
ツカサさんとアンジさんは無言を貫いた。
「ま、まぁそれならば」とサトシさんは腕を組んで下唇を噛んだ。
この誘拐茶番ゲームを使って、俺達を不仲にでもするつもりだったのか?
どんな意図があったか知る由もないけど、これでクリアだろう。なんだか呆気なかったな……。
「おかしいですね」
オオバさんがホンマを見て呟いた。
ホンマの頭上を漂っているドローンのセグメントは相も変わらず数字を減らし続けている。
残り15分、ホンマは解放されないままだ。
「示談金じゃダメだったってこと?」
ツカサさんが眉をひそめて言った。
「お金、持って行かれましたよね?」
アカネちゃんも呆気に取られている。
「ホンマさんは確かに10億円の示談金で受け入れましたよ」
オオバさんの言葉に首を縦に振るホンマ。
「ちょっと待って下さい。なんでホンマさんに渡す予定の示談金をドローンは回収しちゃったんですか? 本当ならホンマさんの箱に移すのが道理ですよね」
アンジさんが異変に気付いた。
確かに、これは一体……。
「どうでもいいですけど、僕のお金は回収しますよ」
サトシさんは足早に棺桶に向かっていく。
そして、オオバさんの箱から札束を抜き取り、自分の箱に移していく。
貰えるかどうかも怪しい賞金なのに、なにをそんなに必死になるのだろうか……。
ビービービービー。
サトシさんの行為に意味を見いだせず、見守っていた俺の耳の傍で、けたたましい警報音が鳴った。
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