かわいいクリオネだって生きるために必死なの

ここもはと

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第2章

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「先に行ってるからな」

 もぐもぐ。大河はロールパンを頬張りながら、優吾の声にうなずいた。
 給食を早々と食べ終えた優吾は、サッカーボールをもって、陸とグラウンドへ行った。
 男子の友達関係は簡単なのに。

 真鈴も、早々と給食を食べ終えて出て行った。
 香葉来のところにいくんだ。
 大河はじっと真鈴を見ていた。で、真鈴に気づかれ……左目でウインクされちゃう。
 なんだか、大河、心がくすぐったくて。おかしな感覚。
 
 はぁ、ふぅ。
 ため息をついた大河も、給食を食べ終えた。
 グラウンドへ行かなきゃ。
 大河は、いつものように優吾たちとサッカーをするんだけど。
 真鈴にだけ任せているのはダメだ。
 と、強い使命感に駆られた。

 少し遅れてもいいよね。

 大河は1組の様子を見に行くことにした。
 香葉来のいるクラスを知るためだ。

 すいっとためらいなしに廊下を進む。2組を越えた。視界に入る『5年1組』のプレート。

 うっ。なぜだか体が強張ってしまう。
 足取りもおずおず怯え気味になって、足元はガクガク。立ち寄りがたいイヤな雰囲気。
 たまたま廊下に児童はいない。
 それゆえに、かーん。
 張り詰めた空気を感じる。

 廊下の窓に目を寄せ外の景色を眺めた。いつもの山の景色を見る。
 3組前の廊下の窓から見えるものと変わらない。少し、落ちつく。
 そして。
 大河は、チラッと1組の、半開きの後ろ側ドアを覗き見る。
 ドキ……、ドキ。
 
 トマトの匂い。給食のポークビーンズの匂いだ。
 ほとんどの児童は食べ終わっているけれど、匂いはこべりつくようにとどまってる。
 視界は。窓際最後列に向く。ひときわ目立つ女子グループが、かん高いはしゃぎ声を上げていて、必然的に大河は見てしまった。

 頭にリボンをつけている女子がいた。パッと見、派手だなって思った。
 窓からの閃光。一団がまぶしい。
 大河は目を細めた。
 その女子たちは。

「ええーマジぃー」
「うそー」

 手を叩き、ケラケラ笑っている。
 一団にはさくらと桃佳の姿があった。
 
 ……。

 大河は、香葉来が孤立する理由がわかった。
 それは、偏見や先入観かもしれないけど……。

 香葉来は、幼くて、こどもっぽくて、純粋で、真面目。
 この子たちは、大人びていて、背伸びしていて、派手。

 たぶん、この子たちに、香葉来はついていけない。世界が、違うと思う……。
 大河は、イヤな現実を知り、しゅんと気が落ち込んでしまった。
 なんで、香葉来はぼくと、真鈴と違うクラスなんだよ……。

 大河は、形容できない心苦しさに打たれていた。
 が。 

 さくらがキッと鋭い目で睨みつけてきた。気づかれた!
 うぅっ。
 大河は息苦しさを感じ、その場から早足で逃げた。

 こんなクラスで、香葉来はあと1年半も過ごさなきゃいけないの?
 見た目だけの印象でも、大河は、このクラスはよくないとしか思えなかった。

 そして大河は、真鈴と違い、何もできない自分が情けなくて歯がゆかった。
 香葉来が真鈴に悩みを打ち開けてくれること。
 それしか、問題解決できない。

 香葉来をいじめているという矢崎の姿はなかった。
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