俺は辺境伯の息子です!〜国王(父親)が苦手なので基本、王都以外のところで生活します。〜

さくや

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ルナティール王国

#11

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「これは………、
まず、どこからツッこんだらいいですかね?」

手紙を読み終えた宰相 リスティーンの第一声がこれである。

「ん? ツッこむ? そんな箇所あったか?」

リスティーンの言葉に国王 アルトリアが疑問の声を上げる。

「大ありだろうが!!!
まず、息子であるアトシュ様がお前を苦手ってどういうことだ!!
避けられてる? 渋い顔をされる?
あと、ウィリアム様の書いておられる出会い方の『あれ』ってなんだ?
お前はいったい息子とどんな出会い方をしたんだ!!!」

「おぉ、すごいな、リンちゃん!
ワンブレスで話してたぞ?どこで息継ぎしてたんだ?」

「リンちゃん言うな!!!」

宰相 リスティーンが吠えた…………
気になったことを一気にまくしたてたリスティーンにまったく見当はずれの反応を返すアルトリア。

その態度にイラつきリスティーンの口調の悪さがヒートアップする。

「ドウドウ、落ち着くのだ、リステ坊。」

「将軍………、私は馬ではないのですが………」

「それは分かっておるが口調がだいぶ乱れておるぞ。
お主までそれでは話が進まぬだろう?」

将軍 ハレイヤにそう言われ、リスティーンは落ち着くため一回深呼吸した。

「そうですね。将軍の言う通りです。
私まであのバカのペースに流されてしまったらいけませんよね。
ありがとうございます。落ち着きました。」

「うむ。それでこそリステ坊だ。」

「さて、醜態をお見せして申し訳ありません、バカ陛下。
とりあえず、一つずつ質問に応えていただけますか。」

冷静に落ち着いたように見えて実はまだ怒っていたりする。
アルトリアのことを『バカ陛下』と呼んでいるのがその証拠である。

「また、バカって言ったな!」

「えぇ、言いましたよ、その通りでしょう?
それよりも質問に応えていただけますか?
いったい、アトシュ様に何したんですかあなたは。」

「うわー、ひど!
アトシュに何したって、普通に親子のふれあいだけどなぁ。」

「『普通』ですか。ちなみに内容は?」

「えーー、だから、普通だってば!」

「だから、その普通の中身を言えって言ってんだろうが!
どれだけ、『俺』を苛立たせれば気がすむんだてめぇわ!!
あと、ほんとにいいかげんその口調やめやがれ!!!」

とうとう化けの皮が完全に剥がれた………

宰相 リスティーン
見た目は知的に見えるが意外と喧嘩っ早い。
一人称ももともとは『俺』だったのを公的な宰相という仕事上不適切だと判断し、『私』に直したのだ。

「リステ坊……、完全に昔の感じに戻っとるぞ。
アルト坊もおふざけはいいかげんにせよ。
話が進まぬ。」


普段なら騒ぐのは自身のことである将軍 ハレイヤ。
しかし、今回は止める側にまわるしかなかった。

「申し訳ありません、将軍。
さっさと話せ、あほアルト。」

将軍の仲裁により、ようやく話が前に進む。

「あほって、バカの次はあほって言った………」

「アルト坊」

「はぁ………、分かりましたよ、将軍。」

「うむ。それでよい。」

バカの次はあほ だったアルトリア。
納得いっていないような表情をつくるがハレイヤの一言でひとまず話を再開することにした。

「アシュくんとの出会いっていってもなぁ。
兄上は『あれ』とか表現しているがただ、アシュくんを抱き上げたり、なでなでしたりしただけだぞ。」

「確かにそれは『普通』ですね。
お前のことだからまたとんでもないことして苦手意識もたれたんだと予想していたが。」

「うむ。それくらいなら儂も子や孫にするぞ。」

リスティーンとハレイヤはアルトリアがやらかして息子に避けられているものと考えていた。
しかし、話を聞くかぎりは『普通』だった。
では、なぜ息子 アトシュに避けられているんだ?

そんな疑問符が2人の頭に踊っていた。

だが、そんな疑問は次のアルトリアの言葉で吹っ飛んだ………

「な? 普通だろう?
従魔たちと気持ちよさそうにお昼寝していたアシュくんを抱き上げ、撫でまくったことなんて。
あの時、アシュくん、寝起きでキョトンとしていて可愛かったなぁ~
その後、大泣きされたけど。」

当時のことの思い出を嬉しそうに語るアルトリア。

それに対し、リスティーンとハレイヤは嫌な予感がしていた。

「ちょっと待ちなさい。
まさかとは思いますがいきなりしたんですか?
父親だと名乗りもせず?説明もせずに?」

「むむ、それは、なんとも。
アルト坊がアトシュ様にお会いしたのはいつ頃のことなのだ?」

「どうかしたのか? 2人とも。
アシュくんと最初に会ったのはアシュくんが3歳のときだ。
そういえば、アシュくんが可愛すぎて勢いでやってしまったような。後悔はしていないがな!!」

「それは………」

「むぅ、また、なんとも………」

2人は言葉を紡げなかった。

なぜならアルトリアの言葉で大方の実情が分かってしまったからだ。

そりゃあ、誰だって名乗りも説明もなく、寝ているところを抱え上げられたら戸惑い驚くだろう。
それがわずが3歳という幼児ならなおさらだ。
大泣きされて当然だ。

当時、3歳のアトシュにとってアルトリアは完全な変なおじさん状態だったことは間違いない。

「ハレイヤ将軍、私はアトシュ様がバカアルトを避ける理由が分かってしまいました………」

「奇遇だのぅ、リステ坊。儂もだ。」

「ん?どうした2人とも?」

なんとも言えない表情を浮かべ、自身を見る2人に国王 アルトリアは疑問をなげかける。

「いえ、あなたの自業自得だと分かったのでアトシュ様に関しては時間を置くのが一番だと思っただけです。」

「うむ。儂も今回は全面的にリステ坊に賛成じゃ。
極力、アトシュ様の望み通りにしてやるべきだの。」

「えーーー、なんでさぁ!
それじゃ、私がつまらないだろう!!
アシュくんに会えないじゃないか!!!」

「知りません。
あなたの都合など心底どうでもいいです。
これ以上、アトシュ様に避けられたくなければ余計なことはしないことです。」

「アルト坊、儂も時の流れに任せるべきだと思うぞ。」

「ぶぅーーー!」

「気色悪い、やめろ。」

アルトリアは納得していないが2対1だ。
アトシュの話は一旦、終了する。

「はぁ……、ココとアトシュに会いたい………。」

「なら、仕事してください。」

「仕事はしてるだろ。
『俺』は毎日でも会いたいんだ!」

「では、さっさと『あれら』を片付ければいいのでは?」

「それができていればこんなことにはなってない。
というか、『あれ』はそもそも俺のせいじゃないのになんで俺が親父のツケを払わなきゃならないんだ。」

話は変わる。
しかし、その内容が苛だたしいものでアルトリアの口調も『俺』と昔のやんちゃしていた頃のものに戻りつつあった。

「仕方ねぇだろ、大公閣下が嵌められたのは事実だが証拠がねぇ。
その上、酒の席でのことだ。本人すら覚えてない話だが向こうは物があるからな。
こっちもそれ相応の物を用意しなければ『あれら』はどうにもできません。」

「本当に困った話だのぅ………」

頭痛の種。目の上のたんこぶ。

この国の主要人物3人はそのことを思い、深いため息をついた。

「「「はぁ…………」」」
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