俺の居場所

出会い(ナツメ)

8

とにかく走り、柊の奴から距離をとる。

特に追ってきている感じはしないが逆に嫌な予感がする。

そして、予感はみごとに的中した。

最悪だ。
前から綺堂組の組員がやって来る。
どうやらあらかじめ俺の逃走経路を予想し、回り込ませていたようだ。

完全に逃げ場がない。

どうする、一か八か強行突破するか。
いや、無理だろうと結論づける。
相手が複数の場合勝ち目はない。俺の後ろから来ているであろう柊 大和についても論外だ。

俺は抵抗せず、おとなしく捕まることにする。
抵抗したところで逃げられないのだから疲れることなどしたくない。
しばらくするとゆっくりとした足取りで柊の奴が歩いてくる。

「もう、いいのか？抵抗しなくて。」

そう顔に笑みを浮かべながら話しかけてくる。
その物言いと態度にじゃっかんイラついたので

「ムダだろ。力じゃ俺に勝ち目はない。
ムダなことしたって疲れるだけだろ。」

とやけくそ気味に言葉を返す。
しかし、逆に頭では冷静に状況を整理し、こいつの目的を推測する。


考え得る可能性としては、二つ。



一つは、俺を尋問するなりしてあの襲撃事件について。
つまり、俺の依頼人の情報をはかせることだ。

もう一つは、俺のもつ情報の占有だ。
あくまでも可能性ではあるが俺のもつ情報は貴重な上に多い。
そのことを知っていれば俺を始末することはないに等しい。
まぁ、それはあくまで可能性の話であるから実際のところは相手次第となる。

ちなみにもしも今、目の前にいる男が綺堂組の若頭である柊ではなく組長の綺堂であればもう一つ可能性がでてくるが柊ならその可能性はないだろう。
とりあえず様子を伺いながら

「で、綺堂組の若頭さまは俺をどうしたいわけ？
俺が売った情報で命狙われたんだから俺に制裁でもするの？
それとも、あんたを狙った依頼人をはかせるか？」

一番可能性が高いことを言ってみた。
すると柊は断定的な口ぶりで

「いや、おまえは俺のものにする。」

と言ってきた。
やはり、推測した通り俺のもつ情報を占有したいらしい。
そう判断し、
「やっぱり、情報が欲しいんだ。
まぁ、この状況だし、しばらくは無料でいいよ。
でも、そのうち情報料は相談させてよ。」
と言葉を返す。

立場的に今は下手にでるしかないがずっとは無理だ。
俺には少しでも多くの金が必要だからだ。兄弟と俺自身のために。
そんな風にいろいろなことを考えていたら柊がさらに何か言ってきた。

「いや、違う。俺はおまえの情報ではなく。
おまえ自身。つまり、おまえを俺のイロにすると言っている。」

今、こいつはなんと言った？《イロ》？あれ？
そんな情報あったけ？え、柊だよな？
こいつ、柊だよな？
俺の頭の中で数々の疑問符が踊り、情報にもなかったためまったく想像していなかった。
だから俺は

「ハァーーーーー」

と叫ぶことしかできなかった。