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そして、異世界人になる

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「文字は全て合っていますが話しは全然違います。今から話します!」

「は、はい」

何が始まるんだ!

「まず、妃を迎えるのは本当です。口づけが嫌で逃げだしたのも本当です。ここまではいいですね」

「はい!」

クラムさんの気合いが入っているから思わず体育会系の返事をした。

「で、口づけが下手なのは嫌だと言ったのは妃ではなく王です!」

「は?」

「王は婚姻の儀式の前に妃と初顔合わせを行ったんですが、その時に妃に口づけが下手な人は嫌だといって断ったんです」

正確にはまだ先がありますが…すみません。


(やまと記憶を巻き戻す)

フィグ
「この間、初めて会って…口づけが…下手な人は嫌だって…」


てっきり傷心で家出したかと思ったけどあれはフィグが言ったのか!!
俺は壮大な勘違いと早とちりをずっとしてたって事!?

「婚姻には確定儀式があるんですが…それが口づけでして。それまでこの国は口づけはしません」

「は?」

「一回も?」

「はい、妃を迎え入れるまで一度も」

「じゃあ何であの行為は知ってたんですか?」

「口づけ以外はできます」

「なるほど…なんだかな…純粋なような不貞なような」

「この国にとって口づけは特別で最も重要なものですから。まあ、一生が決まると言うか」

「そっか、何の一生が決まるんですか?」

「結婚です」

「キス=結婚ですか!?」

「はい。口づけをしたと同時に婚姻が決まりますから。それは王だけでなく一般的にも同じです」

「ちょっと聞いてもいいですか?」

「クラムさんは愛ってわかりますか?」

「わからないです」

「そうですか」

…やっぱり愛は無いのか。だから俺が愛があればなんとかなるって言ったから、見つかれば婚姻が回避できると物とかと勘違いしてたのか。途中で俺の話しと食い違いに気がついて何となくわかった感じかな。キスに自信がないのは結婚に自信がなかったって事か?

「あれ?でもフィグは妃は迎えるって言ってましたけど」

「そうですか…王がそんな事を」

「だから今回帰ったんじゃないんですか?」

「それは王に聞かないとわかりません」

「そっか…俺、ちょっと勘違いして悪いことしちゃったかも。キスが下手なの気にしてると思ってキスの練習をすればいいっていろいろ言っちゃった」

「そういう事だったんですか。いえ、王が悪いんです。やまとさんにしっかり話をしなかったのが全ての発端です」

そっか…何かやっと話が理解できた感じだ。だけど初めから話してくれればこんなに拗れる事なかったんじゃ。フィグ、拗らせ男子か?

「謹慎中のフィグに会ってもいいですか?」

「はい、それは大丈夫です」

キスがそんなに重要だったとは知らなかった。これ、クラムさんにキスしたことありますかって聞いたら、未婚ですか?って聞いてるぐらい多分失礼なんだよなきっと。

 部屋を出てクラムさんに案内されフィグの所へ。フィグは腕立て伏せをしていた。初めて腕立て伏せしてるの見た!いや、それよりもだ。

「フィグ、ごめん。今、クラムさんに話を聞いて俺、勘違いしていろいろな事いった」

「いや、やまとは悪くない」

「はい、やまとさんは一つも悪くないです」

「でも俺、フィグにキスの練習させようとしたし、指舐めたりしちゃったからさ」

「……。」

「王…何してたんですか」

「いや…あれは…」

すまん、フィグがまだキスしたこと無いのに指にキスなんかさせて。嫌だったよな~
所で何で俺はナグマ国に来たんだ?断ったよね。

「ねぇフィグ、何で俺ナグマに来てんの?」

「!?」

「王…私も知りたいです。あの姿見れば大体想像はつきますが…」

暫し沈黙の後、牢屋越しに話される。

「やまとといたい」

「でしょうね」

あれ?そんな素振りも要素も全く無かったけど。え、クラムさん知ってたの!?てか、

「何で?」

「優しいし楽しい」

「わかりますが」

え、全然楽しいとかわかんなかった。クラムさんもわかるの?何処に楽しい要素あったんだ18禁かな?

「やまとも俺の事好きと言った」

「やまとさん言ったんですか!?」

「あーまぁ、好きって。あ、別れ際大好きって言った。最後かと思って」

「だから、連れてきた」

クラムさんは眉間にシワを寄せフィグを見ていた。

「王!一時の感情なら止めて下さい。やまとさんにも生活があります。どう考えても無理です!こちらの生活に慣れなくて死んだらどうするんですか!」

物凄く説得力のある大人の意見。何一つ間違ってない!ぐうの音も出ないはず!俺もでない!

「一時ではない。死なせない。生活は何とかする」

ぐうの音をだしてきた!

「具体的に何も解決してませんよ!説明すら出来ず無理に連れてきたじゃないですか!」

更に、正当な意見!

「だから連れてきた。この国を見せてやまとがどう思うか知りたい」

「やまとさんがこの国で生活するには危険すぎます!やまとさんの国を見たでしょ!欲に溺れ身を粉にしながら働き続けまた欲に溺れ、あんなのほっとける人はいません、男を惑わす生活ですよ!快楽の国です!」

え、そんな風に思われてたの?
いつ、男を惑わしたよ。快楽の国て…

「やまとはそんなやつじゃない」

「現に指を舐められてるじゃないですか」

「ぐっ…それは事情があって…」

「いいですか、やまとさんがここへ来たら間違いなく大変な事になります。実際すでに護衛と…」

「なんだ」

「裸を見られたり…シャワーに付き添わせたり…夜着で話したりしたんですよ!」

あれ?何かそれだけ聞くと俺スゲー淫乱みたいな扱い!いや、それこそ抜粋しすぎ!

「出せ」

「謹慎中です」

「すぐに出せ」

「なりません」

あわわわ、フィグとクラムさんが険悪になってるよ。どーしよ。
と思っていたらフィグが牢屋の扉を素手でぶち壊した。へ?牢屋ってそんな簡単に壊れるの?フィグと目が合うとまた荷物のように抱き抱えられた。そんなフィグを追いかけながらクラムさんは叫んでいた。

 初めに二人の王と会った部屋に来てノックもせずにバンっと入るから二人の王はビックリしていた。

「謹慎中だろ」
「何しにきた」

「謹慎ならもう嫌になるほどした」

え、まだ2日ぐらいじゃない?

「はぁ…何だ」
「クラム、説明を」

「は、はい。王がやまとさんにこの国を見せたいと…」

「クラム、いい。自分で話す」

二人の王はフィグに注目し腕を組みながら話を聞いた。俺は…抱えられたまま。

「やまとが好きだからやまとといる」

「王!」

「「……。」」

それ、説明になってない。

「おい、説明になってないぞ」

ですよね。

「妃はやまとがいい。他はいらない」

「はぁ…異世界人だぞ。まだ説明には足らない」

あれ?俺達まだ付き合ってもないよね。俺の気持ちは!

「王…それ以上言うのは…」

「口づけもした」

「「!!」」

「え?いつ?」

俺は思わず聞いてしまった。

「こっち来る直前に」

「え!あれそうだったの!!」

「クラム、事実か?」
「……はい。私の目の前でしました」

「「はぁ…」」

二人共が天を仰ぎ額に手を置いていた。何とも言えない空気に包まれたがとりあえず俺は言わなければ。

「フィグ、俺は帰る」

フィグの驚いた顔は今も忘れられない。
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