トワイライトコーヒー

かぷか

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一部

三夜 

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 斎藤さんからの着信は無視した。ひたすら当てもなく時間を潰していたらさっきの動画が送られてきた。他に気をとられて撮られている事に気がつかなかった。ここまでされるのかと途方にくれ街のネオンに隠れるように溶け込もうとしていた。

繁華街

「で、結局は捕まって今な、そ、そんで…あ、悪い。ちょっと抜けるわ。和田さんに電話しといて」

 普段ならばあり得ない場所であり得ない相手が見つかり駆け寄った。

「見つけた」

 美日下の腕を握ると逃げられないようにした。すぐさまもっていた携帯でどこかにかけた。

「見つけた、たまたま。ありがとうな、解散」

 手短に電話をきるとさっき送った動画を再生させ見せた。音が出ていてとっさに美日下は携帯を奪おうとしたが取れなかった。音は丁度来た救急車に運良くかき消されて聞こえなかった。

「ラッキーやな」

「何でそんな事するんですか!やめてください!」

「電話無視するから。約束守れんとペナルティがかかるから、こっちの世界では常識やから気をつけんと。今日はサービスでこんなもんにしといたるな。それより探したんやで」

「……。」

「さっきのまだ怒ってんのか?」

 怒ってるとは違った。傷ついたといった方が正しかった。いろんな意味で今自分は傷ついてる。

逆らえない状況なのだから仕方ないのはわかっていたし斎藤もあの人にやれと言われたらやらなければならない関係だろうと思うとこの人も自分と同じだと思った。

「…怒っては」
 
「へぇーてか、家に帰らんのか?」

「関係ないです」

「飛ぶかも思って見張らせたけどタイミング悪くて会えんかったからどうするかなって思てたんやけど、まさかこんなとこで会うとは」

「……。」

 家にやっぱり監視はついていた。さっきのを見てしまうと逃げれなかった時の事を思うとそんな事はできなかった。せいぜい街でうろついて現実逃避ぐらいしか考えが至らなかった。街を歩くと周りの人は普段通りなのが羨ましくその中に入りたかった。紛れたかった。

「すみません、帰ります」

「明日はアパートで指示あるまで待機してな」

「わかりました」

 駅に向かい自宅の方向へ斎藤と歩いた。頭の中は今日の事でいっぱいで動揺していた。

どれくらい働かされてどんな事をして明日は何をさせられ俺はいつまで…
今日みたいに無理やり知らない人とやらされるのだろうか…

誰か…誰か…助けほし…

 パアーーーッ!

 クラクションの激しい音がした。

「びっくりしたな」

「はい…」

「事故にあったら大変やなぁ。自分が意図せず巻き込まれてしまう事もあるし気をつけんとな」

「はい…」 

「怪我したら痛いやろうな」

「…はい」

「事故したことあるか?」

「無いです」

「元に戻すの難しいらしで」

「そうなんですか…」

「完全にはもどらんのやて」

「そうですか…」

 会話の返事をひたすらなんとなく返した。なぜこの人とこんな会話しているかわからなかった。ヤクザとの日常会話などしたことも無いし礼儀や何を言ったら怒られるのかも気を使いながら話さないといけないと思うと当たり障りのない相づちぐらいしかできなかった。そして全て自分にはどうでも良い話だった。

「美日下」 

「はい」

「今のところ俺を信じれるか?」

「……何をですか?」

「最悪の最善にしたるいうたら?」

「?」

「つまり、悪いようにはせえへんって言うことやけど。けど悪い事が起きないわけやないから悪い中のまだましみたいな」

「…はい」

「けど、結局悪い事があるからその辺が難しいんやけど。その悪いの乗り越えるようになって欲しい」

「…はい」

「ヤクザ信じんのは難しいから俺を最後は神頼みぐらいには思っててくれんか?」

「……は…ぃ」

 よくわからなかったがこの人とのラインができた気がした。少なくともあの加成というヤクザよりはましでヤクザの中でも悪い人ではないかもしれないと。けどそんな事はわからない。所詮、ヤクザはヤクザだからとも思った。

 斎藤と別れると壊れたブレスレットを治す道具を買って家に帰宅した。幸い簡単に治せたのと壊れそうな部分を補強できた。


ヴヴ ヴヴ

 メールを見ると斎藤からであの動画から切り抜いた写真をハートマーク付で送られてきた。

「最低だ」
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