7 / 109
一部
七夜
しおりを挟む
あの後、美日下は熱を出した。
体の痛みやいろんな気持ちが押し寄せ肉体的にも精神的にも限界がきていた。気がついた時には何時間も経っていて斎藤もいなくなっていた。時折知らない人が代わるがわる様子を見に来ていたがそれも夢うつつだった。それが二日続き三日目に熱が引くと体調も回復に向かっていった。
ノックが聞こえ重い体を起こすと男が入ってきた。
「大丈夫か?」
組員だろうか、体格の良い男が水をもってきてくれた。この人はぐったりするなか服を変えてくれたり何度か様子を見に来ていた一人。
「はい…」
「水分はたくさんとれよ、何か欲しいものあるか?」
「シャワーとか浴びれたりしますか?」
「わかった」
男は出ていくとすぐに戻りこっちだと言って案内してくれた。
「何かあったら呼べ。これ、タオルと服。脱いだら洗濯機にいれればいいから」
「はい」
そう言い脱衣所から出ていくとシャワーを借りた。壁にはお風呂は20分以内と書かれていた。湯船にお湯はあったが入る気になれず熱いシャワーを浴び続けた。傷が滲みたが気持ち良かった。体をしっかり洗い綺麗に拭き取るとさっぱりした。着替えも一式新しいのが用意されていた。脱衣所から出るとさっきの男と目があった。
「ありがとうございました」
一声かけて部屋に行くと布団が綺麗に直されていた。溜め息と共にベッドに倒れた。
明日からの事を考えると憂鬱でしかなった。体はどんどん治っていくし今の自分の立場もわからずでこのまま治らないほうがマシかもしれない、と考えていた。
コンコン
「入るぞ」
男の声がしてベッドから飛び起きた。寝ていたら叱られるのではとびくびくした。
「はい」
「傷の手当てまだだろ?また悪化する前に消毒するから脱げ」
「はい、ありがとうございます」
上を脱ぐと確かにまだ治っておらず血が滲み出していた。そんな事どうでも良くなっていたが気にしていなかっただけに言われてだんだん痛くなった。
手際良く手当てをしてくれる男は見かけによらず何でもできそうだった。食べれなかったが料理も恐らくこの人が作って持ってきたんだと思う。腕には沢山の切り傷があった。
「若いし、この傷は残らんと思う。良かったな」
「そうですか」
「もう少し深いと残るけどな」
「…そうですか」
「水分とれ。腹も空かないかもしれないが少しだけでも食っとけ」
「はい。あの…この部屋にいていいんですか?」
「とりあえずはな。斎藤さんから出てけって言われるまではいていい。明日体調が良くなったら説明するけどここでは共同生活になる」
「……はい」
「したことないとキツいけどもっとキツいことやらされたくなかったら我慢しろ。他に比べたらどおってことない」
「俺は何をするか聞いてますか?」
「知らん。斎藤さんに聞いたらいい。それよりこの生活に慣れることが先決。できた」
「ありがとうございました」
「一つだけ、今の現実を受け止めろ。理不尽でも何でもここへ来たからには受け止めろ」
「……。」
男は出ていった。男の重みのある言葉に心はか細くなった。明日になるのがこんなにも嫌だと思った事はなかった。
逃げて逃げて逃げきればここから抜け出せるかもしれない。でも、もし途中で捕まれば終わる。
終わったらどうなるんだろ…
寝ていたが深夜にトイレに行きたくなり部屋に行くとさっきの男と別の男がリビングにいた。男に逃げたいと話したら…と考えながらトイレから出てくると男が話しかけてきた。
「お前も飲むか?」
カップを見せられたが首を振った。
「神谷さん、病人にそれは無理ですよ」
「そうか?」
「当たり前ですよ。コーヒーなんて逆に気持ち悪くなります」
「なら駄目か。悪い悪い」
「水だと飽きるし、ジュースなら冷蔵庫にあるけど。っていっても初めは勝手に飲みにくいよな。ちょっと待って」
戻ろうとしたらもう一人の男が冷蔵庫に行くと何やら探していた。そうしたら神谷と呼ばれるさっきの男もやってきた。
「なんだ、冷てぇのあげんのか?温かいのにしろよ、怪我人で病人だろ?」
「コーヒーあげる人に言われたくないです」
キッチンでガチャガチャとしている二人。
「「はい」」
一人はジュースを一人は温かいホットレモンを出してくれた。どっちを先にもらうか迷った。これはある意味究極の選択なのでは。どちらかをとればどちらかを傷つけてしまう。喧嘩とかになったりしないだろうか…二人の無言の圧がかかった。
「ありがとうございます」
喧嘩にならないよう同時に両方をもらった。
「あの、温かいの飲みたいんですけど冷めるまで冷たいの先に貰います」
一言言って冷たいのを飲んだ。
「ほら~ジュースじゃないですか」
「聞いてなかったのか?温かいの飲みたいんですけどって。本当はこっち先に飲みたいって意味だよ」
「飲んだのはジュースです」
「欲しいのはホットレモンだ」
結局二人はやいやい言っていた。それから今度は少しは食えとご飯を作り始めた。雑炊にうどん、消化の良いスープ。どれも自分の為にしてくれた。どれを一番に食べるか見られている。
神谷という男が出してくれたのから食べたら満足げだった。全部は無理だったが二人は喜んでいた。食べながら二人は身の上話をしてくれた。
「え、ヤクザじゃないんですか?」
「まぁ、そうなんだけど」
「オーナーがヤクザってだけだ。あ、俺らは元ヤクザな」
ここは斎藤が経営する風俗の従業員社宅。今は三人で住んでいてこの二人は店の売上管理と用心棒もかねているそうだ。店長の上のマネージャーみたいなものらしい。
ヤクザ業から足を洗いここへ来たらしいけど違法風俗ではなくちゃんとした経営の風俗だと言った。基本的には斎藤のお店は全部表向きはクリーンで、ただ、借金が多きすぎる人など何らかのブラックリストにのっている人があっちにいくのだとか…
初めて斎藤の生業を知った。お金を取り立てたり脅して取るとか犯罪ばかりとだ思っていただけに意外な一面だった。
「俺より一回り以上も年が下だがめちゃくちゃやり手だな斎藤さんは。俺はヤクザやってる時に出会ってのしあがろう思ってたが斎藤さん見てたら俺には無理だと感じた。後は年功序列やら暴力でしか片付かんから…メンツなんてのが一番厄介で嫌いだったからもうちょい楽に稼ぎたい思って足洗った」
「斎藤さんは年期が違いますからね。俺はいつの間にかここに来てた感じです。斎藤さんの下についてなかったら足も洗えない中途半端なので終わってたと思います」
「そうですか…」
「君が何でここ来たか知らんがここにきた奴は全員何かあってきてる。皆事情はあるし、大変だけどとりあえずご飯は食える」
「徐々に慣れたらいいから。考えると辛いことが多いから目の前の事を片付けいくしかないよね、神谷さん」
「そうだな」
二人は何もかも察するように話した。まだ体はダルかったがご飯を作ってくれた二人にお礼もかね食器を洗うのを手伝った。
お茶を用意して一息つくとソファーで二人は談笑していた。お前も座れと言われ話を聞いていたが途中までしか覚えてなかった。薬が効いていたのか体がまだ回復してないのかいつの間にか眠っていた。
「っ…」
「痛むんか?」
「ぅっ…」
「掻いたらあかん、酷なるから…」
「ッ…やめて…」
「……。」
「……ッ…やめ…いや…」
「……美日下、すまん」
夢で会った男は何度も何度も謝りずっと俺から離れなかった。
体の痛みやいろんな気持ちが押し寄せ肉体的にも精神的にも限界がきていた。気がついた時には何時間も経っていて斎藤もいなくなっていた。時折知らない人が代わるがわる様子を見に来ていたがそれも夢うつつだった。それが二日続き三日目に熱が引くと体調も回復に向かっていった。
ノックが聞こえ重い体を起こすと男が入ってきた。
「大丈夫か?」
組員だろうか、体格の良い男が水をもってきてくれた。この人はぐったりするなか服を変えてくれたり何度か様子を見に来ていた一人。
「はい…」
「水分はたくさんとれよ、何か欲しいものあるか?」
「シャワーとか浴びれたりしますか?」
「わかった」
男は出ていくとすぐに戻りこっちだと言って案内してくれた。
「何かあったら呼べ。これ、タオルと服。脱いだら洗濯機にいれればいいから」
「はい」
そう言い脱衣所から出ていくとシャワーを借りた。壁にはお風呂は20分以内と書かれていた。湯船にお湯はあったが入る気になれず熱いシャワーを浴び続けた。傷が滲みたが気持ち良かった。体をしっかり洗い綺麗に拭き取るとさっぱりした。着替えも一式新しいのが用意されていた。脱衣所から出るとさっきの男と目があった。
「ありがとうございました」
一声かけて部屋に行くと布団が綺麗に直されていた。溜め息と共にベッドに倒れた。
明日からの事を考えると憂鬱でしかなった。体はどんどん治っていくし今の自分の立場もわからずでこのまま治らないほうがマシかもしれない、と考えていた。
コンコン
「入るぞ」
男の声がしてベッドから飛び起きた。寝ていたら叱られるのではとびくびくした。
「はい」
「傷の手当てまだだろ?また悪化する前に消毒するから脱げ」
「はい、ありがとうございます」
上を脱ぐと確かにまだ治っておらず血が滲み出していた。そんな事どうでも良くなっていたが気にしていなかっただけに言われてだんだん痛くなった。
手際良く手当てをしてくれる男は見かけによらず何でもできそうだった。食べれなかったが料理も恐らくこの人が作って持ってきたんだと思う。腕には沢山の切り傷があった。
「若いし、この傷は残らんと思う。良かったな」
「そうですか」
「もう少し深いと残るけどな」
「…そうですか」
「水分とれ。腹も空かないかもしれないが少しだけでも食っとけ」
「はい。あの…この部屋にいていいんですか?」
「とりあえずはな。斎藤さんから出てけって言われるまではいていい。明日体調が良くなったら説明するけどここでは共同生活になる」
「……はい」
「したことないとキツいけどもっとキツいことやらされたくなかったら我慢しろ。他に比べたらどおってことない」
「俺は何をするか聞いてますか?」
「知らん。斎藤さんに聞いたらいい。それよりこの生活に慣れることが先決。できた」
「ありがとうございました」
「一つだけ、今の現実を受け止めろ。理不尽でも何でもここへ来たからには受け止めろ」
「……。」
男は出ていった。男の重みのある言葉に心はか細くなった。明日になるのがこんなにも嫌だと思った事はなかった。
逃げて逃げて逃げきればここから抜け出せるかもしれない。でも、もし途中で捕まれば終わる。
終わったらどうなるんだろ…
寝ていたが深夜にトイレに行きたくなり部屋に行くとさっきの男と別の男がリビングにいた。男に逃げたいと話したら…と考えながらトイレから出てくると男が話しかけてきた。
「お前も飲むか?」
カップを見せられたが首を振った。
「神谷さん、病人にそれは無理ですよ」
「そうか?」
「当たり前ですよ。コーヒーなんて逆に気持ち悪くなります」
「なら駄目か。悪い悪い」
「水だと飽きるし、ジュースなら冷蔵庫にあるけど。っていっても初めは勝手に飲みにくいよな。ちょっと待って」
戻ろうとしたらもう一人の男が冷蔵庫に行くと何やら探していた。そうしたら神谷と呼ばれるさっきの男もやってきた。
「なんだ、冷てぇのあげんのか?温かいのにしろよ、怪我人で病人だろ?」
「コーヒーあげる人に言われたくないです」
キッチンでガチャガチャとしている二人。
「「はい」」
一人はジュースを一人は温かいホットレモンを出してくれた。どっちを先にもらうか迷った。これはある意味究極の選択なのでは。どちらかをとればどちらかを傷つけてしまう。喧嘩とかになったりしないだろうか…二人の無言の圧がかかった。
「ありがとうございます」
喧嘩にならないよう同時に両方をもらった。
「あの、温かいの飲みたいんですけど冷めるまで冷たいの先に貰います」
一言言って冷たいのを飲んだ。
「ほら~ジュースじゃないですか」
「聞いてなかったのか?温かいの飲みたいんですけどって。本当はこっち先に飲みたいって意味だよ」
「飲んだのはジュースです」
「欲しいのはホットレモンだ」
結局二人はやいやい言っていた。それから今度は少しは食えとご飯を作り始めた。雑炊にうどん、消化の良いスープ。どれも自分の為にしてくれた。どれを一番に食べるか見られている。
神谷という男が出してくれたのから食べたら満足げだった。全部は無理だったが二人は喜んでいた。食べながら二人は身の上話をしてくれた。
「え、ヤクザじゃないんですか?」
「まぁ、そうなんだけど」
「オーナーがヤクザってだけだ。あ、俺らは元ヤクザな」
ここは斎藤が経営する風俗の従業員社宅。今は三人で住んでいてこの二人は店の売上管理と用心棒もかねているそうだ。店長の上のマネージャーみたいなものらしい。
ヤクザ業から足を洗いここへ来たらしいけど違法風俗ではなくちゃんとした経営の風俗だと言った。基本的には斎藤のお店は全部表向きはクリーンで、ただ、借金が多きすぎる人など何らかのブラックリストにのっている人があっちにいくのだとか…
初めて斎藤の生業を知った。お金を取り立てたり脅して取るとか犯罪ばかりとだ思っていただけに意外な一面だった。
「俺より一回り以上も年が下だがめちゃくちゃやり手だな斎藤さんは。俺はヤクザやってる時に出会ってのしあがろう思ってたが斎藤さん見てたら俺には無理だと感じた。後は年功序列やら暴力でしか片付かんから…メンツなんてのが一番厄介で嫌いだったからもうちょい楽に稼ぎたい思って足洗った」
「斎藤さんは年期が違いますからね。俺はいつの間にかここに来てた感じです。斎藤さんの下についてなかったら足も洗えない中途半端なので終わってたと思います」
「そうですか…」
「君が何でここ来たか知らんがここにきた奴は全員何かあってきてる。皆事情はあるし、大変だけどとりあえずご飯は食える」
「徐々に慣れたらいいから。考えると辛いことが多いから目の前の事を片付けいくしかないよね、神谷さん」
「そうだな」
二人は何もかも察するように話した。まだ体はダルかったがご飯を作ってくれた二人にお礼もかね食器を洗うのを手伝った。
お茶を用意して一息つくとソファーで二人は談笑していた。お前も座れと言われ話を聞いていたが途中までしか覚えてなかった。薬が効いていたのか体がまだ回復してないのかいつの間にか眠っていた。
「っ…」
「痛むんか?」
「ぅっ…」
「掻いたらあかん、酷なるから…」
「ッ…やめて…」
「……。」
「……ッ…やめ…いや…」
「……美日下、すまん」
夢で会った男は何度も何度も謝りずっと俺から離れなかった。
21
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる