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連載
248.
ソフィアちゃんたちご家族にお見送りをしてもらって、私はフィン侯爵領を離れた。
乗るのはソフィアちゃんのお家が所有する飛行船だ。
向かう先は、リンクスくんのご実家だ。
だらだらと空の旅を過ごさせてもらってしばらく。飛行船は半日もせずに地上に降り立った。
窓からはソフィアちゃんのお家に負けてない、大きなお屋敷が見える。きっとリンクスくんのご実家だろう。
私は何もない平原に降りたたかなかったことに、とりあえず感謝した。
のっそりゆっくりと飛空船のデッキにでると、懐かしいリンクスくんの姿が見えた。
どうやら家も近いのに、迎えに来てくれたみたい。
「リンクスくんやー!」
「うわあっ!?」
私は甲板を降りると、そのままリンクスくんに飛びついた。
「急に飛びついてくるなよ!」
びっくりしたのか顔を真っ赤にして叫ぶリンクスくんに、私はにんまりと微笑みながら言った。
「いやね……歩けないんですよ……」
私の脚はリンクスくんの体を支えにしても尚、ガクガクと震え、そうしてるだけで全身から汗が流れでてくる。
「はあ!? なんでそんな状態になってるんだよ!」
「それがね。ソフィアちゃんのお家で一週間、健康生活を送らされたらね」
この世界に転生した私は、アクティブに動き回る時期もあったけど、本を読んだりしてベッドやソファでダラダラ過ごす日の方が多かった。前世だって、基本的にはインドア派だったのだ。特定のイベントでは、はりきったりしてたけど……
そんな私が健康優良児たるソフィアちゃんの家で過ごしたのだから、たまらない。
初日みたいな無茶な運動はさせられなかったけど、きっちりと健康的な生活を送らされてしまった。
その負担が、ここにきて一気に来たのである。
「こうなってしまったよ」
「なんでそうなるんだよ……いや、なんか察した」
リンクスくんは最終的にはわかってくれたようで、寄りかかる私を受け入れてくれた。
「あれがリンクスくんのご実家ですか?」
私がぷるぷる震える指で、見えていた大きなお屋敷を指差すと、リンクスくんは頷いた。
「ああ、そうだ。道中は支えてやるから、家に向かうぞ。とりあえず家に着いたら、休ませてやれるから」
リンクスくんの手が恐る恐るといった感じで、私の肩を掴んで支えてくれる。
私は「優しい子になったね」とハンカチを取り出して、こぼれてきた涙を拭った。
それからリンクスくんに支えられて、徒歩5分ほど、お屋敷にたどり着いた。
門を潜ると、向こうから小さな男の子が走ってきた。
私はその姿を見て目を見開くことはできなかったので、細い目を精一杯びっくりさせた。
「ちっちゃなリンクスくんがいるーーー!」
その男の子は赤い髪をしていて、強気そうな目つきをしていて、ちっちゃい頃のリンクスくんにそっくりだったのだ。ちっちゃなリンクスくんは私を見ると、不審そうに目を眇めた。
「リンクス兄さま! 誰なんです、こいつは!」
私はその言葉にさらに衝撃を受けた。
リンクス兄さま!? ということは……この子……もしかして……!
細い目でじーーーーーっと睨むと、リンクスくんが気まずそうに顔を逸らした。
「いや……何か……言い出しにくくて……」
確定である!
リンクスくんの弟だ、この子!
そりゃ、一緒に暮らしてもう五年以上経ってるのだ。年下の子が生まれてもおかしくない年月ではあったけれど。でも、そういった予測がまったく抜け落ちていたせいか、ガーンとショックを受けてしまった。
しかもしかも、当のリンクスくんからは教えてもらえてなかったし……
「ほら、エトワ様は俺たちを家族みたいに思ってくれてるだろ。だから、教えたらショック受けそうだなって思うと……」
それは図星である。現に今ショックを受けてる。でもでも。
「教えてくれなかったのはもっとショックです……」
思わず敬語になってしまった。リンクスくんに今まで感じなかった心の距離を感じる……
目尻に涙を浮かべた私に、リンクスくんが焦る。
「いや、わるかったって! ごめん!」
「えっ、あれっ……? というか、このこと知らなかったのってもしかして私だけですか……?」
冷静に考えて、侯爵家に次男が生まれてるのである。
情報の伝わりやすい貴族社会でソフィアちゃんたちが知らないはずがない。
「いや、まあ、たぶん……あいつらは知ってるだろうなあ……特に話したことはないけど」
リンクスくんは頬をかきながらそれを肯定した。
つまり、私だけ情報から隔離されていたわけだ。リンクスくんに弟が生まれたという重大な情報から……
「うっ……うう……」
「だ、だから泣くなって! 本当に、本当に俺が悪かったから!」
涙をこぼす私に、リンクスくんも本当に困った顔をして手を合わせ必死に謝ってくれた。
「兄さまあああ! 誰なんですかあああ! こいつー!」
二人だけのやりとりに忙しくて、小リンクスくんを放置してしまっていた。
そのことに我慢の限界にきたのか、小リンクスくんの高い声が響いた。
私は慌てて涙を止めて、ふらふらする体を起こして、小リンクスくんの前に立った。
泣いてる場合ではない。失った年月のブランクを取り戻さねば……!
「自己紹介が遅れました。私はエトワと申すものです。リンクスくんにとってはお姉さんみたいな存在です」
「それは違うけどな……」
リンクスくんはプイッとそっぽをむいて、拗ねたように唇を尖らせた。
ふふふ、照れなくてもいいのに。
「君もエトワお姉さんって呼んでくれていいんですよ?」
「俺は一回もそんな風に呼んだことないけどな……」
私は精一杯、お姉さんっぽい笑みを浮かべて、小リンクスくんにそう言った。
小リンクスくんは私を見上げ、しばし沈黙すると。
「…………絶対にヤダ!」
口を逆三角形に開いて、キッパリと断ってきた。
※あとがき
小リンクスくんの登場は、読者さん的に収まりがわるい気持ちになるかなって思って、ずっと登場させるか迷ってました。あんまり不快なキャラにならないよう気をつけて書いていきたいです。
あとクリュートくんとミントくんのご実家エピソードが広がらないから、ダイジェストになったり飛ばしたりしたらごめんなさい。
乗るのはソフィアちゃんのお家が所有する飛行船だ。
向かう先は、リンクスくんのご実家だ。
だらだらと空の旅を過ごさせてもらってしばらく。飛行船は半日もせずに地上に降り立った。
窓からはソフィアちゃんのお家に負けてない、大きなお屋敷が見える。きっとリンクスくんのご実家だろう。
私は何もない平原に降りたたかなかったことに、とりあえず感謝した。
のっそりゆっくりと飛空船のデッキにでると、懐かしいリンクスくんの姿が見えた。
どうやら家も近いのに、迎えに来てくれたみたい。
「リンクスくんやー!」
「うわあっ!?」
私は甲板を降りると、そのままリンクスくんに飛びついた。
「急に飛びついてくるなよ!」
びっくりしたのか顔を真っ赤にして叫ぶリンクスくんに、私はにんまりと微笑みながら言った。
「いやね……歩けないんですよ……」
私の脚はリンクスくんの体を支えにしても尚、ガクガクと震え、そうしてるだけで全身から汗が流れでてくる。
「はあ!? なんでそんな状態になってるんだよ!」
「それがね。ソフィアちゃんのお家で一週間、健康生活を送らされたらね」
この世界に転生した私は、アクティブに動き回る時期もあったけど、本を読んだりしてベッドやソファでダラダラ過ごす日の方が多かった。前世だって、基本的にはインドア派だったのだ。特定のイベントでは、はりきったりしてたけど……
そんな私が健康優良児たるソフィアちゃんの家で過ごしたのだから、たまらない。
初日みたいな無茶な運動はさせられなかったけど、きっちりと健康的な生活を送らされてしまった。
その負担が、ここにきて一気に来たのである。
「こうなってしまったよ」
「なんでそうなるんだよ……いや、なんか察した」
リンクスくんは最終的にはわかってくれたようで、寄りかかる私を受け入れてくれた。
「あれがリンクスくんのご実家ですか?」
私がぷるぷる震える指で、見えていた大きなお屋敷を指差すと、リンクスくんは頷いた。
「ああ、そうだ。道中は支えてやるから、家に向かうぞ。とりあえず家に着いたら、休ませてやれるから」
リンクスくんの手が恐る恐るといった感じで、私の肩を掴んで支えてくれる。
私は「優しい子になったね」とハンカチを取り出して、こぼれてきた涙を拭った。
それからリンクスくんに支えられて、徒歩5分ほど、お屋敷にたどり着いた。
門を潜ると、向こうから小さな男の子が走ってきた。
私はその姿を見て目を見開くことはできなかったので、細い目を精一杯びっくりさせた。
「ちっちゃなリンクスくんがいるーーー!」
その男の子は赤い髪をしていて、強気そうな目つきをしていて、ちっちゃい頃のリンクスくんにそっくりだったのだ。ちっちゃなリンクスくんは私を見ると、不審そうに目を眇めた。
「リンクス兄さま! 誰なんです、こいつは!」
私はその言葉にさらに衝撃を受けた。
リンクス兄さま!? ということは……この子……もしかして……!
細い目でじーーーーーっと睨むと、リンクスくんが気まずそうに顔を逸らした。
「いや……何か……言い出しにくくて……」
確定である!
リンクスくんの弟だ、この子!
そりゃ、一緒に暮らしてもう五年以上経ってるのだ。年下の子が生まれてもおかしくない年月ではあったけれど。でも、そういった予測がまったく抜け落ちていたせいか、ガーンとショックを受けてしまった。
しかもしかも、当のリンクスくんからは教えてもらえてなかったし……
「ほら、エトワ様は俺たちを家族みたいに思ってくれてるだろ。だから、教えたらショック受けそうだなって思うと……」
それは図星である。現に今ショックを受けてる。でもでも。
「教えてくれなかったのはもっとショックです……」
思わず敬語になってしまった。リンクスくんに今まで感じなかった心の距離を感じる……
目尻に涙を浮かべた私に、リンクスくんが焦る。
「いや、わるかったって! ごめん!」
「えっ、あれっ……? というか、このこと知らなかったのってもしかして私だけですか……?」
冷静に考えて、侯爵家に次男が生まれてるのである。
情報の伝わりやすい貴族社会でソフィアちゃんたちが知らないはずがない。
「いや、まあ、たぶん……あいつらは知ってるだろうなあ……特に話したことはないけど」
リンクスくんは頬をかきながらそれを肯定した。
つまり、私だけ情報から隔離されていたわけだ。リンクスくんに弟が生まれたという重大な情報から……
「うっ……うう……」
「だ、だから泣くなって! 本当に、本当に俺が悪かったから!」
涙をこぼす私に、リンクスくんも本当に困った顔をして手を合わせ必死に謝ってくれた。
「兄さまあああ! 誰なんですかあああ! こいつー!」
二人だけのやりとりに忙しくて、小リンクスくんを放置してしまっていた。
そのことに我慢の限界にきたのか、小リンクスくんの高い声が響いた。
私は慌てて涙を止めて、ふらふらする体を起こして、小リンクスくんの前に立った。
泣いてる場合ではない。失った年月のブランクを取り戻さねば……!
「自己紹介が遅れました。私はエトワと申すものです。リンクスくんにとってはお姉さんみたいな存在です」
「それは違うけどな……」
リンクスくんはプイッとそっぽをむいて、拗ねたように唇を尖らせた。
ふふふ、照れなくてもいいのに。
「君もエトワお姉さんって呼んでくれていいんですよ?」
「俺は一回もそんな風に呼んだことないけどな……」
私は精一杯、お姉さんっぽい笑みを浮かべて、小リンクスくんにそう言った。
小リンクスくんは私を見上げ、しばし沈黙すると。
「…………絶対にヤダ!」
口を逆三角形に開いて、キッパリと断ってきた。
※あとがき
小リンクスくんの登場は、読者さん的に収まりがわるい気持ちになるかなって思って、ずっと登場させるか迷ってました。あんまり不快なキャラにならないよう気をつけて書いていきたいです。
あとクリュートくんとミントくんのご実家エピソードが広がらないから、ダイジェストになったり飛ばしたりしたらごめんなさい。
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