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連載
252.
リンクスくんの家にお世話になって、五日が経とうとしていた。
コーラルさんは優しいし、フェーリスくんはかわいいし、リンクスくんとはもはや家族同然!
私たちは平穏に過ごしていた。
そんな私たちのもとに事件が舞い込んだのは、そんな折だった。
「子供が行方不明ですか……」
「はい、昨日の昼ごろ、三人の子供が山に遊びに行ったっきり帰ってこないんです」
近くの町の代表を名乗る人が、コーラルさんのお屋敷にやってきたのだ。
コーラルさんは丁寧な対応でその人を迎えると、真剣な表情で話を聞きはじめた。
「どこらへんで行方不明になったかわかりますか?」
「別の子供たちの話では遺跡の方に向かっていたのを見たと……」
「なるほど、それで私のとこに来たんですね」
「申し訳ありません。コーラル様が立ち入り禁止にしているというのは、子供たちにも伝えておいたのですが……」
リンクスくんのご実家、スカーレット侯爵家の領地一帯には遺跡がたくさんあるらしい。
ほとんどの遺跡は調査によって安全が確認されているものだけど、一応、何かあったらということで一般人の立ち入りは禁止されていた。
「いえ、私たちもあの遺跡については安全なものだと思い込んでいて、特に警備などはせずに、町の人にも注意するのにとどめていました。油断していたのは私たちも一緒です。とにかく、今は子供たちを探すのに全力を尽くしましょう。怪我などしてなければいいのですが」
そういうと、コーラルさんはすぐに人を集めて捜索隊を結成した。
使用人の中でも遺跡の知識があり魔法を使える人たち、それからこの地方に駐留している騎士の人たちだ。
こういうトラブルのときって、映画とかだとなかなか上の人が動いてくれなかったりするけど、コーラルさんの対応は真逆だ。
町の人の相談にも親身になってくれて、すぐに対応してくれて、本当に頼りになる感じ。
準備を終えたフェーリスさんは、傍観していたわたしたちの方へ振り向いた。
「私たちはすぐに捜索に向かいます。リンクスはエトワさまとフェーリスを見てあげてください」
魔法の腕だけなら大人顔負けのリンクスくんとフェーリスくんだけど、年齢はまだまだ子供である。
行方不明になった子供の捜索では戦力外通告だ。
まあ同じく私も戦力外なわけだけど。
「「はい」」
私とリンクスくんは大人しく頷いた。
***
コーラルさんがいなくなると、フェーリスくんが言った。
「兄さま、僕たちも子供たちを探しに行きましょう!」
先ほどフェーリスくんだけ返事をしなかったのは、そういうわけだ。
「いやいや、だめだよ~。コーラルさんから留守番しててって言われたでしょ?」
私は手を振って、フェーリスくんにそれはダメだと伝える。
いなくなった子供を心配するのはいいことだけど、私たちは家にいるように言われたわけである。
貴族の子は、普通の子供に比べて大人びている。
だけど、子供っぽいところはやっぱり子供だし、経験不足から大人ではやらないようなミスもしてしまう。
決して絶対的な差ではないのだ。
行方不明で一番防がなければならないのは、探してる側も行方不明になってしまう二次被害である。
子供が子供を探せば、当然その危険性が増してしまう。
今回の私たちの扱いは、あくまで行方不明になった子たちと同じ子供なのである。
「でも、兄さまと僕は魔法が使えるし!」
「魔法はすごい力だけど、捜索に必ずしも役に立つわけではないでしょ?」
「力だってある! 視力だってすごくいい!」
「確かに魔力のある人は力も感覚も人より優れてるかもしれないけれど、あくまで普通の人の延長でしかないんだよ。どこに行っちゃったのかわからない子を捜索するのって、とっても難しいことだから、役に立てるとは限らないよ」
「ぐぅ……! なら、なおさら人は多い方がいいだろ! そ、それにお前こそ、今回役に立つ力を持ってるじゃん!」
むぅ、確かに私こそ、今回役に立つ力をもってる人物である。
心眼ほど、行方不明の捜索に便利な力はないだろう。リンクスくんたちは感覚が優れているといっても、障害物などで視界を防がれてしまう。
でも私はその気になれば、周囲一帯の状況を把握できてしまう。
だから実を言うと、状況が落ち着いたらこっそり探しに行こうかなあ、なんて思っていたわけだけど、フェーリスくんがここまで前のめりになってしまった以上、先に止めなければいけない。
それにフェーリスくんの言うことも完全に間違ってるわけではないのだ。
捜索の人数は多い方がいい。
リンクスくんやフェーリスくんのような移動力に優れた魔法が使える人間がいれば助かるだろう。
ただ今回はその能力と、子供であることを天秤にかけられて、子供として安全に扱うことが優先されただけだ。
「フェーリス、ダメだ。父上からも言われただろう」
さて、なんて説得しようと思っていたら、強い口調で止めにはいったのはリンクスくんだった。
「な、なんで兄さままで……!」
敬愛する兄上にまで、反対されるとは思ってなかったのか、フェーリスくんはショックで目を見開いた。
「子供たちが行方不明になってるんですよ! 兄さまは言ってたじゃないですか、領民を守るのが貴族に生まれた人間の務めだって!」
「なんと言おうと絶対にダメだ。いくらそれらしい理屈を捏ねようと、勝手な行動をするのなら、それはただのワガママだ。大人しく家にいろ」
予想外に厳しい言葉を投げられて、フェーリスくんは涙目になった。
「兄さまのバカ! わからずや!」
そのまま自分の部屋に走って入って、閉じこもってしまった。
フェーリスくんが閉じこもった部屋を見て、リンクスくんはため息をつく。
リンクスくんはフェーリスくんに対して、いつも優しいお兄ちゃんだった。実家で過ごしている間も、優しく愛情をもって接しているのが伝わってきた。
でも、今回のリンクスくんはいつになく厳しい口調で、フェーリスくんに注意してしまっていた。
もしかしたら、遺跡でのあの事件が頭をよぎってしまったのかもしれない。
***
夜、フェーリスくんは泣きじゃくりながら、荷物の準備をしていた。
大好きな兄さまと喧嘩になったのは、本人にとってもショックなことだったのだろう。
「兄さまのバカ……臆病者……。なんでわかってくれないんですか……。兄さまを尊敬しているからこそ、僕は子供たちを探そうと思ったのに……」
フェーリスくんとしても今回の主張は、純粋にいなくなった子供たちを心配してのことだったのだろう。
だから、尊敬する兄さまもそれに同意してくれると思っていたのだ。
「もういいです。僕だけでも行きます」
そういって、フェーリスくんは私たちに見つからないように、窓から庭に降り立った。
そこには……
「やっぱりリンクスくんの弟だねぇ。一度、決めたらてこでも動かないよ」
「あの時の俺は本当にワガママで遺跡に入ろうとしただけだ。フェーリスとは違うよ」
「やや、そういう話じゃなくてね」
ため息をつくリンクスくんとおまけの私が、フェーリスくんの前にいた。
「兄さま、エトワ、なんで……!」
「お前のやることなんてお見通しだ。兄だからな」
「私もお姉ちゃんですから」
リンクスくんは優しい目でフェーリスくんを見て言った。
「遺跡の周りを見て回るだけだぞ。危険がありそうな場所へは入らない。それでもいいなら行こう」
その言葉に、フェーリスくんは泣きそうな瞳で頷いた。
「はい、リンクス兄さま!」
私もお姉ちゃんですから!
***
子供たちが行方不明となった遺跡の前には誰もいなかった。
おそらく中を捜索しているのだろう。
フェーリスくんは10分ほど周辺の森を探索したあと『帰ろう』と、私たちに告げた。
「もういいのか?」
もうちょっと。フェーリスくんが満足するまでの間は、付き合うつもりだった私たちは驚いた。
「はい、実際にやってみて、あんまり役に立てないことはわかったし。それに……意地になっちゃってたみたいです、ごめんなさい」
リンクスくんが一歩譲ったことで、フェーリスくんも素直になれたみたいだ。
少しだけど行動できたこともあって、満足そうな顔で帰路につく。
そんなフェーリスくんの後ろを、私とリンクスくんも並んで歩く。
「ふふふ、すっかりお兄ちゃんって感じだね、リンクスくん」
「なんだよ、それ、からかってるのか」
少し照れながら不機嫌そうにするリンクスくん。
「いやいや、そうじゃなくて。フェーリスくんが危険な行動しようとしたとき止めようとしたのも立派だし、そこからフェーリスくんも納得できるように譲れるのも本当に立派なことだよ」
「俺はそんなに立派な人間じゃないよ、いつも失敗ばかりだ。今回も自分に嫌な思い出があるからって、フェーリスにまで押し付けようとしてしまった……」
「嫌な思い出って……あの遺跡でのこと?」
「ああ……」
リンクスくんは暗い表情をした。
いろんなタイミングで思い知る。リンクスくんが、まだあの遺跡で起こした事件のことを悔いていることを。
ルヴェンドで一緒に暮らしている時も、リンクスくんの実家に来てからも。
でも、今のリンクスくんは本当に立派だ。あの時のことを反省して、周りの人を守り、優しくできる人になった。
こうして弟からもとっても慕われる立派なお兄ちゃんに。
だから、リンクスくんもそろそろ自分のことを許してあげてもいいと思うのだ。
私はリンクスくんの肩をポンと叩く。
リンクスくんのきれいな赤い瞳が私を見つめた。
「エトワ……さま……?」
「リンクスくん、私が言ったからってリンクスくんがそう思えるかはわからないけど、言っておくね」
私はリンクスくんに少しでもこの言葉が届けばいいとおもって、彼の前に立って言葉を続ける。
「リンクスくんは本当に立派な人になっていってるよ。どんどんかっこよくて、強くて、優しくて、魅力的な人になっていってる。ずっとずっと傍で見てきたからわかるよ」
ふと見上げた月が、とっても綺麗な夜だった。
私は気分が乗って、その場でくるりと一回、回ってみせる。
「今のリンクスくんなら、前と同じことがあったって、きっと私たちのことを守ってくれる。私はそう思って」
私の一周回った足が地面に着地して。
カチッ
ん、かちっ?
「お、おい、エトワ、足元!」
「なんだぁーその光!」
「るー!?」
地面に突如、浮かび上がった魔法陣。その光を浴びて一瞬あと、私の前に広がるのは見慣れない大きな湖でした。
リンクスくんとフェーリスくんの姿は影も形もありません。
『どうやら遺跡の装置によって、転送されたようだ』
頭の中の天輝さんが教えてくれる。
はい、無事、二次遭難いたしました。
コーラルさんは優しいし、フェーリスくんはかわいいし、リンクスくんとはもはや家族同然!
私たちは平穏に過ごしていた。
そんな私たちのもとに事件が舞い込んだのは、そんな折だった。
「子供が行方不明ですか……」
「はい、昨日の昼ごろ、三人の子供が山に遊びに行ったっきり帰ってこないんです」
近くの町の代表を名乗る人が、コーラルさんのお屋敷にやってきたのだ。
コーラルさんは丁寧な対応でその人を迎えると、真剣な表情で話を聞きはじめた。
「どこらへんで行方不明になったかわかりますか?」
「別の子供たちの話では遺跡の方に向かっていたのを見たと……」
「なるほど、それで私のとこに来たんですね」
「申し訳ありません。コーラル様が立ち入り禁止にしているというのは、子供たちにも伝えておいたのですが……」
リンクスくんのご実家、スカーレット侯爵家の領地一帯には遺跡がたくさんあるらしい。
ほとんどの遺跡は調査によって安全が確認されているものだけど、一応、何かあったらということで一般人の立ち入りは禁止されていた。
「いえ、私たちもあの遺跡については安全なものだと思い込んでいて、特に警備などはせずに、町の人にも注意するのにとどめていました。油断していたのは私たちも一緒です。とにかく、今は子供たちを探すのに全力を尽くしましょう。怪我などしてなければいいのですが」
そういうと、コーラルさんはすぐに人を集めて捜索隊を結成した。
使用人の中でも遺跡の知識があり魔法を使える人たち、それからこの地方に駐留している騎士の人たちだ。
こういうトラブルのときって、映画とかだとなかなか上の人が動いてくれなかったりするけど、コーラルさんの対応は真逆だ。
町の人の相談にも親身になってくれて、すぐに対応してくれて、本当に頼りになる感じ。
準備を終えたフェーリスさんは、傍観していたわたしたちの方へ振り向いた。
「私たちはすぐに捜索に向かいます。リンクスはエトワさまとフェーリスを見てあげてください」
魔法の腕だけなら大人顔負けのリンクスくんとフェーリスくんだけど、年齢はまだまだ子供である。
行方不明になった子供の捜索では戦力外通告だ。
まあ同じく私も戦力外なわけだけど。
「「はい」」
私とリンクスくんは大人しく頷いた。
***
コーラルさんがいなくなると、フェーリスくんが言った。
「兄さま、僕たちも子供たちを探しに行きましょう!」
先ほどフェーリスくんだけ返事をしなかったのは、そういうわけだ。
「いやいや、だめだよ~。コーラルさんから留守番しててって言われたでしょ?」
私は手を振って、フェーリスくんにそれはダメだと伝える。
いなくなった子供を心配するのはいいことだけど、私たちは家にいるように言われたわけである。
貴族の子は、普通の子供に比べて大人びている。
だけど、子供っぽいところはやっぱり子供だし、経験不足から大人ではやらないようなミスもしてしまう。
決して絶対的な差ではないのだ。
行方不明で一番防がなければならないのは、探してる側も行方不明になってしまう二次被害である。
子供が子供を探せば、当然その危険性が増してしまう。
今回の私たちの扱いは、あくまで行方不明になった子たちと同じ子供なのである。
「でも、兄さまと僕は魔法が使えるし!」
「魔法はすごい力だけど、捜索に必ずしも役に立つわけではないでしょ?」
「力だってある! 視力だってすごくいい!」
「確かに魔力のある人は力も感覚も人より優れてるかもしれないけれど、あくまで普通の人の延長でしかないんだよ。どこに行っちゃったのかわからない子を捜索するのって、とっても難しいことだから、役に立てるとは限らないよ」
「ぐぅ……! なら、なおさら人は多い方がいいだろ! そ、それにお前こそ、今回役に立つ力を持ってるじゃん!」
むぅ、確かに私こそ、今回役に立つ力をもってる人物である。
心眼ほど、行方不明の捜索に便利な力はないだろう。リンクスくんたちは感覚が優れているといっても、障害物などで視界を防がれてしまう。
でも私はその気になれば、周囲一帯の状況を把握できてしまう。
だから実を言うと、状況が落ち着いたらこっそり探しに行こうかなあ、なんて思っていたわけだけど、フェーリスくんがここまで前のめりになってしまった以上、先に止めなければいけない。
それにフェーリスくんの言うことも完全に間違ってるわけではないのだ。
捜索の人数は多い方がいい。
リンクスくんやフェーリスくんのような移動力に優れた魔法が使える人間がいれば助かるだろう。
ただ今回はその能力と、子供であることを天秤にかけられて、子供として安全に扱うことが優先されただけだ。
「フェーリス、ダメだ。父上からも言われただろう」
さて、なんて説得しようと思っていたら、強い口調で止めにはいったのはリンクスくんだった。
「な、なんで兄さままで……!」
敬愛する兄上にまで、反対されるとは思ってなかったのか、フェーリスくんはショックで目を見開いた。
「子供たちが行方不明になってるんですよ! 兄さまは言ってたじゃないですか、領民を守るのが貴族に生まれた人間の務めだって!」
「なんと言おうと絶対にダメだ。いくらそれらしい理屈を捏ねようと、勝手な行動をするのなら、それはただのワガママだ。大人しく家にいろ」
予想外に厳しい言葉を投げられて、フェーリスくんは涙目になった。
「兄さまのバカ! わからずや!」
そのまま自分の部屋に走って入って、閉じこもってしまった。
フェーリスくんが閉じこもった部屋を見て、リンクスくんはため息をつく。
リンクスくんはフェーリスくんに対して、いつも優しいお兄ちゃんだった。実家で過ごしている間も、優しく愛情をもって接しているのが伝わってきた。
でも、今回のリンクスくんはいつになく厳しい口調で、フェーリスくんに注意してしまっていた。
もしかしたら、遺跡でのあの事件が頭をよぎってしまったのかもしれない。
***
夜、フェーリスくんは泣きじゃくりながら、荷物の準備をしていた。
大好きな兄さまと喧嘩になったのは、本人にとってもショックなことだったのだろう。
「兄さまのバカ……臆病者……。なんでわかってくれないんですか……。兄さまを尊敬しているからこそ、僕は子供たちを探そうと思ったのに……」
フェーリスくんとしても今回の主張は、純粋にいなくなった子供たちを心配してのことだったのだろう。
だから、尊敬する兄さまもそれに同意してくれると思っていたのだ。
「もういいです。僕だけでも行きます」
そういって、フェーリスくんは私たちに見つからないように、窓から庭に降り立った。
そこには……
「やっぱりリンクスくんの弟だねぇ。一度、決めたらてこでも動かないよ」
「あの時の俺は本当にワガママで遺跡に入ろうとしただけだ。フェーリスとは違うよ」
「やや、そういう話じゃなくてね」
ため息をつくリンクスくんとおまけの私が、フェーリスくんの前にいた。
「兄さま、エトワ、なんで……!」
「お前のやることなんてお見通しだ。兄だからな」
「私もお姉ちゃんですから」
リンクスくんは優しい目でフェーリスくんを見て言った。
「遺跡の周りを見て回るだけだぞ。危険がありそうな場所へは入らない。それでもいいなら行こう」
その言葉に、フェーリスくんは泣きそうな瞳で頷いた。
「はい、リンクス兄さま!」
私もお姉ちゃんですから!
***
子供たちが行方不明となった遺跡の前には誰もいなかった。
おそらく中を捜索しているのだろう。
フェーリスくんは10分ほど周辺の森を探索したあと『帰ろう』と、私たちに告げた。
「もういいのか?」
もうちょっと。フェーリスくんが満足するまでの間は、付き合うつもりだった私たちは驚いた。
「はい、実際にやってみて、あんまり役に立てないことはわかったし。それに……意地になっちゃってたみたいです、ごめんなさい」
リンクスくんが一歩譲ったことで、フェーリスくんも素直になれたみたいだ。
少しだけど行動できたこともあって、満足そうな顔で帰路につく。
そんなフェーリスくんの後ろを、私とリンクスくんも並んで歩く。
「ふふふ、すっかりお兄ちゃんって感じだね、リンクスくん」
「なんだよ、それ、からかってるのか」
少し照れながら不機嫌そうにするリンクスくん。
「いやいや、そうじゃなくて。フェーリスくんが危険な行動しようとしたとき止めようとしたのも立派だし、そこからフェーリスくんも納得できるように譲れるのも本当に立派なことだよ」
「俺はそんなに立派な人間じゃないよ、いつも失敗ばかりだ。今回も自分に嫌な思い出があるからって、フェーリスにまで押し付けようとしてしまった……」
「嫌な思い出って……あの遺跡でのこと?」
「ああ……」
リンクスくんは暗い表情をした。
いろんなタイミングで思い知る。リンクスくんが、まだあの遺跡で起こした事件のことを悔いていることを。
ルヴェンドで一緒に暮らしている時も、リンクスくんの実家に来てからも。
でも、今のリンクスくんは本当に立派だ。あの時のことを反省して、周りの人を守り、優しくできる人になった。
こうして弟からもとっても慕われる立派なお兄ちゃんに。
だから、リンクスくんもそろそろ自分のことを許してあげてもいいと思うのだ。
私はリンクスくんの肩をポンと叩く。
リンクスくんのきれいな赤い瞳が私を見つめた。
「エトワ……さま……?」
「リンクスくん、私が言ったからってリンクスくんがそう思えるかはわからないけど、言っておくね」
私はリンクスくんに少しでもこの言葉が届けばいいとおもって、彼の前に立って言葉を続ける。
「リンクスくんは本当に立派な人になっていってるよ。どんどんかっこよくて、強くて、優しくて、魅力的な人になっていってる。ずっとずっと傍で見てきたからわかるよ」
ふと見上げた月が、とっても綺麗な夜だった。
私は気分が乗って、その場でくるりと一回、回ってみせる。
「今のリンクスくんなら、前と同じことがあったって、きっと私たちのことを守ってくれる。私はそう思って」
私の一周回った足が地面に着地して。
カチッ
ん、かちっ?
「お、おい、エトワ、足元!」
「なんだぁーその光!」
「るー!?」
地面に突如、浮かび上がった魔法陣。その光を浴びて一瞬あと、私の前に広がるのは見慣れない大きな湖でした。
リンクスくんとフェーリスくんの姿は影も形もありません。
『どうやら遺跡の装置によって、転送されたようだ』
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はい、無事、二次遭難いたしました。
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