ワンピースを脱がさないで

並河コネル

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第十四話 私だけ特別って言って欲しい *

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「明日香、まだ力入ってるよ。力抜いて」

 明日香は大輔を受け入れようとしていた。
 仰向けの彼女は、彼と何度もキスをする。その度に彼が少しずつ入ってくる。

「痛かったらやめるよ。どうする?」
「大丈夫、痛くないから……」
 眉間に皺を寄せながら、明日香は首を横に振った。

「もうちょっとだから。少しだけ脚、閉じて」
「うん……あっ、ああぁっ!」
 彼自身が押し入ってくると同時に、明日香は彼の背中に爪を立てた。

「……入ったよ……明日香……めちゃくちゃ気持ちいい」
 上気した顔の大輔が、彼女にくちづけをしてくる。
 肌を寄せて彼の体温を感じると、明日香の中に恍惚感が押し寄せてきた。

 暎子は「セックスは男にされるものじゃない」みたいなこと言っていたけど、絶対嘘だ。

 結局こうやって挿れられてしまえば、女は自由が利かなくなる。男のものになる。受け入れると決めた時点で、その男の所有物になることを覚悟する。
 女は結局、受け身にならざるを得ないんだ。身体的にそういう構造になっているのだから、どうしようもない。

 でも今は、それが心地いい。
 彼の女になったという実感が、ジワジワと脚の間からこみ上げてくる。
 そして、熱気を帯びた彼の顔を見ると、充足感に満たされる。

 私で、気持ち良くなってくれている。
 私で、感じてくれている。
 
 大輔は彼女を抱きしめながら、更に腰を押し込み、グラインドさせてきた。短い叫び声を上げる明日香。

「大輔さんっ……気持ちいいっ、気持ち、いいの……」
「俺もだよ、明日香。俺も、すごく気持ちいい」
 舌を絡める熱いキスをすると、大輔は彼女を抱きしめたまま動かなくなった。

 健斗なら、今までの男なら、挿入したら直ぐにピストン運動し始める。それが男の本能だろうと、明日香は思っていた。 

「しばらくこのままでいよう。明日香の体温を感じたい。明日香と繋がっている幸せを、噛み締めたい」

 明日香は痺れるような熱さを胸に感じた。
 なんてことを口にする人なんだろう。
 セックスの最中に、これほど愛情を感じる言葉をかけてくれた人は、今まで一人もいなかった。

 その台詞を呟いた唇を、明日香は愛おしそうに指でなぞった。
「動かなくて、大輔さんは平気なの?」
「萎えそうになったら動くから、大丈夫」
 大輔は微かに笑った。
 
 明日香は目を瞑って、股間に力を入れる。
 自分が大輔に満たされている現実を、身体に刻む。

 気持ちいい。
 このままあなたの中に、溶けてしまいそう。

 大輔さん。あなたはこれまでもずっと、こんなセックスをしてきたの?
 それとも、私にだけ?

 私にだけって言って欲しい。嘘でもいいから。
 私だけ特別って言って欲しい。嘘でも、いいから。
 
 大輔が彼女の背中に腕を回し、起き上がらせようとする。
 促されるままに体を起こす明日香。繋がったまま起き上がり、夢見心地の彼女は大輔と見つめ合った。

「明日香。舌、出して」
 要求通りに舌をベロリと出すと、大輔は彼女の舌を咥えるように口の中に入れた。
「んんっ……」
 唇の端から吐息を漏らす明日香。

「……俺たち、全部、繋がってるよ」
「うん……すごく嬉しい……幸せ……」
 頬を染めながらコクリと頷く明日香。

「明日香のその顔……たまんないっ……」
 大輔がゆっくりと腰を突き上げてくる。

 明日香は天井に向かって喘ぎ声を上げた。
 そのあまりの声量に自分で驚き、咄嗟に両手を口にあてる。

「ごっ、ごめんなさい。大声出しちゃって……」
「大丈夫、気にしないで」
「でも、ご近所迷惑じゃ……」

 大輔はゆらゆらと体を揺らしながら、顔を綻ばせた。
「平気だよ。男の一人暮らしなんだ。こんな夜もあるって、わかってくれるよ」
「もう……やだぁ」
 彼の頭を抱え込むように抱きしめ、明日香は快楽に浸る。

「明日香、上に乗ってくれる?」
 大輔は抜けないように脚を動かしながら、ベッドに仰向けに倒れた。自然に明日香が上に乗る形になる。

「……上に乗るの、好きじゃない」
「なんで?」
「恥ずかしいし、上手く動けない」

 明日香の言い訳を聞くと、彼は意地悪そうな顔をした。
「『恥ずかしい』は、却下」
 そう言いながら、彼女の乳首を指先で撫でる。熱い息を吐く明日香。

「『動けない』は……明日香、足の裏ちゃんと下につけてごらん。ペタンと」
 素直に指示に従うが、途中で体を固まらせる。繋がっている部分が、彼から丸見えになってしまうのだ。

「恥ずかしい……」
 掌で局部を隠す。その手を彼がどける。

「ダメ。見たい。見せて」
「いや……」
「明日香、ちゃんと処理してくれてるから、よく見えるよ。嬉しい」
「……やだぁ」 
 
 アンダーヘアの処理については、数年前に暎子とかなり話題になった。
「ハイパンを嫌がる男は、この世に存在しない」という、根拠のない持論を展開し、暎子はVIO脱毛を敢行した。

 一方自分はと言うと、衛生面を考えると脱毛したほうが良いと思ったが、やはり施術にどうしても抵抗を感じた。
 結局セルフケアに落ち着き、定期的に除毛の範囲で手入れをしている。

 まさかこういう形で、自分のケアを評価されるとは思わなかった。
 大輔が下着を脱いだ時に思ったが、彼も確実に処理をしている。香水といいアンダーヘアといい、大輔は外見とのギャップがありすぎる。

「明日香、上下に動いてみてよ。ちょっとでいいから」
 無言で頷き、腰を上げ下げする。彼に見られていると思うと、恥ずかしさが加わって、気持ち良さが倍増する。

「あぁ……俺のが、出たり入ったりしてるのが、見える……」
「やだぁ……ああっ……」
 大輔が感じている顔を見ると、もっと頑張りたいと思うが、如何せん騎乗位は疲れる。

「明日香、こっちにおいで」
 彼女が疲れたと気付いたのか、体を前に倒すように誘ってくる。明日香は彼に覆いかぶさった。

「大輔さん。好き……」
 唇を突き出してバードキスをすると、大輔は彼女の髪を撫でた。
「俺もだよ、明日香。君が好きだ」
 
 明日香は目をきつく閉じて、情夫に抱きついた。
 大輔さん。私ね、ケーキ屋であなたに会った時、あなたのこともっと知りたいって思ったの。
 でもね、まさかあなたのこと、こんなに好きになるなんて思わなかった。
 こんなに夢中になるなんて、思ってなかったの。

 ねぇ、大輔さん。
 あなたに夢中だって、言っても良い? 
 それぐらい、伝えても良いよね? ダメ?

「大輔さん、私、私ね…………あぁっ!」
 明日香が突然声色を変える。大輔が腰を動かし始めたからだ。
 
「明日香ごめん、そろそろ限界」
 今までになく激しく突き上げてくる彼に、明日香は必死にしがみつく。

「ああっ、ああぁっ……あんっ!」
 結合部分から、ぬちゃぬちゃと卑猥な音が聞こえてくる。
「明日香の喘ぎ声、すっごいエロい……ヤバい。もう無理だ」
 
 大輔は彼女を抱えて身体を半回転させ、再び正常位に戻した。身体を起こして彼女の太腿を持ち上げ、抜けてしまった男根を一気に挿しこむ。

「あああーっ!」
 明日香は体を仰け反らせながら、彼に手を伸ばした。大輔は彼女の両腕を掴み、激しく打ちつけてくる。
 
 我を忘れたように高ぶる彼の姿を見ていると、明日香のなかで女としての喜びが溢れてくる。

 大輔さん。
 そんなに私の中に入りたいのね。
 そんなに私の中で出したいのね。
 
 いいよ。たくさん突いて。私が壊れてしまうぐらい。
 私の中で気持ち良くなって。全部吐きだして。
 私をたくさん気持ち良くしてくれたぶん、あなたも気持ち良くなって。

「あっ……明日香、ごめん、イキそう。イッて良い?」
「良いよ……気持ち良くなって。大輔さん……」

 大輔が身体を倒し、彼女を抱え込むようにして突いてくる。
「明日香……愛してるよ……愛してる……」

 暫くすると、彼は途切れるような息を吐き、明日香の中で果てた。
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